舟渡国際法律事務所

特殊詐欺の受け子を狙った路上強盗で逮捕されたら|「トクリュウ」型犯行における共謀の射程と在留への影響

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特殊詐欺の受け子を狙った路上強盗で逮捕されたら|「トクリュウ」型犯行における共謀の射程と在留への影響

特殊詐欺の受け子を狙った路上強盗で逮捕されたら|「トクリュウ」型犯行における共謀の射程と在留への影響

2026/08/20

2026年8月、北陸地方の市街地の路上で、50代の男性が3人組の男に現金約200万円を奪われたとして、中国籍の男3人が強盗の疑いで逮捕されたと報じられました。報道によれば、奪われた現金は特殊詐欺によってだまし取られた金であり、被害を受けた男性自身も詐欺の疑いで逮捕されたとされています。警察は、匿名で流動的に離合集散する犯罪グループ、いわゆる「トクリュウ」による犯行の可能性を視野に捜査を進めているとのことです。

この種の事件では、現地で実際に現金を受け取った、あるいは奪ったとされる実行役に外国籍の若い方が含まれることが少なくありません。ご家族が突然「強盗で逮捕された」と知らされ、何が起きているのか分からないまま来日される方もいらっしゃいます。本記事は、そうしたご本人・ご家族に向けて、この類型の刑事手続と在留資格への影響を整理したものです。

本記事の要点

  • 強盗罪(刑法236条1項)の法定刑は5年以上の有期拘禁刑であり、執行猶予を得るには酌量減軽を経て刑を3年以下まで下げる必要がある。
  • けがをさせた場合は強盗致傷罪(刑法240条前段)となり、無期又は6年以上の拘禁刑で、裁判員裁判の対象となる。
  • 1年を超える拘禁刑の実刑を受ければ、入管法24条4号リにより退去強制の対象となる。
  • 匿名流動型の犯行では、実行役が「何を運ぶ話だったのか」「暴行の合意まであったのか」を知らされていない場合があり、共謀の射程と故意の内容が最大の争点となる。
  • 在留資格を守るには、執行猶予ではなく起訴前の不起訴処分を最優先の目標として弁護活動を組み立てる必要がある。

1 この類型で想定される刑事手続の流れ

結論から申し上げますと、強盗の嫌疑での身柄拘束は、他の財産犯と比べて長期化しやすい類型です。逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、さらに24時間以内に勾留請求がなされ、裁判官が認めれば10日間、延長により合計20日間まで身柄拘束が続きます。共犯者が複数いる事案では、共犯者ごとに事件を分けて順次再逮捕がなされ、身柄拘束が実質的に数か月に及ぶこともございます。

起訴された場合、強盗罪であれば通常の刑事裁判となりますが、被害者がけがをしていれば強盗致傷罪となり、裁判員裁判の対象事件として審理されます。裁判員裁判では公判前整理手続が必要となるため、起訴から判決まで半年から1年程度を要することも珍しくございません。

2 外国籍の方に特有の在留リスク

強盗罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑です(刑法236条1項)。刑の全部の執行猶予は3年以下の拘禁刑にしか付すことができませんので(刑法25条1項)、執行猶予を得るには酌量減軽(刑法66条・71条・68条3号)によって刑を3年以下まで引き下げてもらう必要がございます。すなわち、この類型では「執行猶予が付くかどうか」自体が高いハードルです。

そして、1年を超える拘禁刑の実刑判決を受けた場合、入管法24条4号リにより退去強制事由に該当します。同号には刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者を除く旨の除外規定がございますので、全部執行猶予であれば同号には該当しません。もっとも、それは退去強制を免れるという意味にとどまり、その後の在留期間更新の場面では入管法21条3項の裁量判断において素行が問題とされ、更新が認められない例が現に存在いたします。留学の在留資格の方であれば、身柄拘束の長期化によって学籍を失い、入管法22条の4第1項5号(在留資格に応じた活動を3か月以上行っていないこと)による在留資格取消しの問題も併存いたします。

3 共謀の射程と故意の内容こそが争点

匿名流動型のグループでは、実行役はSNSや通信アプリを通じて短期間に集められ、指示役の氏名も、事件の全体像も知らされないまま現場に向かうことが多いとされています。この構造は、法的には決定的な意味を持ちます。強盗罪が成立するには、暴行又は脅迫によって財物を奪うことについての共謀と故意が必要だからです。

たとえば、「トラブルになっている相手から荷物を受け取ってくるだけ」と説明されて同行した方について、暴行の合意まであったと言えるのか。現場で他の者が突然暴行に及んだ場合、その結果まで責任を負うのか。これらは、通信履歴、報酬の約束の内容、集合から犯行に至る時間経過、現場での役割分担といった客観的資料を丁寧に読み解いてはじめて判断できる事柄です。捜査段階で「みんなで奪う話だったと思います」といった曖昧な調書が一通できてしまうと、後の公判で覆すことは容易ではございません。

なお、当事務所は、こうした故意・過失の議論が刑事事件の中だけで完結すべきものではないと考えております。退去強制事由の判断にあたって故意・過失は要件とされないという入管実務の運用に対し、責任主義の射程を問う訴訟を係属させてまいりました。刑事段階で故意の内容を丁寧に争い、その記録を残しておくことは、後の入管手続における主張の基礎ともなります。

4 不起訴処分を最優先の目標とすること

外国籍の方の刑事弁護では、執行猶予判決の獲得を最終目標に据えるべきではございません。前述のとおり、執行猶予でも在留期間の更新が認められない例があり、身柄が入管に引き継がれて収容される場合もあるからです。したがって、起訴されるかどうかが決まる前の段階、すなわち勾留期間中に、検察官に対して共謀の不存在や役割の従属性を具体的な資料とともに示し、不起訴処分を求めることが決定的に重要となります。

この類型では、被害者が特殊詐欺の関与を疑われている場合など、被害弁償や示談の枠組みが通常とは異なる形になることもございます。だからこそ、事案の構造を正確に把握したうえで、どの主張をどの順序で検察官に届けるかという設計が結果を分けます。

5 初動で押さえておきたい3つのこと

第一に、取調べに対して黙秘権を行使できること。

日本の刑事手続では、被疑者は供述を拒むことができます(憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)。とりわけ共謀の有無が争点となる事案では、記憶が曖昧なまま署名した調書が後々まで不利に働きます。

第二に、できる限り早く弁護人を選任すること。

当番弁護士制度により、逮捕後1回は無料で弁護士を呼ぶことができます。継続的な弁護活動をご希望の場合は、私選弁護人の選任をご検討ください。

第三に、通訳の質が結果を左右すること。

捜査機関が手配する通訳人は、必ずしも法律用語の専門家とは限りません。共謀の有無のような微妙なニュアンスが、訳出の過程で不利に固定されてしまう危険があります。

6 当事務所について

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士は、第一東京弁護士会に所属し(登録番号59077・2019年登録)、初動の接見から公判の結審まで全工程を自ら担当いたします。事務員や若手弁護士による代行は行っておりません。また、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。

解決事例として、特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案において、取調べ対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得したものがございます(事例B-2)。また、裁判員裁判対象事件や世界的に報道された重大事件への対応経験も重ねてまいりました(事例E-1)。入管手続の面では、公的書類がほとんど存在しないという困難な状況の中で証拠を集め、過去の許可事例を分析することで在留特別許可を獲得した事例もございます(事例D-1)。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士と連携し、一つの窓口で対応いたします。

結語

「荷物を取りに行くだけ」と聞かされて現場に立った方と、暴行を計画した方とでは、責任の重さは同じではございません。その違いを、記憶の新しいうちに、正確な言葉で記録に残せるかどうかが、刑事処分と在留の双方を左右いたします。ご家族が逮捕の知らせを受けられた段階で、まずは接見を通じて事実関係を確認することをお勧めいたします。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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