舟渡国際法律事務所

「執行猶予中でも、在留期間の更新はできるはず」という誤解|退去強制事由に当たらないことと、更新が許可されることは別です

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「執行猶予中でも、在留期間の更新はできるはず」という誤解|退去強制事由に当たらないことと、更新が許可されることは別です

「執行猶予中でも、在留期間の更新はできるはず」という誤解|退去強制事由に当たらないことと、更新が許可されることは別です

2026/08/17

執行猶予付きの判決を受けた方から、「入管法24条4号リには当たらないと弁護士に言われた。だから在留は大丈夫だと思っている」というお話を伺うことがあります。

前段は正確です。しかし、後段は結論を急ぎすぎています。退去強制事由に該当しないことは、日本にいられることの下限を確保したにすぎず、在留期間の更新が許可されることまでを意味しないためです。この二つの段階を混同したまま更新申請に臨み、不許可となってから相談にみえる。そうした事例が、実務では繰り返されています。

本記事の要点

  • 在留期間の更新は、更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されます(入管法21条3項)。
  • 更新・変更のガイドラインは、素行が善良であることを考慮事項の一つに挙げており、前科があれば消極に評価されます。
  • 出入国在留管理庁は、更新・変更が不許可となった事例を公表しており、そこには執行猶予付き判決を受けた事案も含まれています。
  • 侵害された法益が社会的法益か個人的法益かによって、示談や被害弁償の持つ意味が大きく異なります。
  • 更新が不許可となれば、退去強制事由に該当しなくとも、結果として日本を離れることになります。

二つの関門は別々に置かれています

外国人の方が刑事事件を起こした場合、在留に関する関門は少なくとも二つあります。

第一の関門が、退去強制事由です。入管法24条各号は号ごとに構造が異なります。4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としており、刑の全部の執行を猶予された者は除かれます。他方、4号チに掲げる薬物関係の罪については、刑の重さを問わず該当し得ます。したがって、「執行猶予だから安心」という一般化は、そもそも成り立ちません。

第二の関門が、在留期間の更新です。入管法21条3項は、法務大臣が、更新を適当と認めるに足りる相当の理由があると認めるときに限り、更新を許可することができると定めています。ここには広い裁量が認められており、退去強制事由に当たらないことは、更新を求める側の主張の出発点にはなっても、それ自体で許可を導くものではありません。

素行善良性という考慮事項

出入国在留管理庁が公表している在留資格の変更・在留期間の更新許可のガイドラインは、考慮事項の一つとして素行が善良であることを挙げています。ここで想定されているのは、退去強制事由に準ずるような素行不良がないことにとどまらず、日常生活において法令を遵守していることです。

同庁は、更新・変更が不許可となった事例も公表しております。そこには、執行猶予付きの判決を受けた方の事案が含まれており、罪名や事情によって判断が分かれていることが読み取れます。実務においては、これらの公表事例と本件との異同を丁寧に検討することが出発点となります。

保護法益が違えば、必要な弁護活動も違います

ここが、当事務所が重視している視点です。同じ「執行猶予付き判決」であっても、侵害された法益の性質によって、その後の入管手続における評価はまったく異なります。

個人的法益を侵害する類型、たとえば詐欺、窃盗、傷害といった罪では、被害者が特定されており、示談の成立、被害弁償、宥恕の意思表示によって、反社会性が個別具体的に解消されたと評価される余地があります。この場合、示談書や宥恕状は、更新申請における有力な資料となります。

これに対し、社会的法益を侵害する類型、たとえば薬物関係、児童保護に関わる罪、出入国管理秩序に関わる罪では、特定の被害者との間で示談を成立させることができません。したがって、示談の有無だけでは素行不良の評価を解消しにくく、再犯防止の体制、医学的なフォローアップ、生活環境の変化といった別の資料を積み上げていく必要があります。

罪名の表面的な軽重ではなく、何が守られようとしていたのかという観点から検討する。この視点を欠いたまま更新申請を行うと、必要な資料が揃わないまま審査を迎えることになります。

執行猶予期間中の実務上の扱い

執行猶予期間中に更新が許可される場合であっても、在留期間が短く定められる運用がみられます。従前3年であった方が1年とされる、といった形です。これは、その後の素行を短い周期で確認するという趣旨と理解されます。

したがって、判決を受けた直後の一回の更新を乗り切れば終わり、というわけではありません。猶予期間が満了するまでの間、生活の安定と法令遵守を継続的に資料化していく作業が必要になります。就労の継続、納税、社会保険料の納付、住居の安定、家族との同居の実態。こうした事実は、後から作ることができません。

だからこそ、起訴前の不起訴処分が決定的です

以上を踏まえると、外国人の方の刑事事件において、執行猶予付き判決の獲得を最終目標とする弁護方針では足りないことがお分かりいただけるかと存じます。有罪判決を受けた事実そのものが、その後の更新審査で消極的に働き続けるためです。

弁護活動は、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標として組み立てる必要があります。そして、万一起訴された場合に備え、示談書、宥恕状、贖罪寄付の受領証明、身元引受書、再犯防止計画、医学的所見といった資料を、刑事弁護の段階から入管手続を見越して整えておくことになります。刑事の弁護人と入管手続の代理人が別であれば、この連続性は確保しにくくなります。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続に注力しております。刑事手続の段階から退去強制手続・更新審査を一体的に視野に入れた方針を採っております。

解決事例としては、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の徹底的な分析と被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得した事例がございます。また、不法就労助長罪に問われて強制退去の危機に瀕した女性の事案では、「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争い、その後、入管から在留特別許可が認められた事例がございます。特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代女性について不起訴処分を獲得した事例も担当してまいりました。

松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士とともに対応いたします。

なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

おわりに

「退去強制事由に当たらない」という説明は、正しい情報です。ただ、それは在留をめぐる話の半分にすぎません。もう半分は、更新の場面で、これまでの生活をどう示せるかという問題です。判決の後にできることも残っておりますので、更新の時期が近づく前にご相談いただければと存じます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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