舟渡国際法律事務所

「中国に帰ってしまえば、日本の事件は終わる」という誤解|公訴時効は止まり、上陸拒否事由は残ります

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「中国に帰ってしまえば、日本の事件は終わる」という誤解|公訴時効は止まり、上陸拒否事由は残ります

「中国に帰ってしまえば、日本の事件は終わる」という誤解|公訴時効は止まり、上陸拒否事由は残ります

2026/08/17

在宅で捜査を受けている、あるいは事情聴取を一度受けたきりで連絡が来ない。そうした状況で、「いっそ帰国してしまえば、日本の事件は自然に消えるのではないか」とお考えになる方がいらっしゃいます。ご不安のなかで、そう考えたくなるお気持ちは分かります。

しかし、この理解は、日本の制度の建て付けと大きく食い違っています。むしろ、帰国という選択が、その後の選択肢を最も狭めてしまうことが少なくありません。本記事では、その理由を、条文に即して整理いたします。

本記事の要点

  • 犯人が国外にいる間、公訴時効の進行は停止します(刑事訴訟法255条1項)。時間の経過による解決は期待できません。
  • 逮捕状が出ている場合、旅券の返納命令や国際的な手配の対象となり得ます。
  • 再入国を試みた際、空港で身柄を拘束されることがあります。個人識別情報により同一人と特定されるためです。
  • 1年以上の拘禁刑に処せられたことのある方は、入管法5条1項4号により上陸を拒否されます。
  • 在宅事件のうちに弁護人を通じて出頭・示談・意見書提出を進めるほうが、不起訴の可能性を高く保てます。

公訴時効は、国外にいる間は進みません

刑事訴訟法250条は、罪の重さに応じた公訴時効の期間を定めています。この期間が経過すれば、原則として起訴されることはなくなります。

もっとも、同法255条1項は、犯人が国外にいる場合には、その国外にいる期間、時効の進行が停止すると定めています。したがって、日本を離れている間は、時計が止まったままです。何年経っても、帰国した時点で、出国前と同じ状態から時効の計算が再開されます。

この規定は、逃げ得を許さないという趣旨に基づくものであり、外国人の方に限らず適用されます。「10年待てば消える」という前提そのものが成り立たないことを、まずご理解いただければと存じます。

逮捕状が出ている場合に起きること

逮捕状が発付されているにもかかわらず所在が不明な場合、指名手配の対象となります。旅券法19条1項4号は、一定の場合に外務大臣が旅券の返納を命じることができる旨を定めており、日本の旅券についてはこの制度が働きます。

外国籍の方の場合、国際刑事警察機構を通じた国際的な手配が行われることがあります。もっとも、この手配は自動的に外国での身柄拘束につながるものではなく、各国の制度と運用に左右されます。ここで断定的なことを申し上げるつもりはありません。ただ、日本の入管当局と捜査機関の間で情報が共有されている以上、日本への再入国の場面では、手配の存在が確実に把握されます。

再入国のときに何が起きるか

上陸の審査においては、指紋その他の個人識別情報の提供が求められます(入管法6条3項)。氏名の綴りを変えても、別の国の旅券を用いても、同一人として特定される仕組みが整えられています。

その結果、空港の審査で身柄を拘束され、そのまま捜査機関に引き渡されるという展開が生じ得ます。ご家族の冠婚葬祭のために、あるいは事業の必要から、数年後にどうしても来日しなければならなくなったとき、この問題が現実のものとなります。

さらに、入管法5条1項4号は、日本国又は日本国以外の国の法令に違反して1年以上の拘禁刑に処せられたことのある者について、上陸を拒否する旨を定めています。この規定は期間の定めのない上陸拒否事由であり、退去強制歴に基づく5年ないし10年の上陸拒否(同項9号)とは構造が異なります。

在宅事件のうちにできること

在宅で捜査を受けている段階は、実は最も選択肢が広い時期です。身柄を拘束されていないため、被害者との示談交渉を進めることができ、勤務や学業を継続しながら生活の安定を示すこともできます。

この時期に弁護人が行う活動は、次のようなものです。まず、捜査の進行状況を検察官・警察に確認し、処分の見通しを把握します。次に、被害者のいる事件では、示談交渉を行い、宥恕の意思を書面で得ることを目指します。そして、処分の決定に先立ち、検察官に対して不起訴を求める意見書を提出します。外国人の方の事件では、この意見書の中で、在留への影響という事情を正面から述べることになります。

出頭要請に応じないまま出国すれば、これらの活動の機会がすべて失われます。それどころか、逃亡のおそれがあると評価され、後に身柄を拘束された際に、勾留や保釈の判断で不利に働きます。

外国人の方の場合、不起訴が持つ意味は一段と重い

日本人の事件であれば、罰金や執行猶予で日常生活に戻れる場合も多くあります。しかし外国人の方の場合、そこに在留の問題が重なります。入管法24条各号は号ごとに構造が異なり、たとえば4号チに掲げる薬物関係の罪については、刑の重さを問わず退去強制事由となり得ます。4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とします。

したがって、執行猶予付き判決の獲得を最終目標に据える弁護方針では、依頼者の生活を守りきれない場面が生じます。起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標とすること。これが、外国人刑事弁護における出発点です。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続に注力しております。国境をまたぐ事案としては、海外SNSを用いた侮辱被害について、日本の警察と国際刑事警察機構の捜査を通じて刑事告訴が受理された事例を担当いたしました。裁判員裁判対象事件や、国内外で広く報道された事件への対応実績も重ねております。

不起訴処分の獲得については、特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議を重ね、全件について不起訴処分を獲得した事例がございます。入管手続の局面では、在留資格を失って不法滞在で逮捕・起訴された方について、入管当局の過去の許可事例を分析したうえで、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例がございます。

松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。刑事手続の終了後の在留資格については、提携の行政書士とともに対応いたします。

なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

おわりに

帰国という選択は、目の前の不安からは遠ざけてくれるかもしれません。けれども、制度上、その事件は終わらず、日本との関係を将来にわたって断つ結果を招きます。まだ在宅の段階であれば、打てる手は数多く残されております。事態が動く前に、一度ご相談いただければと存じます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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