短期滞在で来日中にお金を受け取ったら|観光ガイド・通訳・買い物代行と、資格外活動という思わぬ落とし穴
2026/08/17
「友人の家族が旅行に来るので、案内して少しお礼をもらった」「日本語ができるので、知人の商談に通訳として同席し、日当を受け取った」「頼まれた化粧品を買って、手数料を上乗せして送った」。
いずれも、日常の延長のような話に聞こえます。ところが、短期滞在の在留資格で日本に滞在している間にこれらを行うと、入管法上は資格外活動として扱われ得ます。近隣諸国でも、許可なく観光ガイドを行っていた外国人が摘発されたとの報道がなされており、この分野に対する各国当局の関心は高まりつつあります。
本記事の要点
- 短期滞在の在留資格では、収入を伴う事業を運営する活動、又は報酬を受ける活動は原則として認められません(入管法19条1項)。
- 資格外活動には、入管法73条により1年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金、又はその併科が定められています。
- 通訳案内士の資格がなくても有償でガイドを行えるようになったことと、在留資格上の可否は、まったく別の問題です。
- 買い物代行や代理購入は、関税法・商標法・薬機法といった別の法令にも触れ得ます。
- 摘発を受けると、その後の再入国が事実上困難になることがあり、上陸拒否事由の検討が必要になります。
「報酬を受ける活動」とはどこまでを指すのか
入管法19条1項は、在留資格をもって在留する外国人は、当該在留資格に応じた活動の範囲を超えて、収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行ってはならないと定めています。短期滞在は、観光、親族訪問、商用の打合せといった、報酬を伴わない活動を予定した在留資格です。
ここで問題になるのが、「報酬」の広がりです。実務では、名目が謝礼・お車代・実費という形をとっていても、提供した役務との対価関係が認められれば、報酬にあたると評価され得ます。金額の多寡は決定的ではありません。継続的・反復的に行われていれば、なおさらです。
他方で、日常的な親族間の助け合いや、実費の精算にとどまるものまで、直ちに違法とされるわけではありません。境界は、役務の内容、対価の性質、反復性の程度によって判断されます。この判断が微妙であるからこそ、取調べにおける説明の仕方が結果を左右することになります。
通訳案内士法の改正と、在留資格の問題は別
平成29年の通訳案内士法の改正により、通訳案内士の資格を有しない方でも、報酬を得て外国人に付き添い、外国語で旅行に関する案内を行うことができるようになりました。この改正は、旅行業に関する規制緩和として広く知られています。
しかしながら、これはあくまで通訳案内士法という業法上の話です。在留資格の面で、報酬を受ける活動が認められるかどうかは、入管法が別途定めるところによります。「資格がなくてもガイドをしてよくなった」という情報だけを受け取って、短期滞在のまま有償ガイドを引き受けてしまう。この誤解は、実際にご相談の場面で少なからず見受けられます。
買い物代行・代理購入に潜む別の法令
いわゆる代購についても、注意すべき点が複数あります。まず、継続的に手数料を得て購入代行を行えば、収入を伴う事業を運営する活動と評価される余地があります。
次に、持ち出す物品の種類によっては、別の法令が関わります。医薬品・医薬部外品には、医薬品医療機器等法上の数量制限があります。ブランド品の模倣品を扱えば商標法違反の問題が生じます。また、商業目的の物品を個人使用の携帯品と偽って申告すれば、関税法上の虚偽申告として犯則調査の対象となり得ます。
これらは、いずれも短期滞在中の活動として行われた場合、入管法上の評価と刑事責任の双方が問題となる類型です。
摘発されたときに何が起きるか
短期滞在の方が摘発された場合、刑事手続と入管手続が並行して進みます。刑事の側では、資格外活動として立件されるか、あるいは他の法令違反として立件されるかが検討されます。入管の側では、資格外活動を専ら行っていたと認められれば、入管法24条4号ハの退去強制事由が問題となります。
とりわけご留意いただきたいのは、その後の再入国です。退去強制を受けた場合、原則として5年間(一定の場合は10年間)、上陸を拒否されることになります(入管法5条1項9号)。日本に家族や事業の拠点をお持ちの方にとって、この効果は刑事の結論以上に重いものとなり得ます。
したがって、この類型でも目指すべきは不起訴処分の獲得です。行為の反復性が乏しいこと、対価が実費の範囲にとどまること、生活の本拠が国外にあり在留秩序への影響が限定的であることを、客観資料をもって示していくことになります。出国命令制度の利用を含め、退去強制歴を残さない解決を探ることも、選択肢の一つです。
初動で押さえておきたい三点
第一に、金銭の流れの資料化です。微信支付・支付宝の履歴、銀行の入出金記録は、対価関係の有無を判断する中心的な資料になります。曖昧な記憶で説明する前に、記録を確認することが大切です。
第二に、供述の慎重さです。「何回くらいやったか」という質問に「たぶん10回くらい」と答えてしまうと、その数字が反復性の認定に用いられます。確認できるまで答えを留保することは、正当な権利の行使です。
第三に、通訳の質です。「お礼」「謝礼」「手数料」「実費」は、中国語に訳す際の語の選び方によって、対価性の印象がまったく変わります。捜査機関が手配する通訳人がこの差を保存してくれるとは限りません。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続に注力しております。
不起訴処分の獲得に関しては、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代女性について、指示役からの働きかけの状況や犯意の不存在を含む主観的事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例がございます。また、特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議を重ね、全件について不起訴処分を獲得した事例もございます。入管手続の局面では、在留資格を失って不法滞在で逮捕・起訴された方について、入管当局の過去の許可事例を分析したうえで、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例がございます。
松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。刑事手続の終了後の在留資格については、提携の行政書士とともに対応いたします。
なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
おわりに
短期滞在中の善意の手助けが、思いがけず在留の問題に発展することがあります。境界の判断が難しい領域だからこそ、実際に活動を始める前に、あるいは何らかの連絡を受けた段階で、一度ご確認いただくことをお勧めいたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
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東京を中心に刑事事件の弁護
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