SNSの求人から始まる不法就労|入管庁の情報収集強化と、雇う側・働く側それぞれのリスク
2026/08/17
微信のグループ、小紅書の投稿、あるいは日本語の求人アプリ。いまや仕事探しの入口は、ほとんどがオンラインに移りました。「ビザ不問」「日払い」「身分証不要」。そうした短い言葉に、来日して間もない方や、在留期限が近づいて不安を抱えている方が引き寄せられていきます。
報道によれば、出入国在留管理庁は、不法残留者に関するSNS上の情報、違法な就労の募集や在留資格に関する偽造情報の収集・分析を強化する方針を示しているとされます。摘発の端緒が、従来の通報や現場臨検から、オンライン上の痕跡へと広がりつつあるということです。
本記事の要点
- 在留資格に対応しない収入活動は資格外活動にあたり、入管法73条により1年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金、又はその併科の対象となり得ます。
- 資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる場合、入管法24条4号ハの退去強制事由に該当し得ます。
- 外国人を雇う側は、不法就労助長罪(入管法73条の2)により5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科という重い責任を負い得ます。
- SNS上のやりとりは、削除しても復元される場合があり、雇う側・働く側の双方について認識を推認する証拠となります。
- 「知らなかった」という弁解が刑事で通っても、入管手続では別の判断枠組みが働きます。この点は当事務所が正面から問うてきた論点です。
働く側に生じるリスク
留学の在留資格をお持ちの方は、資格外活動許可を得たうえで、原則として週28時間以内の範囲で働くことができます。この枠を超えて働いた場合、あるいは許可を受けずに働いた場合には、資格外活動にあたります。入管法73条は、これに対し1年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金、又はその併科を定めています。
さらに重いのが、入管法24条4号ハです。同号は、資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる者を退去強制事由としています。刑事事件として立件されなくとも、この号による退去強制手続が単独で進むことがあり得る点は、あらかじめご理解いただきたいところです。
在留期限を過ぎている方が働いた場合には、不法残留(入管法24条4号ロ)と資格外活動の双方が問題となります。この場合、退去強制手続の中で在留特別許可を求めていくことになりますが、その判断では、在日期間、家族関係、素行、発覚の経緯といった事情が総合的に考慮されます(同法50条5項)。
雇う側に生じるリスク
外国人の方を雇用する側の責任は、想像以上に重いものです。入管法73条の2は、事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者等について、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科を定めています。
この罪については、令和元年の改正により、過失がなかったことを証明した場合を除き処罰を免れないという構造が採られている点が実務上きわめて重要です。すなわち、「在留カードを見せてもらったが偽造だと分からなかった」という説明だけでは足りず、確認をどのように行ったのかを客観的に示す必要があります。
外国人ご本人が経営者や店長の立場にある場合、この罪による処罰は、そのまま在留資格の喪失に直結し得ます。同罪で有罪となれば、入管法24条4号ヌの退去強制事由が正面から問題となるためです。
SNS上の痕跡が証拠になるということ
摘発の実務では、押収された携帯電話の解析が中心的な位置を占めます。求人投稿のスクリーンショット、グループ内の募集メッセージ、給与のやりとり、送迎の待ち合わせ場所の指示。これらは、いずれも当事者の認識を推認する材料として用いられます。
削除したメッセージが復元されることも珍しくありません。また、自分の端末から消しても、相手方の端末やクラウド上のバックアップに残っていることがあります。ここで留意いただきたいのは、証拠の隠滅と評価される行為は、勾留の必要性を基礎づける事情として働き、身体拘束を長引かせる方向に作用するという点です。
「知らなかった」という主張は、どこまで通るのか
刑事事件では、故意の有無は常に主要な争点です。求人の内容、賃金の水準、支払方法、身分確認の有無といった事情から、認識があったかどうかが推認されていきます。
問題は、その先です。入管実務においては、退去強制事由の判断にあたり故意・過失の有無は要件とされないという運用が長年踏襲されてきました。つまり、刑事で故意を争って無罪を得たとしても、入管手続では客観的な事実のみをもって退去強制事由に該当すると判断され得る、という構造です。
この運用は、行政処分としての退去強制を刑事責任から切り離すものですが、責任主義の射程を行政処分にどこまで及ぼすかという、憲法論・行政法論の根本問題を含んでいます。当事務所の松村大介弁護士は、不法就労助長事案において、この「退去強制事由にも故意・過失を要件とすべきではないか」という論点を正面から問う訴訟を担当してまいりました。現在も議論が続いている先進的な論点ですが、実務上の帰結は明快です。すなわち、刑事段階から故意・過失を徹底して争い、その過程で得られた資料を残しておくことが、その後の入管手続における主張の基礎を成すということです。
初動で押さえておきたい三点
第一に、黙秘権の行使です。「いつから」「週に何時間」「時給いくら」という質問に概数で答えることは避けてください。その概数が、専従性の認定に用いられます。
第二に、早期の弁護人選任です。資格外活動事案では、刑事処分より先に入管の手続が動き出すことがあります。両方を同時に設計できる体制が必要です。
第三に、通訳の質です。「アルバイト」「手伝い」「オーナー」といった語は、中国語に訳す際の選び方によって、責任の所在についての印象が大きく変わります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続に注力しております。
とりわけ本記事の類型については、冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案において、従来の実務に対し責任主義・過失責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争い、その後、入管から在留特別許可が認められた事例がございます。不法就労助長罪の認定を受けた事案における在留特別許可の獲得は、前例のない成果でございました。また、在留資格を失って不法滞在で逮捕・起訴された方について、婚姻・認知の手続を当局との交渉により整え、入管当局の過去の許可事例を分析したうえで、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例もございます。特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代女性について、主観的事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例も担当してまいりました。
松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士とともに対応いたします。
なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
おわりに
オンライン上の求人は、便利さと引き換えに、痕跡を残します。摘発の手法が変わりつつある以上、対応の設計も変えていく必要があります。もし心当たりのある状況に置かれているのであれば、事態が動き出す前にご相談いただくことが、選択肢を最も広く保つ方法です。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
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