舟渡国際法律事務所

「示談すれば必ず不起訴」は本当か|保護法益で分かれる、効く事件と効かない事件

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「示談すれば必ず不起訴」は本当か|保護法益で分かれる、効く事件と効かない事件

「示談すれば必ず不起訴」は本当か|保護法益で分かれる、効く事件と効かない事件

2026/08/16

「示談さえ成立すれば不起訴になる」。この言葉は、刑事事件のご相談で最もよく耳にする理解の一つです。半分は正しく、半分は危険な誤解です。どこまでが正しく、どこからが違うのか。その分かれ目は、その犯罪がどのような利益を守るために設けられているのか、すなわち保護法益にあります。外国人事件では、この違いが在留資格の帰趨まで左右いたします。

本記事の要点

  • 示談は、検察官が起訴不起訴を判断する際の考慮要素の一つにすぎません(刑事訴訟法248条)。
  • 被害者個人の利益を守る犯罪では、示談によって処罰の必要性が大きく減ります。
  • 社会全体の利益や制度の秩序を守る犯罪では、示談すべき相手がおらず、示談だけでは処分は動きません。
  • 在留資格の審査でも、この保護法益の違いは同じように現れます。

示談は万能の切り札ではない

刑事訴訟法248条は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況を考慮して、訴追を必要としないときは公訴を提起しないことができる、と定めています。示談の成立は、このうち「犯罪後の情況」に位置づけられる事情です。重要な事情ではありますが、法律上、示談があれば必ず不起訴になるという仕組みは、どこにも書かれていません。

では、示談が決定的に効く事件と、そうでない事件は、何によって分かれるのでしょうか。

個人の利益を守る犯罪の場合

暴行、傷害、窃盗、詐欺、器物損壊、痴漢・不同意わいせつといった犯罪は、被害者個人の身体、財産、性的自由といった利益を守るために設けられています。この類型では、被害の回復と被害者の許しは、処罰の必要性そのものを減らします。

ここでは、被害弁償の額だけでなく、被害者が処罰を望まない旨の意思(宥恕)を書面で明らかにしていただけるかが重要です。宥恕の記載がある示談書と、金額のみの示談書とでは、検察官に伝わる意味が異なります。加えて、初犯であること、再発防止の具体的な体制、身元引受人の存在といった事情を合わせて示すことで、不起訴の可能性は現実的に高まります。

社会の利益・制度の秩序を守る犯罪の場合

これに対し、薬物犯罪、入管法違反、在留カードの偽造、無資格での医業、賭博場の開張、公文書の偽造といった犯罪は、被害者個人ではなく、公衆衛生、出入国管理の秩序、公的証明の信用、資格制度の実効性といった社会的な利益を守るために設けられています。

この類型には、そもそも示談をすべき相手が存在しません。ですから、「示談を成立させれば不起訴になる」という発想は、最初から成り立ちません。ここで検察官が見るのは、動機と経緯、関与の程度と役割、常習性の有無、利得の規模、そして再犯のおそれを具体的に減らす環境が整っているかという点です。贖罪寄付が情状として考慮される場面はありますが、それは被害弁償の代替物ではなく、反省の一つの表れとして評価されるにとどまります。

外国人の依頼者からのご相談で行き違いが生じやすいのは、まさにこの点です。「お金を払って解決する」という発想が通用しない領域があるということを、最初にお伝えするようにしております。

在留資格の審査でも同じ違いが現れる

この保護法益による区別は、入管の判断でもほぼそのまま働きます。個人的な利益を侵害した事件では、被害弁償が済み、被害者が処罰を望んでいないという事情が、素行に関する評価を和らげる方向に働き得ます。

他方、出入国管理の秩序そのものを害する類型、たとえば在留カードの偽造や不法就労助長では、金銭で解消できる被害という枠組み自体がありません。入管法50条5項は、在留特別許可の判断において、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間とその間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などを考慮するものと定めていますが、ここでも示談は独立の項目としては現れません。

では何をすればよいのか

示談が効く類型では、早期に、かつ被害者の心情に配慮した形で示談を進めることに全力を注ぐべきです。逮捕直後から被害者の連絡先を把握できるのは弁護人だけですので、初動の速さがそのまま結果に反映されます。

示談が効かない類型では、別の設計が必要です。関与の実質を正確に切り分けること、動機や経緯に酌むべき事情があればそれを客観資料で示すこと、そして再犯防止の環境を具体的に構築することです。就労先の受入体制、家族による監督、必要に応じた医学的なフォローアップなどを、意見書の形で整理して提出することになります。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、この保護法益の違いを弁護方針の出発点に据えております。

個人的な利益が侵害された類型では、盗撮の被害を受けられた方の代理人として、刑事告訴と交渉を担当し、300万円の慰謝料の支払による示談を成立させた事例がございます。被害者側の立場を経験していることは、加害者側で示談を進める場面でも、相手方の心情を見誤らないという形で活きてまいります。

社会的な利益に関わる類型では、特殊詐欺の出し子に関与したとされた20代の女性について、置かれていた状況と主観面を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例がございます。示談で解決しにくい類型でも、事情の積み上げによって結論が動き得ることを示すものです。

当事務所では松村大介弁護士が接見の初動から結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更も、提携の行政書士と連携してご対応いたします。

結語

示談は強力な手段ですが、効く場面と効かない場面があります。その見極めを誤ると、貴重な初動の時間を、結果に結び付かない交渉に費やしてしまいます。ご自身の事件がどちらの類型なのかを、まず確かめるところから始めていただければと存じます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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