無資格の美容施術・整体で摘発されたら|医師法違反と資格外活動、二重のリスク
2026/08/16
美容の注射、点滴、整体、鍼、まつ毛のエクステンション。在日中国人コミュニティのなかで、同郷の方を相手にこうした施術を行っていたところ、無資格であるとして摘発されるという相談を、しばしばお受けします。母国では資格を持っていた、あるいは資格が不要な行為だと聞いていた、という事情も少なくありません。この記事では、どの行為がどの法律に触れるのか、そして在留資格にどう響くのかを整理いたします。
本記事の要点
- 医師でなければ医業を行ってはならず(医師法17条)、違反すれば3年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科となります(同法31条1項1号)。
- 医師またはこれに類似した名称を用いていた場合は、罰金の上限が200万円に引き上げられます(同法31条2項)。
- あん摩・マッサージ・指圧・はり・きゅうを業とするには免許が必要で、無免許は50万円以下の罰金です(あん摩マツサージ指圧師等法1条、13条の7第1項1号)。
- 就労資格をお持ちの方は、これらの行為が入管法19条1項の資格外活動に当たることが多く、刑事責任と在留資格の双方が同時に問題となります。
どこからが「医業」なのか
医師法17条は、医師でなければ医業をなしてはならないと定めています。ここでいう医業とは、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為を、反復継続の意思をもって行うことと理解されています。ヒアルロン酸やボツリヌス製剤の注入、点滴、糸を用いた施術、レーザーを用いた施術などは、この医行為に当たると評価されるのが通常です。
違反した場合の法定刑は、3年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科です(医師法31条1項1号)。さらに、医師またはこれに類似した名称を用いていたときは、罰金の上限が200万円となります(同条2項)。名刺やSNSの表記に「医生」「医師」といった語を用いていた場合、この加重が視野に入ります。
他方、あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅうについては、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律1条が免許を要求しており、無免許で業として行えば同法13条の7第1項1号により50万円以下の罰金となります。医薬品にあたる製剤を輸入・販売していれば、薬機法違反も重なります。
母国の資格は日本では効力を持たない
ご相談で必ず出てくるのが、この点です。中国で取得された医師や中医の資格は、そのままでは日本の医師免許としての効力を持ちません。日本で医業を行うには、日本の医師免許が必要です。この点の誤解は、故意の認定において意味を持ち得ますが、規制の存在そのものを知らなかったという主張は、法律の不知として故意を阻却しないと整理されるのが一般的です。
したがって弁護活動としては、行為の性質が医行為に当たるかどうかという評価の問題と、施術の実態、対価の有無、反復継続の意思の有無といった事実の問題を、丁寧に分けて検討していくことになります。
在留への影響――二重の問題が同時に起きる
外国人事件としての難しさは、ここにあります。第一に、刑事責任の問題です。医師法違反や薬機法違反は、入管法24条4号の2の列挙罪名には含まれていません。また、同条4号リは無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としつつ、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者を除いています。ですから、直ちに退去強制手続に移行する事態は一般には想定しにくいところです。
第二に、しかし、より現実的なのは在留資格の側面です。技術・人文知識・国際業務などの就労資格をお持ちの方が、資格に対応しない収入活動を行っていれば、入管法19条1項に違反する資格外活動となります。この状態が専ら行われていると明らかに認められる場合には、同法24条4号イの退去強制事由が視野に入ります。さらに、在留期間の更新は同法21条3項の裁量判断であり、素行が善良であることは考慮要素とされていますので、罰金であっても更新審査に影響し得ます。
つまりこの類型は、刑罰の重さそのものよりも、在留資格の枠組みからの逸脱として評価される点に本質があります。刑事事件だけを見て「罰金で済んだ」と考えると、次の更新で足元をすくわれかねません。
初動で押さえたい3点
- 施術の内容と対価の有無を、時系列で正確に整理すること。無償の相互扶助か、業として行っていたかは、条文上の分かれ目です。
- SNSや広告の表記を保全すること。削除すると証拠隠滅を疑われることがあり、他方で名称の使用は加重要件に関わります。弁護人と相談のうえで対応してください。
- 就労資格をお持ちの方は、本来の勤務先での勤務実態を示す資料を整えること。資格外活動が専らのものであったか否かの評価に直結します。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、刑事手続と入管手続を一体として設計する弁護方針を採っております。この類型は、まさに刑事の結論と在留の帰趨が別々に動く場面であり、両方を同時に見通す必要がございます。
解決事例としては、特殊詐欺の出し子に関与したとされた20代の女性について、置かれていた状況と主観面を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例がございます。周辺的な関与にとどまる方が、組織の枠組みのなかで重く評価されがちな構造に対し、事情を丁寧に積み上げることの意味を示すものです。
また、企業の支配権をめぐる紛争など、事業活動の実態が争われる事件の経験もございます。事業としての継続性や実態をどう立証し、あるいは否定するかという作業は、この類型とも通じるところがございます。
当事務所では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。事務員や若手弁護士に引き継ぐ運用を採っておりません。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関側の通訳とは別に、依頼者ご本人の立場で動く通訳を刑事手続の全般でご利用いただけます。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更についても、提携の行政書士と連携してご対応いたします。
結語
同郷の方を助けるつもりで始めた施術が、資格制度の網に触れてしまう。この類型のご相談には、そうした背景がしばしばございます。刑事の結論と在留の見通しは別々に動きますので、罰金で終わったとしても、次の更新を見据えた準備を早めに始めていただきたいと考えております。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
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