舟渡国際法律事務所

「略式手続に同意すれば早く終わる」という誤解|罰金の前科と在留への波及

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「略式手続に同意すれば早く終わる」という誤解|罰金の前科と在留への波及

「略式手続に同意すれば早く終わる」という誤解|罰金の前科と在留への波及

2026/08/15

留置場で検察官から、「罰金で済ませることができる。この書面に署名すれば今日中に出られる」と説明を受ける。長く身柄を拘束された方にとって、これほど魅力的な提案はありません。しかし外国人の方の場合、この署名が在留に及ぼす影響は、日本人の場合とは異なることがあります。ここでは、略式手続の仕組みと、署名の前に確認しておくべきことを整理いたします。

本記事の要点

  • 略式手続とは、簡易裁判所が、検察官の請求により、公判を開かずに書面の審査で100万円以下の罰金又は科料を科す手続です(刑事訴訟法461条)。
  • 検察官は、略式命令を請求するにあたり、被疑者に手続の説明をし、通常の裁判を受けられる旨を告げたうえで、略式手続によることに異議がないかを確かめなければなりません。異議がないときは、被疑者は書面でその旨を明らかにします(同法461条の2)。つまり、あの署名は「有罪であることを前提に、公判を開かないことへの同意」です。
  • 略式命令を受けた者は、告知を受けた日から14日以内に正式裁判を請求することができます(同法465条1項)。
  • 罰金であっても有罪の判決です。薬物関係の法令違反であれば入管法24条4号チに、旅券法違反であれば同条4号ニに該当します。いずれも刑の軽重を問いません。
  • 「早く出られる」ことと「在留が守られる」ことは、別の問題です。

何に同意しているのか

略式手続は、争いのない軽微な事件を迅速に処理するための制度です。公判が開かれないため、法廷で事情を述べる機会はありません。書面の審査だけで罰金が確定します。手続の性質上、被疑者が事実を争っていないことが前提になります。

したがって、事実関係に納得していない場合、記憶が曖昧な部分がある場合、そもそも構成要件に当たるのか疑問がある場合には、安易に異議がない旨の書面に署名すべきではありません。裁判所も、略式命令をすることが相当でないと判断すれば、通常の規定に従って審判を行うこととされています(刑事訴訟法463条1項)。

外国人の方にとって何が違うのか

日本人の方であれば、罰金の前科が生活に及ぼす影響は限定的です。しかし外国人の方の場合、次の三つの経路で影響が生じます。

第一に、退去強制事由です。入管法24条4号チは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法、麻薬特例法、刑法第2編第14章の違反により有罪の判決を受けた者を退去強制事由としています。刑の重さの限定も執行猶予の除外もありません。同条4号ニも、旅券法23条1項(6号を除く)から3項までの罪により刑に処せられた者を対象としており、罰金でも該当します。これらの類型では、略式罰金に同意することが、そのまま退去強制事由の成立を意味し得ます。

第二に、在留期間の更新です。更新の許否は入管法21条3項に基づく裁量に委ねられ、公表されている審査のガイドラインは素行が善良であることを考慮事項に掲げています。罰金の前科は記録として残り、次の更新の際に参照されます。

第三に、上陸拒否です。入管法5条1項5号は、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は向精神薬の取締りに関する法令に違反して刑に処せられたことのある者を上陸拒否事由としており、こちらには期間の定めが置かれていません。

署名の前に確認すべきこと

弁護人がいれば、次の点を確認します。罪名がどの法令に基づくものか。その法令が入管法24条各号のいずれかに列挙されているか。不起訴処分(起訴猶予を含む)の可能性が残されているか。示談や被害弁償によって処分が変わる余地があるか。

不起訴となれば、刑に処せられていない以上、4号チや4号ニの適用はありません。ここに、外国人事件で不起訴処分を最優先の目標とする理由があります。罰金で早期に釈放されることを選ぶか、勾留が続くとしても不起訴を目指すか。これは弁護方針の根幹に関わる選択であり、通訳を介した短い説明の場で即断すべきものではありません。

初動で押さえておきたい3つのこと

  • 検察官から書面への署名を求められたときは、弁護人に相談したい旨を伝えてください。その場で署名する義務はありません。
  • 既に略式命令を受けた場合でも、告知の日から14日以内であれば正式裁判を請求できます。日付を確認してください。
  • 通訳を介した説明では、「罰金」と「不起訴」の違いが正確に伝わらないことがあります。分からない部分は、必ず聞き直してください。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標として弁護方針を組み立てています。

特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代の女性について、指示役から欺かれ、脅迫的な状況に置かれていた事情を含めて主観面を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例があります。また、在留資格を失った状態で不法滞在により逮捕・起訴された方について、婚姻・認知の手続を成立させ、過去の許可事例を分析したうえで在留特別許可を獲得した事例もあります。刑事処分の内容が入管の判断に直結する類型では、処分の選択そのものを弁護活動の対象とする必要があります。

接見の初動から公判の結審まで松村大介弁護士が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く通訳をご利用いただけます。

結語

「今日中に出られる」という言葉には、確かな価値があります。ただ、その先に控えている在留の手続まで見通したうえで選ぶのでなければ、後から取り返すことは難しくなります。署名を求められた場面こそ、一度立ち止まるべき瞬間です。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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