舟渡国際法律事務所

「外国人の犯罪は増えている」という前提を検証する|統計の読み方と、身柄判断への影響

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「外国人の犯罪は増えている」という前提を検証する|統計の読み方と、身柄判断への影響

「外国人の犯罪は増えている」という前提を検証する|統計の読み方と、身柄判断への影響

2026/08/15

外国人の刑事事件を担当していると、捜査や裁判の場面で、明文化されない前提が働いていると感じることがあります。逃亡のおそれが類型的に強調される、身元引受けの実効性が疑われる、通訳を介した供述の信用性が低く見積もられる。その背後にあるのは、「外国人の犯罪は増えている」という漠然とした認識です。この記事では、公表されている統計を手がかりに、その前提がどこまで裏づけられるのかを確認し、それが弁護活動にどう関わるのかを述べます。

本記事の要点

  • 警察庁の令和7年警察白書は、来日外国人犯罪の検挙状況を国籍・地域別に示しています。令和6年中の検挙では、ベトナムと中国の2か国で検挙件数全体の約6割、検挙人員全体の約半数を占めると報告されています。
  • 他方、共同通信が2026年2月に配信した警察庁データの分析によれば、2021年から2025年までの5年間に摘発された外国人は5万6,706人で、ピークであった2001年から2005年までの9万3,899人と比べて約4割減少しています。同じ期間に日本に住む外国人は201万人から395万人へと増加しました。
  • 「実数が最も多かった時期は20年前であり、その後の在留外国人の増加とは逆の方向に検挙数が動いている」というのが、公表データから読み取れる姿です。
  • 統計は、個々の被疑者・被告人の危険性を推し量る材料にはなりません。身柄の判断と量刑は、その人の具体的な事情によって決められるべきものです。
  • 弁護人の役割は、類型的な評価を、個別の事実で置き換えることにあります。

数字を読むときの三つの注意

第一に、母数の変化です。在留外国人の数が倍増していれば、検挙人員が横ばいであっても、人口当たりの割合は半減します。実数だけを取り出して増減を論じると、方向を見誤ります。

第二に、罪名の構成です。警察白書によれば、令和6年中の来日外国人による窃盗の検挙件数はベトナムが最も多く、傷害・暴行では中国が最も多いと報告されています。ただし、これらの数字には、在留資格の有無に関わる特別法犯や、組織的な事案で一件が多数の被害に及ぶ類型が含まれます。件数と人員の比が国籍によって大きく異なる場合、それは事件の性質の違いを示しているのであって、集団の傾向を示すものではありません。

第三に、統計の目的です。統計は施策の立案のために作られており、個別の裁判の判断資料として作られたものではありません。ある人が逃亡するかどうかは、その人の住居、家族、職、在留資格の状況によって決まります。国籍別の集計から導けるものではありません。

この前提が、実際の手続にどう影響するか

勾留の要件は、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由、逃亡すると疑うに足りる相当な理由の有無です。ここで「外国籍だから帰国してしまうおそれがある」という抽象的な理由づけが用いられることがあります。しかし、日本に生活の基盤があり、在留資格を有し、家族と同居し、就労を継続している方について、国籍のみを理由に逃亡のおそれを認めることは、判断の実質を欠きます。

弁護人としては、住民票と在留カードの記載、勤務先からの上申書、家族の陳述書、賃貸借契約書、子の就学状況といった、具体的な生活の痕跡を積み上げます。抽象的な類型論に対しては、具体的な事実で応じる。これが最も有効な反論です。

責任は、個人の行為に対して問われる

もう一歩踏み込んで申し上げると、この論点は、行政処分の場面にも通じています。当事務所は、退去強制事由の判断について、故意・過失を要件としない従来の実務に対し、責任主義の射程がどこまで及ぶのかを問う訴訟を提起し、上訴審まで争ってまいりました。人は自分の行為とその責任に応じて扱われるべきであり、属性によって一律に扱われるべきではない。統計を用いた類型的判断への警戒と、この主張とは、同じ根から出ています。

初動で押さえておきたい3つのこと

  • 生活の実態を示す資料は、逮捕された当日から集め始めてください。時間が経つほど取得は難しくなります。
  • 勤務先や学校への連絡は、弁護人と相談のうえで行ってください。伝え方によって、身元引受けの申出につながることがあります。
  • 「外国人だから仕方がない」と諦める必要はありません。判断の根拠を問うことは、弁護人の仕事です。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、外国人の刑事弁護と入管手続に取り組んでいます。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の精査と被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得した事例があります。また、裁判員裁判対象事件を含む重大事件、社会的な関心を集めた事件への対応経験を有しています。さらに、不法就労助長罪に問われて強制退去の危機に置かれた女性の事案では、退去強制事由の判断における故意・過失の要否を正面から問う訴訟を提起し、その後、在留特別許可が認められました。

接見の初動から公判の結審まで松村大介弁護士が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。

結語

統計は、社会の姿を大づかみに知るための道具です。それを個人の評価に持ち込むと、判断は粗くなります。目の前の一人について、どこに住み、誰と暮らし、何をして生計を立ててきたのかを語ること。弁護人がすべきことは、結局そこに帰ってまいります。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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