舟渡国際法律事務所

職務質問をめぐるトラブルで公務執行妨害に問われたら|言葉が通じない場面と立件の境界

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職務質問をめぐるトラブルで公務執行妨害に問われたら|言葉が通じない場面と立件の境界

職務質問をめぐるトラブルで公務執行妨害に問われたら|言葉が通じない場面と立件の境界

2026/08/15

夜間の路上で職務質問を受け、押し問答になり、腕を振り払ったところ公務執行妨害で現行犯逮捕された。外国人の方からのご相談で、この経緯は決して珍しいものではありません。多くの場合、ご本人は「暴力を振るったつもりはない」とおっしゃいます。他方、警察官の側は「振り払われて負傷しかけた」と説明します。この隔たりの中に、何が犯罪となり、何がならないのかという境界が横たわっています。

本記事の要点

  • 公務執行妨害罪は、公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた場合に成立します。法定刑は3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(刑法95条1項)。
  • ここでいう暴行は、直接に身体へ向けられたものに限らず、職務の執行を妨げる程度の有形力の行使を含むと解されています。もっとも、あらゆる身体の動きが暴行に当たるわけではありません。
  • 公務執行妨害罪は刑法第2編第5章に位置し、入管法24条4号の2が列挙する各章には含まれていません。24条4号チの薬物関係にも当たりません。
  • 退去強制事由として問題となり得るのは、24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑。全部執行猶予は除外)です。単独の事案でこの水準に達することは多くありません。
  • ただし、在留期間の更新・変更の審査では素行が考慮されます。また、事案によっては傷害罪(刑法第27章)が併せて問題となり、その場合は別表第一の在留資格の方について24条4号の2の射程に入ります。

「暴行」と「振り払い」の境界

判断の分かれ目は、職務の執行を妨げる程度の有形力があったといえるかどうかです。腕をつかまれた状態で振りほどこうとした動作について、その強度、方向、警察官の姿勢、周囲の状況を踏まえて評価されます。反射的な身動きにとどまるのか、押し倒す方向の力が加わっているのかで、結論は変わり得ます。

もう一つ重要なのが、職務の適法性です。公務執行妨害罪は、適法な職務の執行を保護するものと解されています。職務質問と所持品検査には、警察官職務執行法2条に基づく限界があり、任意の域を超えた有形力の行使は許されません。停止を求める態様、質問の継続時間、所持品検査の方法に問題があった場合、それは職務の適法性を争う手がかりになります。当事務所は、行政の処分や公権力の行使について、その適法性を正面から争う事件を継続的に扱ってまいりました。この視点は、公務執行妨害の事案でも同じように働きます。

言語の壁が生む固有の問題

外国人の方の事案には、日本人の事案にはない要素が加わります。第一に、職務質問の趣旨が正確に伝わっていない場面が多いことです。何を求められているのか分からないまま立ち去ろうとした行動が、非協力的な態度と受け取られることがあります。第二に、逮捕後の取調べで用いられる通訳の質です。「振り払った」「押した」「たたいた」の訳し分けは、そのまま構成要件の評価に直結します。第三に、現場に居合わせた第三者の証言を得にくいことです。

これらは、いずれも弁護活動で埋めることのできる差です。現場の防犯カメラ映像、警察官の装着する記録機器の有無、同行者の証言、負傷の有無を示す診断資料。事実を可視化する資料を早期に確保できるかどうかが、事案の帰趨を左右します。

不起訴処分を目指す

公務執行妨害の事案では、被害者が公務員であるため、通常の意味での示談は成立しにくい面があります。それでも、行為の態様が軽微であること、負傷の結果が生じていないこと、経緯に誤解があったこと、本人が事態を理解し再発の可能性がないことを積み上げれば、起訴猶予は十分に視野に入ります。

在留の観点から見ても、不起訴処分には確かな意味があります。罰金であれ執行猶予であれ、有罪の記録は次の在留期間の更新の際に素行の評価として参照されます。入管法21条3項に基づく更新の許否は法務大臣の裁量に委ねられており、審査のガイドラインは素行が善良であることを考慮事項に掲げています。刑事の結論が軽ければ在留は安全、という単純な関係にはありません。

初動で押さえておきたい3つのこと

  • 現場での言い分と、取調べでの供述が食い違うと、後から修正することは容易ではありません。落ち着いて話せる状態になるまで、黙秘権を行使することも一つの選択です。
  • 映像記録は時間の経過とともに失われます。日時・場所を弁護人に正確に伝えてください。
  • 通訳を介した取調べでは、訳された内容が自分の言いたいことと一致しているかを確認してください。分からないまま署名しないことが大切です。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、外国人の刑事事件を扱うとともに、警察の処分や行政庁の判断を争う行政訴訟にも継続的に取り組んでまいりました。

たとえば、ストーカー規制法4条1項に基づく文書警告の取消し等を求めた控訴事件では、大阪高裁が、警告が銃砲刀剣類所持等取締法上の欠格事由と結びつけられている点に着目し、警告に法的効力が生じることを認めています(令和6年6月26日大阪高裁判決)。訴え自体は却下されましたが、この事件で立てた警告の処分性という論点は、その後、重要判例解説をはじめとする学術誌で検討の対象となっています。警察の活動を法的に検証する姿勢は、公務執行妨害の事案における職務の適法性の検討にも通じるものです。

また、裁判員裁判対象事件や、社会的な関心を集めた事件への対応経験を有しており、中国籍の方の重大事件にも数多く対応してまいりました。接見の初動から公判の結審まで松村大介弁護士が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。

結語

現場の数秒間の出来事が、その後の在留に影響を及ぼすことがあります。だからこそ、何があったのかを正確に記録し、職務の適法性まで含めて検討する必要があります。言葉が通じなかったという事情は、言い訳ではなく、事案の評価に組み込まれるべき事実です。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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