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他人名義の旅券を使ったら|旅券法違反は罰金でも退去強制事由になります

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他人名義の旅券を使ったら|旅券法違反は罰金でも退去強制事由になります

他人名義の旅券を使ったら|旅券法違反は罰金でも退去強制事由になります

2026/08/15

在留に関するご相談の中で、最も見落とされやすいのが旅券法違反です。他人名義のパスポートを使って搭乗手続をした、失効した旅券を提示した、行使の目的で他人名義の旅券を預かっていた。こうした行為は、刑の重さにかかわらず退去強制事由に直結します。薬物事件については「有罪判決だけでアウト」という理解が広まりつつありますが、旅券法違反も同じ構造にあることは、あまり知られていません。

本記事の要点

  • 入管法24条4号ニは、旅券法23条1項(6号を除く)から3項までの罪により刑に処せられた者を退去強制事由としています。
  • 「刑に処せられた」とありますので、拘禁刑に限らず罰金でも該当します。執行猶予による除外もありません。
  • 旅券法23条1項の対象には、他人名義の旅券又は渡航書の行使(2号)、行使の目的での他人名義の旅券の譲渡・貸与・譲受け・借受け・所持(4号)、偽造旅券の授受や所持(5号)、失効した旅券の行使(7号)が含まれます。
  • 法定刑は5年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科です。営利の目的がある場合は7年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科となります(同条2項)。
  • 未遂も処罰されます(同条3項)。したがって、搭乗手続の途中で発覚した場合であっても、退去強制事由の射程に入り得ます。

条文の構造を確認する

入管法24条は、退去強制事由を号ごとに書き分けています。号によって要件の作りが異なるため、まとめて理解しようとすると誤ります。

たとえば、24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれます。これに対して、24条4号ニは旅券法違反について「刑に処せられた者」とのみ定め、刑種による限定も執行猶予による除外も置いていません。24条4号チが薬物関係の法令違反について「有罪の判決を受けた者」とするのと同様に、処分の軽重が問われない構造です。

したがって、略式手続で罰金となり、一日も身柄を拘束されずに終わったとしても、退去強制事由としては成立し得ます。刑事事件が軽く終わったことと、在留が守られたこととは、別の話だということです。

「軽い気持ちで」という場面が最も危ない

この類型の相談で多いのは、切迫した事情の下での行為です。在留資格を失った状態で帰国しようとして、手元にある他人名義の書類を使ってしまった。知人から預かっていた旅券を、行使の目的があると評価される態様で所持していた。空港で失効した旅券を提示した。いずれも、本人の意識としては「重大な犯罪をしている」という自覚が薄い場面です。

しかし条文上は、これらは正面から24条4号ニに乗ります。しかも旅券法違反の周辺には、有印私文書偽造・同行使(刑法159条・161条)、入管法上の在留カード関係の罪などが併存することが多く、複数の退去強制事由が重なる事態も生じます。在留カードの偽造・行使等については、そもそも刑事処分の有無を問わず、入管法24条3号の5が独立の退去強制事由を定めています。

不起訴処分の意味は、この類型で特に大きい

24条4号ニが「刑に処せられた者」を対象とする以上、刑に処せられなければ同号には該当しません。起訴猶予を含む不起訴処分を得ることが、退去強制事由の成立そのものを回避する唯一の道になります。「罰金なら早く終わるから応じてしまおう」という判断が、この類型では最も危険です。

弁護活動としては、行使の目的の不存在、所持の態様、本人が置かれていた事情(帰国の必要、家族の状況、第三者からの働きかけ)を丁寧に主張し、起訴猶予を求めることになります。加えて、既に在留資格を失っている方の場合には、刑事手続と並行して在留特別許可の可能性を検討し、日本人配偶者や日本国籍の子との家族関係、在日期間、出頭申告の経緯といった事情を、入管法50条5項の考慮事項に沿って整理していきます。

初動で押さえておきたい3つのこと

  • 旅券に関する取調べでは、「なぜその書類を持っていたのか」が核心になります。事実関係を整理しないまま供述を重ねないでください。
  • 家族関係を裏づける資料(婚姻・出生に関する書類、同居の実態を示す資料)は、後の入管手続で必要になります。刑事手続の段階から準備を始めることに意味があります。
  • 罰金で終わらせる提案を受けたときこそ、在留への影響を確認してください。刑事の出口が入管の入口になる類型です。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、刑事手続と入管手続を一体として設計する方針を採っています。

在留特別許可の分野では、観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案があります。婚姻・認知の手続が未了であったため当局から一旦は不受理とされましたが、憲法的観点から交渉を重ねて婚姻・認知を成立させ、刑事裁判における被告人質問・証人尋問も入管手続を見据えて実施しました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しないという困難な状況の下で、依頼者に有利な事情を積み上げ、過去の許可事例を分析することにより、在留特別許可を獲得しています。

また、不法就労助長罪に問われて強制退去の危機に置かれた女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争いました。その後、在留特別許可が認められています。訴訟の結論と在留特別許可とは別のものですが、刑事の段階から入管の段階を見通して主張を組み立てることの意味を示す事案です。

接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。

結語

旅券は、国境を越えるための書類であると同時に、その人の在留の適法性を証明する書類でもあります。だからこそ、旅券に関する違反は、刑の重さと切り離して退去強制事由とされているのです。罰金で終わったから大丈夫、という判断をする前に、必ず条文に当たってください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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