舟渡国際法律事務所

刃物を持っていて銃刀法違反に問われたら|「薬物と同じで一発で送還」という誤解を正す

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刃物を持っていて銃刀法違反に問われたら|「薬物と同じで一発で送還」という誤解を正す

刃物を持っていて銃刀法違反に問われたら|「薬物と同じで一発で送還」という誤解を正す

2026/08/15

車の中に果物ナイフを入れたままにしていた、仕事で使う刃物を帰り道に持ち歩いていた。そうした場面で銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)違反に問われることがあります。ご相談の際に多いのが、「薬物と同じで、外国人はこの罪で有罪になれば必ず強制送還される」という思い込みです。結論から申し上げると、それは正確ではありません。ただし「だから安心」という話でもありません。条文の構造を正しく押さえておくことが、その後の判断を誤らないための第一歩です。

本記事の要点

  • 刃体の長さが6センチメートルを超える刃物の携帯は、正当な理由がなければ禁止されています(銃刀法22条)。法定刑は2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です(同法31条の18第2項2号)。
  • 入管法24条4号チが定める「有罪の判決だけで退去強制事由となる罪」は、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法、麻薬特例法、刑法第2編第14章に限られます。銃刀法違反は含まれません。
  • 入管法24条4号の2が列挙する罪の中にも、銃刀法違反は入っていません。
  • したがって、銃刀法違反で罰金や執行猶予付きの判決を受けたことのみを理由に、直ちに退去強制事由が成立するわけではありません。問題となるのは1年を超える実刑に至った場合の4号リです。
  • もっとも、在留期間の更新・変更の審査における素行の評価には直接影響します。刑事事件が終わっても入管の判断が残る、という順序を意識する必要があります。

銃刀法22条は何を禁じているのか

銃刀法22条は、業務その他正当な理由による場合を除いて、内閣府令の定めにより計った刃体の長さが6センチメートルを超える刃物の携帯を禁じています。ただし、8センチメートル以下のはさみや折りたたみ式のナイフなど、政令で定める種類・形状のものは除かれます。実務で争いになるのは、ほぼ例外なく「正当な理由」の有無です。

飲食店の調理を担当している方が、勤務先で使う包丁を研ぎに出した帰りに携帯していた場合と、深夜に理由の説明がつかないまま所持していた場合とでは、評価が大きく異なります。購入直後で包装されたままであったか、車内に常時置きっぱなしであったか、直前にトラブルがあったか。こうした事情の一つひとつが「正当な理由」の判断材料になります。ここは、事実を丁寧に立証すれば結論が動く領域です。

退去強制事由の条文を正確に読む

外国人事件では、罪名と入管法の条項とを一対一で対応させて確認する作業が欠かせません。

入管法24条4号チは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法、麻薬特例法、そして刑法第2編第14章(あへん煙に関する罪)に違反して有罪の判決を受けた者を退去強制事由としています。刑の重さの限定も、執行猶予の除外もありません。薬物事件が「一発でアウト」と言われるのは、この条文の構造によるものです。銃刀法は、この列挙の中にありません。

次に、入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格の方について、刑法の特定の章の罪(第12章、第16章から第19章、第23章、第26章、第27章、第31章、第33章、第36章、第37章、第39章)、暴力行為等処罰に関する法律の一部、盗犯等の防止及び処分に関する法律、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律15条・16条、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条・6条1項、盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律22条の各罪により拘禁刑に処せられたことを退去強制事由としています。ここにも銃刀法は含まれていません。

残るのは入管法24条4号リです。同号は、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としますが、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者、および一部執行猶予で実刑部分が1年以下の者は除かれます。銃刀法22条違反の法定刑は2年以下の拘禁刑ですから、単独の起訴で1年を超える実刑となる場面は限られます。もっとも、傷害や脅迫といった他の罪と併合して審理される事案では、話が変わってきます。

それでも不起訴を目指す理由

退去強制事由に直ちには当たらない、という結論は、在留資格が安泰であることを意味しません。在留期間の更新や在留資格の変更は、入管法21条3項に基づく法務大臣の裁量に委ねられており、公表されている審査のガイドラインは素行が善良であることを考慮事項としています。罰金の前科は記録として残り、次の更新のときに素行の評価として持ち出されます。

さらに、上陸拒否の場面では、銃砲や刀剣類を不法に所持する者は入管法5条1項8号に該当します。一度日本を出てから戻る際に、過去の経緯が問われることがあるということです。

したがって、目指すべきは起訴猶予を含む不起訴処分です。「正当な理由」に関する客観的な裏づけ、たとえば勤務先の作業内容を示す資料、購入の経緯を示すレシート、行動の目的を裏づける記録を早期に揃え、検察官に提示することが有効です。

初動で押さえておきたい3つのこと

  • 職務質問の場面で所持品検査に応じるかどうかは、その後の争点に直結します。応じた場合も、どのような経緯で提示したのかを記憶しておいてください。
  • 「正当な理由」は本人の説明だけでは足りません。裏づけとなる物や人を、記憶が新しいうちに弁護人へ伝えることが重要です。
  • 通訳を介した取調べでは、「持ち歩いていた」と「置いてあった」の区別が曖昧になりがちです。日本語の微妙な差が、携帯の有無という構成要件の評価に直結します。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、外国人の刑事事件と入管手続を一体のものとして扱っています。

たとえば、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の精査と被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得した事例があります。所持や認識の有無が争点となる類型では、捜査の経緯そのものを検証する姿勢が結果を左右します。また、不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に置かれた女性の事案では、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争い、その後、在留特別許可が認められました。刑事の段階と入管の段階を切り離さずに設計する、という当事務所の姿勢を示す事案です。

接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、刑事手続の全般にわたってご利用いただけます。

結語

条文を一つずつ確かめれば、恐れるべき場面とそうでない場面の区別がつきます。銃刀法違反は、薬物事件のような「有罪判決だけで退去強制」という構造には置かれていません。しかし、次の在留期間の更新という静かな関門は確かに存在します。刑事事件の出口を設計するときは、その先の入管の判断まで見通しておくことが必要です。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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