舟渡国際法律事務所

無免許運転・ひき逃げで外国人が逮捕されたら|危険運転と過失運転で在留リスクはこう変わる

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無免許運転・ひき逃げで外国人が逮捕されたら|危険運転と過失運転で在留リスクはこう変わる

無免許運転・ひき逃げで外国人が逮捕されたら|危険運転と過失運転で在留リスクはこう変わる

2026/08/14

本記事の要点

  • 入管法24条4号の2は、危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法2条)と、これを無免許で犯した場合の加重類型(同法6条1項)を列挙しています。
  • 他方、過失運転致死傷罪(同法5条)、無免許運転・救護義務違反(道路交通法)は、この列挙に含まれていません。
  • したがって、別表第一の在留資格をお持ちの方の場合、危険運転と評価されるか過失運転にとどまるかで、在留リスクの構造そのものが変わります。
  • 列挙外の罪名であっても、1年を超える実刑となれば入管法24条4号リにより退去強制の対象となります。
  • 過失犯である以上、注意義務の内容と予見可能性は正面から争える論点です。刑事段階でこれを詰めることが、入管手続の備えにもなります。

深夜、接触の感触はあったが暗くて確認できずそのまま走り去った。あるいは、免許の更新手続を失念したまま運転を続けていた。日本での生活が長くなるほど、こうした場面はご本人の意識の外で起こります。そして事故が絡んだ瞬間に、刑事事件と在留資格の問題が同時に立ち上がります。

本記事は、外国人の方が交通事件で身柄を拘束された場合に、罪名によって在留への影響がどのように変わるのかを、入管法の条文構造に即して整理したものです。

1 交通事件で問われる罪名の整理

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷処罰法)は、危険運転致死傷罪(2条)と過失運転致死傷罪(5条)を区別しています。前者は、アルコールや薬物の影響、制御困難な高速度、赤色信号の殊更な無視といった類型的に危険な運転行為を要件とし、法定刑は極めて重く定められています。後者は、自動車の運転上必要な注意を怠り人を死傷させた場合であり、7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。

これとは別に、道路交通法の世界があります。無免許運転(道交法117条の2の2)、事故時の救護義務違反、いわゆるひき逃げ(同法117条)です。事故を起こした運転者が救護義務を怠った場合の法定刑は10年以下の拘禁刑と重く、故意犯である点も、過失運転致死傷罪との大きな違いです。

実務上は、これらが併合罪として同時に処理されることが多く、量刑は事故態様と事後対応の双方から評価されます。

2 在留への影響 ― 列挙されているのは危険運転だけである

ここが本記事の核心です。入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格で在留する方について、一定の罪により拘禁刑に処せられた場合を退去強制事由と定めています。そして、そこに列挙されている交通関係の罪は、自動車運転死傷処罰法2条の罪(危険運転致死傷)と同法6条1項の罪(無免許による加重類型)だけです。

この規定には、刑の全部の執行猶予を除外する旨の但書がありません。すなわち、別表第一の在留資格をお持ちの方が危険運転致死傷罪で執行猶予付きの拘禁刑を受けた場合、それだけで退去強制事由に該当し得るということになります。「執行猶予が付いたから大丈夫」という理解が最も危険なのが、まさにこの類型です。

他方、過失運転致死傷罪(同法5条)、無免許運転、救護義務違反は、4号の2の列挙には含まれていません。これらについては、入管法24条4号リ、すなわち無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた場合(刑の全部の執行猶予を受けた者を除く)が問題となります。救護義務違反の法定刑の上限は10年ですから、被害が重大で逃走の態様も悪質な事案では、この線を超え得ます。

つまり、同じ交通事件でも、危険運転と構成されるか過失運転にとどまるかで、在留リスクの構造そのものが変わります。この点を刑事弁護の初期段階で意識しているかどうかが、結果を大きく左右します。

3 過失と故意を争うことの意味 ― 入管手続への備え

危険運転致死傷罪と過失運転致死傷罪の分水嶺は、運転行為の危険性の評価と、その認識の有無にあります。アルコールの影響の程度、速度の制御可能性、信号の認識といった事実は、いずれも捜査段階の供述と客観証拠の突き合わせによって認定されます。ここを丁寧に争うことは、量刑のためだけではありません。適用条文が変われば、退去強制事由該当性の構造そのものが変わるからです。

さらに一歩進んだ論点があります。入管実務では、退去強制事由の判断にあたり故意・過失の有無は要件とされないという運用が長年踏襲されてきました。しかし、これは責任主義の射程を行政処分にどこまで及ぼすかという、憲法上の問題を含んでいます。松村大介弁護士は、不法就労助長の事案において、この論点を正面から問う訴訟を提起し、現在も係争中です。

交通事件は、まさに過失の内容が正面から問われる類型です。刑事段階で予見可能性・結果回避可能性を具体的に詰めておくことは、仮に有罪となった場合の入管手続において、責任の程度を主張するための土台にもなります。この二重の防御線を意識した弁護活動が必要です。

4 不起訴処分を目標に置く

以上を踏まえれば、目標は明確です。起訴前の段階で不起訴処分を獲得することが、在留を守る最も確実な方法です。人身事故を伴う事案では、被害者との示談の成否が起訴不起訴の判断に大きく影響します。任意保険による賠償とは別に、被害者に対する謝罪と宥恕を得るための弁護活動が必要です。

また、無免許運転が単独で問題となる事案では、罰金による略式手続で終わる場合もあります。罰金であれば、入管法24条4号リの拘禁刑には当たりません。ただし、在留期間の更新(入管法21条)の審査では素行が考慮されますので、罰金前科であっても不利益に働き得る点には注意が必要です。

5 初動で押さえておきたい3点

  • 事故直後の記憶に基づく供述は、後の危険運転/過失運転の振分けを事実上決めてしまうことがあります。取調べに応じる前に、弁護人と方針を確認してください。
  • 早期に弁護人を選任し、被害者側との接触経路を確保する。示談交渉は弁護人を通じて行うことが原則です。
  • 通訳を確保する。速度、距離、視認状況といった事故の細部は、通訳の精度がそのまま事実認定の精度になります。

6 当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。

重大事件への対応実績も蓄積しております。裁判員裁判の対象となる事件、国際的に報道された事件を含め、中国籍の方の重大事案に数多く対応してまいりました。証拠構造が複雑で、供述と客観証拠の突き合わせが結論を左右する事案において、争点を絞り込み、必要な鑑定・実況見分の再検討を求める弁護活動を行っております。

退去強制手続への波及にも一貫して対応いたします。前述のとおり、退去強制事由の判断における故意・過失要件については、松村大介弁護士が現在も係争中の論点として主張を続けており、不法就労助長罪の認定事件において在留特別許可を獲得した経過がございます。刑事段階から入管段階までを一本の戦略として設計することを、当事務所の基本方針としております。

当事務所には外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。捜査機関が指定する通訳人とは別に、依頼者ご本人のために動く通訳を、接見・打合せ・公判の各段階でご利用いただけます。

7 おわりに

交通事件は、誰の生活の中にも起こり得る事故から始まります。それが在留の可否にまで及ぶという構造は、日本人の方の事件を基準にした説明では見えてきません。事故の直後にどのような説明をするか、どの条文で立件されるかという入口の一点が、その後の生活を分けます。まずは早い段階でご相談いただき、見通しを持って手続に臨まれることをお勧めいたします。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

本記事の中国語版(简体字)はこちら

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