経営・管理の在留資格で会社を設立するときの実務|設立手続の順序と審査で見られる点
2026/08/30
日本で自分の会社をつくって事業を始めたい。取引先も見つかり、資金の準備もできたけれど、会社の登記と在留資格の申請をどちらから進めればよいのか分からない。中国籍の方から、こうしたご相談を数多くいただきます。事業そのものは順調なのに、事務所の借り方や資金の説明の仕方が原因で在留資格が認められないという事態は、実際に起きています。
本記事では、経営・管理の在留資格で会社を設立する場合に、どのような順序で手続を進めるのか、審査ではどこが見られるのか、そして不許可になりやすいのはどのような場面かを、実務の流れに沿って説明します。
経営・管理の在留資格とはどのような資格ですか
日本で事業の経営を行い、または事業の管理に従事する活動を行うための在留資格です。ここでいう活動は、実際に経営判断を行い、事業の運営に責任を負うものでなければなりません。名前だけ代表取締役として登記されていて、実際の経営は他の人が行っているという実態が確認されると、この在留資格に該当する活動を行っているとは認められません。逆に、規模が小さくても、本人が自ら意思決定を行い、事業として継続していく見込みがあるのであれば、資格該当性は認められ得ます。
会社を設立してから在留資格を申請するのですか、それとも先に資格が必要ですか
原則として、会社を設立し、事業を開始できる状態を整えたうえで在留資格の申請を行います。在留資格の審査は、これから行う活動の実体を確認するものだからです。もっとも、法人の設立登記には日本国内の住所や印鑑証明が必要となる場面があり、海外に住んだままでは手続が進めにくいという問題があります。この点については、事業の準備行為を行うために比較的短い在留期間が与えられ、その期間中に設立登記や事務所の確保、許認可の取得を済ませたうえで、改めて通常の在留期間への更新を申請するという運用が用いられています。すでに他の在留資格で日本に住んでいる方であれば、設立と準備を進めたうえで在留資格変更許可申請を行うことになります。
会社設立の手続はどのような順序で進めますか
おおよそ次の順序です。どの段階でつまずきやすいかを把握しておくと、全体の時間を読みやすくなります。
- 商号と事業目的の決定:許認可が必要な事業では、目的の記載が許認可の要件を満たしているかを先に確認します。
- 定款の作成と公証人による認証:発起人が海外在住の場合、印鑑証明書に代わるものとして、本国の公証機関や在日大使館・領事館で取得する署名証明が必要になることがあります。
- 出資金の払込み:払込みの記録が残る形で行い、通帳の写しなどで経路を示せるようにします。
- 設立登記の申請:登記が完了して初めて法人格が生じます。
- 税務署・都道府県・市区町村への届出、社会保険の加入手続:在留資格の更新時に、これらが済んでいるかが確認されます。
事業所はどのような場所であれば認められますか
事業の実体を裏づけられる、独立した事業所であることが求められます。審査で問題になりやすいのは、賃貸借契約の借主が個人名義のままである、契約書の使用目的が居住用となっている、実際には他社と同じ一室を共有しているだけである、といった場合です。自宅の一室を使う場合でも、事業用として区画され、貸主が事業利用を承諾していることを書面で示せるかどうかが分かれ目になります。契約を結ぶ前に、在留資格の申請で使えるかどうかという観点から契約条件を確認しておくことをお勧めします。
事業計画書には何を書けばよいですか
審査は、その事業が絵に描いた話ではなく、現に動き出しており、今後も続く見込みがあるかどうかを見ています。したがって、扱う商品やサービスの内容、想定する顧客、仕入先や取引先、価格の設定、初年度から数年分の収支の見通しを、根拠のある数字で示すことが必要です。すでに取引の予定があるのであれば、見積書や契約書の写し、往復した連絡の記録などを添えると説得力が増します。あわせて重要なのが、資本金の出所の説明です。自己資金であれば形成の経緯を、借入れであれば貸主との関係と返済計画を、海外からの送金であれば送金記録を示します。出所の説明ができない資金は、それだけで審査上の疑義につながります。
どのような場合に不許可となりやすいですか
実務でよく見るのは、次のような場合です。資本金の出所が説明できない、事業所の要件を満たしていない、事業計画が抽象的で収支の裏づけがない、本人が経営に関与している実態が見えない、日本国内での事業活動を裏づける資料がほとんど提出されていない、といった事情です。また、名義だけを貸して報酬を得るような関与は、在留資格の問題にとどまらず、別の法的責任を問われる可能性があります。不許可となった場合でも、理由を確認したうえで資料を補い、再度申請することは可能です。ただし、同じ資料で出し直しても結論は変わりにくいため、どこが足りなかったのかを整理することが先決です。
在留期間の更新で気をつけることは何ですか
更新の審査では、申請時の計画がどの程度実現しているかが確認されます。決算の内容、納税の状況、社会保険への加入、事務所の継続的な使用、そして本人が実際に経営に従事しているかどうかです。初年度に赤字となること自体が直ちに問題となるわけではありませんが、赤字や債務超過が続き、改善の見通しも示せない場合には、事業の継続性に疑義が生じます。中小企業診断士などの専門家による評価書面を用意するなど、説明の材料を早めに整えておくことが有効です。なお、所属する機関に関する届出については、事由が生じた日から14日以内に届け出る義務が入管法19条の16に定められていますので、法人の名称や所在地が変わったときは失念しないようにしてください。
従業員を雇うときに注意すべきことは何ですか
採用する外国人が就労できる在留資格を持っているかを、在留カードで必ず確認してください。就労が認められない人を働かせた場合、不法就労助長罪として入管法73条の2の適用があり得ます。この規定は、雇う側が外国人であっても当然に適用されます。さらに、退去強制事由としては入管法24条3号の4が定められており、この事由は刑事処罰を受けたかどうかにかかわらず、行為があったこと自体で該当します。経営者としての立場は、雇用管理の責任と表裏の関係にあるという点を、事業を始める段階から意識しておく必要があります。なお、将来永住許可を目指す場合には、原則として引き続き10年以上日本に在留していることに加え、独立した生計を営むに足りる資産または技能があることなどが審査されますので、会社の決算と個人の所得の記録は長期的な視点で整えておいてください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
経営・管理の在留資格は、事業の中身そのものよりも、その事業が実在し、継続する見込みがあることをどう示すかで結論が分かれる分野です。事務所の賃貸借契約、資本金の送金経路、取引先とのやり取りといった、事業を始めるときに何気なく決めてしまうことが、後の審査で決定的な意味を持ちます。設立の手続に入る前の段階でご相談いただければ、契約や資金の準備を審査に耐える形に整えることができます。すでに不許可となった方も、理由を整理して補強すれば道が開けることがあります。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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