勤務先が倒産したときに外国人労働者ができること|未払賃金の回収と在留資格の維持
2026/08/30
朝、いつものように出勤したら入口に貼り紙があり、事務所には誰もいない。社長の電話はつながらず、給料日を過ぎても振込みがない。寮に住んでいる場合は、住む場所まで同時に失いかねません。日本語での情報収集が難しい外国人労働者にとって、勤務先の倒産は、収入と住居と在留資格が一度に不安定になる出来事です。
この記事では、勤務先が倒産した場合に未払いの賃金をどのように回収するのか、社会保険や住居はどうなるのか、そして在留資格を維持するために何を急ぐべきかを整理します。
会社が倒産したら未払いの給料はどうなりますか
会社に支払能力がない場合でも、国の制度によって未払賃金の一部を受け取れる可能性があります。独立行政法人労働者健康安全機構が運営する未払賃金の立替払制度がそれで、一定の要件を満たす場合に、未払いとなっている定期賃金と退職手当の8割相当額が立替払されます。年齢に応じた上限額が定められています。
対象となるのは、退職日の一定期間前から立替払の請求日の前日までに支払期日が到来している未払賃金です。ボーナスは対象になりません。手続には、破産管財人や労働基準監督署長による証明が必要になりますので、まずは労働基準監督署に相談してください。
立替払制度は外国人でも利用できますか
利用できます。この制度は、労災保険の適用事業で働いていた労働者を対象とするもので、国籍による区別はありません。すでに帰国が決まっている方でも、要件を満たせば請求できます。
ただし、請求には期限があり、破産手続の開始決定などがあった日から一定期間内に行う必要があります。また、振込先として日本国内の口座が求められることが一般的です。帰国を予定している方は、出国前に口座と連絡先、委任の準備を整えておいてください。
倒産の種類によって手続は変わりますか
変わります。大きく分けて、裁判所の手続による法律上の倒産と、事実上の倒産があります。
- 破産手続や民事再生手続などの開始決定がある場合。破産管財人が選任され、その証明を得て立替払を請求します。労働者は債権者として届出も行います。
- 裁判所の手続はとられていないものの、事業活動が停止し、再開の見込みがなく、賃金支払能力もない場合。労働基準監督署長の認定を受けることで立替払の対象になり得ます。
後者の事実上の倒産のケースでは、労働者側から監督署に申し立てて認定を求めることになります。会社が何も手続をしていないからといって、あきらめる必要はありません。
社長と連絡が取れなくなった場合はどうすればよいですか
まず、事実を客観的に記録してください。事務所や工場の状況を写真に撮り、貼り紙があれば撮影し、電話がつながらないことを日付とともに記録します。同僚と連絡を取り合い、誰がどの時点まで働いていたのかを共有しておくことも重要です。
そのうえで、労働基準監督署に相談します。事実上の倒産の認定には、事業活動が停止していることを示す資料が必要になるためです。個々の労働者が別々に動くより、同じ職場の労働者がまとまって相談する方が、事実の裏づけは格段に得やすくなります。
倒産した場合、在留資格はどうなりますか
倒産によって在留資格が直ちに失われることはありません。ただし、契約機関との契約が終了したことになりますので、その日から14日以内に届出を行う義務があります。入管法19条の16に定められた義務です。
その後、対応する活動を行わない期間が続くと在留資格の取消しの対象になり得ますが、正当な理由がある場合は除かれます。勤務先の倒産という自らの責めに帰せない事情による失職は、この正当な理由として説明できる典型例です。倒産の事実を示す資料と、その後の求職活動の記録を残しておいてください。
社会保険や年金の手続はどうなりますか
会社が加入手続をしていた場合、退職により健康保険と厚生年金の被保険者資格を失います。健康保険については、国民健康保険に加入するか、一定の要件のもとで任意継続を選ぶことになります。無保険の期間を作らないことが大切です。
年金については、日本での加入期間が短いまま帰国する場合、脱退一時金の請求が考えられます。請求には期限があり、出国後に日本国内に住所を有しなくなってから一定期間内に行う必要があります。会社が保険料を納めていなかった場合でも、記録の訂正を求められることがありますので、給与明細で控除されていた事実を示す資料は保管しておいてください。
技能実習や特定技能の場合、受入れ先を変えられますか
変えられる仕組みがあります。技能実習の場合、実習先の倒産は本人の責めによらない事情ですので、監理団体や制度を所管する機構を通じて、実習を継続するための実習先の変更が検討されます。母国語での相談窓口が設けられています。
特定技能の場合は、受入れ機関の変更にあたって新たな契約と届出が必要になります。登録支援機関が支援の役割を担いますが、倒産に伴って支援が実際に機能しなくなることもあります。手続が止まっていると感じたら、内部の窓口だけに頼らず、出入国在留管理庁の相談窓口や弁護士にも直接連絡してください。寮を退去させられそうな場合は、住居の確保が最優先の課題になります。
帰国を選ぶ場合には何に注意すべきですか
帰国そのものは選択肢の一つですが、出国前に済ませるべきことがあります。順に確認してください。
- 未払賃金の立替払の請求手続。日本国内の受取口座と、代理人への委任の準備。
- 脱退一時金の請求に必要な書類の準備と、請求の期限の確認。
- 離職票、源泉徴収票、給与明細、雇用契約書など、証拠となる資料の写しの保管。
- 在留期間が残っている場合、期限内に出国すること。期間を過ぎてからの出国は不法残留の問題を生じさせます。
- 将来また日本で働く可能性があるなら、在留状況に傷を残さない形で出国すること。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
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初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
勤務先の倒産は、労働者に何の落ち度もないのに、生活の土台がまとめて崩れる出来事です。それでも、未払賃金の立替払、社会保険の切替え、在留資格の維持という三つの筋道は、いずれも制度として用意されています。重要なのは、いずれの手続にも期限があるということです。会社が動かないのであれば、労働者の側から動くほかありません。同じ職場の仲間と情報を持ち寄り、早い段階で公的窓口や弁護士にご相談ください。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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