退職後3か月で在留資格は取り消されますか|入管法22条の4第1項7号の正当な理由と届出の実務
2026/08/30
会社を辞めてから転職先がなかなか決まらない。気づけば2か月が過ぎ、インターネットで調べると、3か月働いていないとビザが取り消されるという記述が出てくる。在留期間はまだ1年以上残っているのに、このまま日本にいてよいのかどうか分からない。就労資格で在留する方から、こうしたご相談を数多くいただきます。
この記事では、就労資格を持つ方が退職後に活動をしていない期間が続いた場合の在留資格の取消しについて、条文の考え方、正当な理由として説明できる事情、そして今すぐ取るべき手続を整理します。
会社を辞めてから3か月経つと在留資格は取り消されますか
自動的に取り消されるわけではありません。入管法22条の4第1項7号は、別表第一の在留資格をもって在留する方が、その在留資格に対応する活動を継続して3か月以上行っていない場合を取消しの対象としていますが、正当な理由がある場合はこれを除くと明記されています。
つまり、3か月という期間の経過だけで結論が決まるのではなく、なぜ活動していなかったのかという理由が実質的に審査されます。また、取消しは法務大臣の判断によって行われる処分であり、後に述べる意見聴取の手続を経る必要があります。3か月を過ぎた瞬間に資格が消滅するという理解は正確ではありません。
正当な理由とはどのようなものですか
次のような事情は、正当な理由として説明できる可能性があります。いずれも、客観的な資料で裏づけられることが重要です。
- 会社の倒産や事業縮小、あるいは会社都合の解雇によって職を失い、引き続き転職活動を行っている場合
- 業務上または私傷病により療養が必要で、就労できる状態になかった場合
- 出産や育児、家族の看護のために一時的に就労できなかった場合
- 会社との間で解雇の効力や未払い賃金について争っており、その解決を待っている場合
- 次の勤務先は決まっているものの、就労開始日までに一定の期間があく場合
逆に、就労の意思も活動の実態もないまま漫然と滞在していた場合や、資格に対応しない別の仕事をしていた場合は、正当な理由があるとは認められにくくなります。
退職したときにしなければならない届出は何ですか
就労資格で在留する方は、契約機関との契約が終了したときや、新たな契約を結んだときに、その事由が生じた日から14日以内に届け出る義務があります。これは入管法19条の16に定められた義務です。届出は、出入国在留管理庁の窓口のほか、郵送や電子的な方法によっても行うことができます。
この届出は、単なる事務手続ではありません。退職の事実と時期を自ら明らかにしておくことは、後に活動していない期間の説明を求められたとき、経緯を正直に申告してきたという評価につながります。逆に、届出をしないまま期間が経過すると、それ自体が消極的な事情として扱われます。
取消しの手続はどのように進みますか
取消しを検討する段階になると、入国審査官による事実の調査が行われ、その後、意見を述べる機会が与えられます。呼出しの通知を受けた方は、指定された日時に出頭し、活動していなかった事情を説明することになります。
この意見聴取は、結論を左右する重要な場面です。通知が届いた時点で、必ず弁護士にご相談ください。説明すべき事情を整理し、裏づけとなる資料を準備して臨むのと、何も準備せずに出頭するのとでは、結果が大きく異なります。付添いを求めることも可能です。
在留資格を取り消されるとどうなりますか
取消しの類型によって扱いが異なります。活動を行っていないことを理由とする取消しの場合、直ちに退去強制の手続に移るのではなく、原則として出国のための準備期間として30日を超えない範囲の期間が指定されます。この期間内に自ら出国すれば、退去強制を受けたことにはなりません。
ただし、指定された期間内に出国しなかった場合や、偽りその他不正の手段によって在留資格を得ていたと認められる類型の取消しの場合には、退去強制の対象となります。退去強制を受けると上陸拒否期間が生じ、その後の来日が長期間にわたって制限されますので、この違いは非常に大きなものです。
3か月が近づいているとき、今すぐ何をすべきですか
優先順位は次のとおりです。時間との勝負になりますので、順番に進めてください。
- まだ退職の届出をしていなければ、直ちに提出する。期限を過ぎていても、提出しないよりはるかによい。
- 求職活動の記録を残す。応募した企業名と日付、面接の日程、人材紹介会社とのやり取り、ハローワークの利用記録などを保存する。
- 療養や育児など就労できない事情がある場合は、診断書や母子健康手帳など客観的な資料をそろえる。
- 在留期間の満了日を確認し、更新申請の時期を逆算する。
- 3か月を大きく超える見込みが立った段階で、地方出入国在留管理局または弁護士に相談する。
転職先の仕事の内容が前の会社と違う場合はどうすればよいですか
同じ在留資格の範囲に収まるかどうかを確認する必要があります。たとえば技術・人文知識・国際業務の資格で在留している方が、その資格が予定していない現場作業や単純労働に従事すると、資格に対応する活動を行っていないと評価される可能性があります。
そこで役立つのが就労資格証明書です。新しい勤務先での職務内容が現在の在留資格に該当するかどうかについて、あらかじめ確認を受けておくことができます。義務ではありませんが、更新の時期まで判断を先送りしないための実務的な方法として有用です。該当しない場合は、在留資格の変更を検討することになります。
取消しの通知が届いてしまったら手遅れですか
手遅れではありません。意見聴取の段階では、まだ何も決まっていません。転職先の内定通知、求職活動の記録、療養の必要性を示す診断書、家族の状況といった事情を具体的に示すことで、正当な理由が認められ、取消しに至らないこともあります。
また、取消しの処分がなされた場合であっても、その処分に対して不服を申し立て、あるいは裁判所に取消しを求めることが考えられます。いずれの手続にも期限がありますので、通知を受け取った日付を記録し、放置せずに速やかに相談してください。日本に生活の基盤があり、家族が日本にいる方ほど、争うべき事情は多く残されています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
退職後の空白期間をめぐる不安は、正確な情報が届かないために必要以上に大きくなりがちです。3か月という期間は確かに一つの目安ですが、法律は正当な理由がある場合を除外しており、実際に問われるのは、退職の経緯と、その後どのように次の就労に向けて動いてきたかという中身です。届出を済ませ、活動の記録を残し、期間満了までの見通しを立てることが、そのまま最良の準備になります。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
この記事の他の言語版
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
----------------------------------------------------------------------