不当解雇を争いながら在留資格を維持できるか|取消しを避けるための手続と説明の仕方
2026/08/30
突然の解雇を言い渡され、納得がいかないので争いたい。しかし、争っている間に働いていない期間が長くなると、在留資格を失うのではないか。就労資格で日本に暮らす方から、こうしたご相談を受けることがあります。生活の基盤と身分の基盤が同時に揺らぐため、不安は大きくなりがちです。
結論から申し上げると、解雇を争うこと自体が在留資格を失う理由になるわけではありません。ただし、届出や説明を適切に行わないまま時間が経つと、在留資格の維持が難しくなることがあります。ここでは、何をいつ行うべきかを整理します。
解雇を争っている間、在留資格はどうなりますか
結論として、在留期間の満了日までは、原則としてその在留資格による在留が続きます。解雇されたその日に在留資格がなくなるわけではありません。
もっとも、就労資格は、その資格に対応する活動を行うことを前提としています。したがって、働いていない状態が長く続くと、次の二つの場面で問題が生じ得ます。
- 在留資格の取消しが検討される場面(入管法22条の4)。
- 在留期間の更新が認められるかが判断される場面。
解雇を争っていることそれ自体は、むしろ説明できる事情です。重要なのは、その事情を入管に対して適切な形で示すことです。何もせずに沈黙している状態が、最も避けるべき対応になります。
3か月働いていないと在留資格は取り消されますか
結論として、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていないことは、在留資格の取消しが検討される事由の一つとされています(入管法22条の4)。ただし、正当な理由がある場合は除かれます。
解雇の効力を争っている、次の就職先を真剣に探している、労働審判や訴訟が係属しているといった事情は、活動を行っていないことについて説明できる事情になり得ます。逆にいえば、説明できる資料を手元に整えておくことが決定的に重要です。
- 解雇通知書、解雇理由証明書。
- 解雇に異議を述べた書面や、その送付記録。
- 労働審判の申立書、訴状、期日の呼出状などの手続関係書類。
- 求職活動の記録。応募先、面接日、やり取りのメールなど。
- ハローワークでの求職申込みの記録。
また、在留資格の取消しに当たっては、意見を述べる機会が設けられます。その場で事情を説明できるよう、資料を時系列で整理しておいてください。
解雇されたら入管に何を届け出る必要がありますか
結論として、契約機関に関する届出を、事由が生じた日から14日以内に行う必要があります(入管法19条の16)。これは中長期在留者の方に課された義務です。
届出は、退職したこと、つまり所属していた機関との契約が終了したことを届け出るものです。解雇の効力を争っているとしても、いったんは退職の届出をしておくことが実務上は安全です。届出をしたことが、解雇を承認したことにはなりません。
届出は、出入国在留管理局の窓口のほか、郵送や電子届出によることもできます。届出をした記録は保管しておいてください。次の勤務先が決まったときにも、同様に14日以内の届出が必要です。
在留期間の更新申請はできますか
結論として、申請すること自体は可能です。ただし、更新が認められるかどうかは、在留資格に対応する活動を継続して行う見込みがあるかどうかが重要な判断要素になります。
更新申請の際には、次のような資料を添えて、現在の状況と今後の見通しを説明することが考えられます。
- 解雇の効力を争っている手続の状況を示す資料。
- 求職活動の状況を示す資料。
- 次の勤務先が決まっている場合は、雇用契約書や採用内定の通知。
- 生活の基盤に関する資料(住居、家族の状況、生活費の見通しなど)。
在留期間の満了日が近い場合は、解雇の争いと並行して、更新の準備を進める必要があります。満了日を過ぎてしまうと、選択肢は大きく狭まります。満了日を必ず確認してください。
解雇を争う手続にはどのようなものがありますか
結論として、争い方によって要する時間が大きく異なります。在留期間との関係で、時間の見通しは重要な考慮要素になります。
- 会社との交渉。解雇理由証明書の交付を求め、書面で異議を述べます。まずここから始めるのが通常です。
- 都道府県労働局のあっせん。話合いによる解決を目指す手続で、費用がかからず、比較的短期間で終わります。
- 労働審判。原則として3回以内の期日で結論を出す裁判所の手続で、数か月程度で解決に至ることが多い手続です。
- 訴訟。地位確認や未払賃金の支払を求めるもので、争点が多い場合に用います。解決までに相当の期間を要します。
解雇を争う場合、解雇された日以降の賃金の支払を併せて求めることが一般的です。解雇が無効であれば、その間の賃金を請求できる余地があります。生活費の見通しにも関わりますので、早い段階で方針を決めてください。
争いながら別の会社で働くことはできますか
結論として、在留資格に対応する業務であれば、別の会社で働くことは可能です。生活の維持という観点からも、現実的な選択肢になります。
ただし、次の点にご注意ください。
- 新しい勤務先の業務内容が、現在の在留資格に対応する活動といえるかを、雇用契約を結ぶ前に確認してください。就労資格証明書の交付を申請して、あらかじめ確認しておく方法もあります。
- 新しい勤務先で働き始めたときも、14日以内の届出が必要です(入管法19条の16)。
- 別の会社で働き始めたことが、前の会社に対する地位確認の請求にどう影響するかは、事案により異なります。争い方の方針とあわせて検討してください。
在留資格の種類によっては、離職後の就職活動を理由とする在留資格の変更が認められる場合があります。運用は個別の事情によって異なりますので、申請の前に見通しを確認しておくことをお勧めします。
解雇が有効とされた場合、日本に住み続けることはできますか
結論として、解雇が有効と判断されたとしても、それだけで直ちに帰国しなければならないわけではありません。在留期間の満了日までは在留が続き、その間に次の勤務先を見つけて更新を申請する道があります。
ご家族の状況によっては、別の在留資格への変更を検討できる場合もあります。日本人や永住者の配偶者である方、日本で就学しているお子さんがいる方などは、生活の実態に応じた検討が可能です。
また、在留期間の満了が近く、次の勤務先が決まらない状況では、出国のタイミングを含めて選択肢を整理しておくことが重要です。在留期間を過ぎてしまうと、その後の再来日にも影響が生じます。状況が悪くなる前に相談しておくことが、選べる道を残すことにつながります。
弁護士に相談するとき、何を持っていけばよいですか
結論として、在留資格に関する資料と、解雇に関する資料の両方をお持ちください。この二つを同時に見て初めて、進め方の方針を立てることができます。
- 在留カード(表裏)、パスポート。
- これまでの在留資格の変更・更新の経過が分かる資料。
- 雇用契約書、労働条件通知書、就業規則。
- 解雇通知書、解雇理由証明書、解雇を告げられた際のやり取りの記録。
- 直近数か月分の給与明細、タイムカードの写しや出退勤の記録。
- 求職活動の記録、ハローワークでの手続の記録。
- ご家族の状況が分かる資料(配偶者やお子さんがいる場合)。
資料が揃っていなくても構いません。在留期間の満了日と、解雇を告げられた日付だけは必ず確認してお伝えください。この二つの日付から、いつまでに何をすべきかの見通しが立ちます。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
解雇を争うことと在留資格を守ることは、どちらか一方を選ぶ関係にはありません。届出を期限内に行い、争っている状況と求職活動の記録を残し、在留期間の満了日から逆算して手続を組み立てれば、両方を追うことができます。難しいのは、時間が限られていることです。解雇を告げられた段階でご相談いただければ、労働と入管の両方を見ながら順序を決めることができます。一人で悩んで時間が過ぎてしまう前に、まずはお話をお聞かせください。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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