入管の実地調査・立入検査を受けたときの対応|当日の流れと準備すべき資料
2026/08/30
ある日突然、入国審査官や入国警備官が会社を訪ねてきて、外国人従業員の在留状況について確認したいと告げられる。あるいは特定技能や技能実習の受入れに関して、事前の連絡の上で実地の調査が行われる。いずれの場合も、経営者の方が最初に感じるのは、どこまで答えるべきか、何を見せるべきか、という戸惑いだと思います。
ここでは、入管が行う調査にはどのような種類があるのか、当日はどのように対応すればよいのか、その後どのような手続に進むのかを整理します。落ち着いて事実を正確に示すことが、会社にとっても外国人従業員の方にとっても最善の対応になります。
入管の実地調査とは何をされる手続ですか
結論として、目的の異なる複数の調査があり、それぞれ性質が違います。まず、自社が受けているのがどの調査なのかを確認することが出発点です。
- 受入れ機関に対する調査。特定技能の受入れ機関や登録支援機関、技能実習の実習実施者や監理団体に対して、受入れが基準どおりに行われているかを確認するために行われるものです。事前に連絡があることも多く、書類の提出や事業所の確認が中心になります。
- 在留資格に関する事実の調査。個別の外国人の在留資格や活動状況について、事実を確かめるために行われるものです。会社に対して照会や資料提出の依頼がなされることがあります。
- 違反調査。退去強制事由に当たる疑いがある場合に、入国警備官が行う調査です。ここでは対象者の身柄に関わる手続に進むことがあります。
訪問を受けたら、まず身分証の提示を求め、所属と氏名、調査の根拠と目的を確認し、記録に残してください。これは失礼な対応ではなく、双方にとって必要な手続です。
実地調査と警察の捜索差押えは何が違いますか
結論として、任意の協力を求める調査と、裁判官の許可状に基づく強制的な処分とは、法的な性質が全く異なります。
任意の調査であれば、応じる範囲や時期について会社の側にも調整の余地があります。これに対し、裁判官が発する許可状に基づく臨検、捜索、押収が行われる場合は、対象となる場所や物が令状に記載されており、拒むことはできません。
そのため、令状が示されたときは、その記載内容を必ず確認し、可能であれば写しを求め、対象範囲を把握してください。逆に令状の提示がない場合は、任意の協力を求められている場面ですので、何をどこまで提供するかを社内で判断する時間を取ることができます。
調査を拒むことはできますか
結論として、任意の調査であれば応じる義務が当然にあるわけではありませんが、正当な理由なく協力を拒む姿勢は、その後の判断に有利には働きません。
特定技能や技能実習の受入れ機関については、報告や資料提出、立入りに応じることが受入れの基準に組み込まれている場合があり、拒否が受入れ資格の判断に影響することがあります。
現実的な対応としては、その場で全てを即答しようとせず、資料の整理と社内確認に必要な時間を求めた上で、正確な内容を回答するという進め方が適切です。担当者が推測で答えてしまうと、後に資料と食い違い、かえって信用を損ないます。
当日、会社はどのような資料を求められますか
外国人従業員の在留状況と就労実態を確かめるための資料が中心になります。日ごろから整理しておくと、当日の負担が大きく減ります。
- 在留カードの写し(表裏両面)、パスポートの写し。
- 雇用契約書、労働条件通知書、就業規則。
- タイムカード、出勤簿、シフト表。
- 賃金台帳、給与明細、賃金の振込記録。
- ハローワークへの外国人雇用状況の届出の控え。
- 社会保険や雇用保険の加入に関する書類。
- 特定技能や技能実習の場合は、支援計画や実習計画に関する書類、報告書類。
資料を提出する際は、何をいつ提出したかの記録を残し、可能であれば手元に写しを保存してください。後日の説明の前提になります。
従業員が事情を聴かれるとき何に気をつければよいですか
結論として、事実をそのまま述べることが原則です。記憶があいまいな点を推測で埋めないことが最も大切です。
会社の側で注意すべきは、従業員に対して特定の内容を述べるよう指示しないことです。口裏合わせと受け取られる行為は、それ自体が新たな問題を生み、会社にとっても不利に働きます。
外国人従業員が事情を聴かれる場合、日本語での細かいやり取りが難しいことがあります。理解できない質問に曖昧なままうなずくことのないよう、分からないときは分からないと伝えてよいこと、通訳を求めてよいことを、あらかじめ本人に伝えておくとよいでしょう。ご本人が不安を感じている場合は、弁護士に相談する道があることも伝えてください。
調査の後、どのような手続に進みますか
結論として、調査の結果によって進む方向は分かれます。何も問題が見つからなければ、そのまま終わることもあります。
在留資格に関する問題が見つかった場合、外国人従業員の方については、在留資格取消しの手続(入管法22条の4)や、退去強制手続に進むことがあります。在留資格の取消しに当たっては意見を述べる機会が設けられます。
会社の側については、不法就労助長罪(入管法73条の2)の疑いがあると判断されれば、刑事手続に進むことがあります。代表者ご自身が外国人である場合、不法就労助長に当たる行為は入管法24条3号の4の退去強制事由に当たり、刑事処罰を受けたことを要件としませんので、刑事事件とは別に手続が進む可能性があります。
弁護士に相談するのはどの段階が適切ですか
結論として、調査の連絡を受けた段階、あるいは訪問を受けた当日が最も適切です。手続が進んでからでは、選べる対応が限られてしまいます。
早い段階でご相談いただくことで、次のような整理が可能になります。
- 受けている調査の法的な性質を確認し、応じる範囲を判断する。
- 提出を求められた資料の内容を確認し、整理して提出する。
- 事実関係を時系列で整理し、説明できる形に整える。
- 外国人従業員ご本人の在留資格の見通しを立て、必要な準備を始める。
- 再発防止に向けた社内体制の整備に着手する。
とくに是正措置は、手続の結論を待たずに始められます。問題が判明した後の対応は、その後の判断において考慮され得る事情です。
日ごろから備えておくべきことは何ですか
調査そのものを避けることはできませんが、いつ調査を受けても説明できる状態を保つことは可能です。
- 採用時の在留カード確認の手順を文書化し、確認日と担当者名を記録する。
- 在留期間の満了日を一覧で管理し、更新申請の予定を早めに把握する。
- 資格外活動許可がある方については、他の勤務先を含めた合計労働時間を管理する。
- 賃金台帳とタイムカードを整合させ、実際の勤務実態と一致させる。
- 外国人雇用状況の届出を確実に行い、控えを保管する。
- 従業員に対し、契約機関に関する届出(入管法19条の16に基づく14日以内の届出)や住居地の変更届出を周知する。
- 調査を受けた際の社内の連絡経路と担当窓口を、あらかじめ決めておく。
これらは特別なことではなく、日常の労務管理を丁寧に行うことと重なります。普段の記録が整っている会社ほど、調査は短く終わります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
入管の調査を受けると、経営者の方は身構えてしまいがちですが、求められているのは事実の確認です。落ち着いて、記録に基づいて正確に説明することが、会社にとっても外国人従業員の方にとっても最も良い対応になります。判断に迷う場面が出てきたときは、その場で結論を出さず、時間を取ってご相談ください。調査の連絡を受けた段階でお話をいただければ、対応の幅は大きく広がります。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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