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偽造在留カードを見抜けなかった雇用主の責任|過失の有無をどう判断されるか

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偽造在留カードを見抜けなかった雇用主の責任|過失の有無をどう判断されるか

偽造在留カードを見抜けなかった雇用主の責任|過失の有無をどう判断されるか

2026/08/30

採用時に在留カードの提示を受け、写真も名前も一致していたので採用したところ、後日になって入管や警察から、そのカードは偽造されたものだと告げられる。こうした場面は、決して珍しいものではありません。近年は印刷や加工の精度が上がっており、券面を目で見ただけでは判別が難しい例も出ています。

ここでは、偽造在留カードを見抜けなかった雇用主がどのように評価されるのか、本物かどうかを確かめる方法、そして偽造と判明した後に会社が取るべき対応を、順を追って説明します。

偽造された在留カードを見抜けなかった場合、雇用主は罪に問われますか

結論として、見抜けなかったこと自体で直ちに処罰されるわけではありませんが、確かめるべきことを確かめていなかったと評価されれば、不法就労助長罪の責任を問われる可能性があります

不法就労助長罪は入管法73条の2に定められ、法定刑は5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金、又はその併科です。同条には、外国人が不法就労活動を行うことを知らなかったことを理由として処罰を免れることはできない、ただし過失がなかったときはこの限りでないという趣旨の規定が置かれています。

したがって、争点になるのは知っていたかどうかではなく、知らなかったことについて過失がなかったといえるかです。在留カードの原本を見たか、ICチップを読み取ったか、番号の失効情報を照会したか、他の資料と照合したかといった具体的な行動の有無が、この判断を左右します。

在留カードが本物かどうかはどうやって確かめられますか

目視だけに頼らず、出入国在留管理庁が用意している二つの仕組みを使うことをお勧めします。いずれも費用はかかりません。

  • 在留カード等読取アプリケーション。出入国在留管理庁が無償で提供しているもので、カードのICチップに記録された情報を読み取り、券面の記載と一致しているかを確認できます。券面だけを偽造したカードは、この読み取りで矛盾が現れます。
  • 在留カード等番号失効情報照会。出入国在留管理庁のウェブサイトで、在留カードの番号と有効期間の満了日を入力すると、その番号が失効していないかを照会できます。実在しない番号や、既に失効した番号が使われている場合に気づくことができます。

この二つを採用時の手順に組み込み、実施した日付と結果を記録しておくと、後日、確認を尽くしていたことを説明しやすくなります。

券面のどこを見れば偽造に気づけますか

在留カードには複数の偽造防止措置が施されており、カードを傾けたときの見え方の変化や、細かい印刷の再現性に違いが出ることがあります。もっとも、これらは慣れが必要ですので、目視は補助的な手段と位置付けてください。

むしろ実務で気づきやすいのは、記載内容の不自然さです。

  • 在留資格と在留期間の組合せが制度上ありえないものになっている。
  • 裏面の資格外活動許可の記載が、様式や文言として不自然である。
  • 提示されたパスポートの上陸許可の証印と、在留カードの記載が食い違っている。
  • 本人に在留資格の内容を尋ねても、記載と説明が噛み合わない。

在留カードだけでなくパスポートも併せて提示していただき、両者を照合することが有効です。

偽造在留カードを持っていた外国人本人はどうなりますか

在留カードを偽造し、又は偽造されたカードを行使し若しくは所持する行為は、入管法及び刑法により処罰の対象とされています。刑事事件としての手続が進むほか、実際には在留資格がない状態であることが多く、退去強制手続が並行して進むのが通例です。

不法残留の状態であれば、退去強制事由は入管法24条4号ロに当たり、不法残留罪は同法70条1項5号として3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はその併科と定められています。刑事処分と退去強制手続は別個に進む点は、雇用主の側でも理解しておく必要があります。

ご本人が事情を打ち明けてきた場合は、責めるよりも先に、弁護士に相談する道があることを伝えてください。自ら出頭したという事情は、その後の手続で考慮される要素の一つです。

偽造と分かったとき、会社はまず何をすればよいですか

結論として、就労を直ちに中止し、事実関係を時系列で記録することが最初の一歩です。

  • 採用の経緯、面接日、提示された書類、確認した内容と担当者名を書き出す。
  • 就労を開始した日、実際の勤務日数と時間、支払った賃金の額を集計する。
  • 提示された在留カードの写し、雇用契約書、タイムカード、給与明細などの資料を保全する。
  • 関係した従業員から、記憶が薄れる前に経緯を聴き取っておく。

ここで資料を廃棄したり、記録を作り直したりすることは絶対に避けてください。確認を尽くしていたのであれば、その事実は残された記録によって裏付けられます。

警察や入管から連絡が来たらどう対応すればよいですか

結論として、連絡を受けた段階で弁護士にご相談いただくのが安全です。会社としての説明が、後の判断の出発点になるためです。

任意の事情聴取であっても、話した内容は記録に残ります。記憶があいまいな点を推測で埋めて話すと、後から資料と食い違い、かえって信用性を損ないます。分かることは分かる、確認して回答する必要があることは持ち帰る、という区別をはっきりさせてください

また、任意の照会や資料提出の求めと、裁判官の許可状に基づく捜索や差押えとは、法的な性質が異なります。何を求められているのかを確認し、対応の範囲を整理した上で応じることが大切です。

過失がなかったといえるようにするには、どんな記録を残せばよいですか

後から説明できる形にするという観点から、次の記録を採用手続の標準に組み込むことをお勧めします。

  • 在留カードの原本を提示していただき、表裏両面の写しを保存したこと。
  • 読取アプリケーションでICチップを確認した日付と結果。
  • 番号失効情報の照会を行った日付と結果の画面の保存。
  • パスポートの上陸許可の証印との照合を行ったこと。
  • 他の勤務先の有無と勤務時間を確認したこと(資格外活動許可がある場合)。
  • 確認を行った担当者の氏名と確認日。

これらは特別な費用を要するものではありません。手順として定め、毎回同じように実施していることが、会社としての体制を示す事情になります

同じことを繰り返さないために社内でできることは何ですか

採用担当者が交代しても同じ確認ができるよう、チェックリストを作って運用することが最も現実的です。口頭の申し送りだけでは、担当者の異動とともに手順が失われてしまいます。

あわせて、在留期限の管理表を整え、更新申請の予定を早めに把握できるようにしておくこと、外国人雇用状況の届出を確実に行うこと、契約機関に関する届出(入管法19条の16に基づく14日以内の届出)について本人に周知することが有効です。

外国人の方を採用することは、会社にとって人材確保の重要な選択肢です。確認の手順を整えることは、採用を狭めるためではなく、安心して長く働いていただくための土台づくりです

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。

外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。

  • 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
  • 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。

初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。

おわりに

偽造在留カードの問題は、雇用主にとって突然降りかかるように見えますが、確認の手順を定めて記録を残していれば、説明できることは多くあります。既に働いていただいた期間がある場合でも、事実を隠さずに整理することが、会社にとっても外国人の方ご本人にとっても最も良い出発点になります。捜査や調査が始まる前の段階でご相談いただければ、取りうる選択肢は広がります。

なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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