特定技能で転職するときの注意点|届出だけでは足りない理由・分野変更・離職後の在留を解説
2026/08/30
今の会社の給料が低い、寮の環境が悪い、人間関係が続かない。特定技能で働く方から、別の会社に移りたいというご相談を受けることが増えています。特定技能は技能実習と違って転職が認められている、という説明を受けた方も多いのですが、その説明が正確に伝わっていないために、手続を誤って在留資格を危うくしてしまう例が実際に起きています。
この記事では、特定技能の方が転職する際に押さえておくべき手続の順序、届出だけでは足りない理由、別の分野に移りたい場合の考え方、そして退職から次が決まるまでの空白期間の扱いを説明します。
特定技能で働いていますが、転職できますか
結論として、特定技能では受入れ機関を変えることが認められています。同一の分野の中で、自分が従事できる業務の範囲に収まる仕事であれば、別の会社に移ることができます。この点が、原則として実習先の変更が限定的な技能実習との大きな違いです。
ただし、転職の自由が認められているというのは、手続を経れば移ることができるという意味であって、辞めてすぐに次の会社で働き始めてよいという意味ではありません。ここを取り違えると、後で説明する資格外活動の問題が生じます。
転職するとき、届出だけで足りますか
足りません。ここが最も誤解の多い点です。特定技能で受入れ機関が変わる場合には、勤務先が変わったことの届出(入管法19条の16に基づく契約機関に関する届出)を14日以内に出すこととは別に、新しい受入れ機関のもとで働くことについて、在留資格変更許可の申請をして許可を受ける必要があります。
在留資格の名称が同じ特定技能のままであるため、届出だけで済むと思い込んでしまうのですが、特定技能は特定の受入れ機関との雇用契約と、その機関が作成する支援計画を前提として許可されているものです。契約の相手方が変われば、その前提が変わりますので、改めて審査を受けることになります。
許可が出る前に新しい会社で働いてもよいですか
いけません。変更許可を受ける前に新しい会社で働けば、在留資格に基づかない就労として資格外活動の問題が生じます。専ら本来の活動以外の活動を行っていたと評価されれば退去強制事由(入管法24条4号イ)に当たり得ますし、資格外活動の罪(同法70条1項4号、73条)の問題にもなります。
審査には一定の期間がかかります。その間の生活費をどうするかは現実的な問題ですが、ここで働いてしまうと、それまで積み上げてきた在留の実績が一気に崩れます。転職を決めるときは、収入が途切れる期間を織り込んだうえで、退職の時期を決めてください。会社によっては、許可が出るまでの間の入社時期を調整してくれる場合もありますので、事前に相談しておくことが有効です。
別の分野の仕事に移りたい場合はどうなりますか
同じ分野の中での転職と、別の分野への移動は、まったく難易度が異なります。特定技能は、分野ごとに定められた試験に合格するなどして、その分野の技能を有することが確認された結果として許可されているものだからです。
したがって、別の分野に移りたい場合には、その分野の技能に関する試験に合格することが前提となります。今の仕事が合わないから、求人の多い別の業種に移りたい、という相談は多いのですが、試験を受けずに移ることはできません。移りたい分野が決まっているのであれば、在職中に試験の日程を調べ、受験の準備を進めておく必要があります。
会社を辞めてから次が決まらない場合、在留資格はどうなりますか
特定技能は、受入れ機関のもとで就労することを内容とする在留資格ですので、働いていない状態が長く続くと問題になります。入管法22条の4は、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていないときを取消事由として定めています(正当な理由がある場合を除きます)。
もっとも、会社の都合による解雇や事業縮小など、本人の責めによらない事情で職を失った場合には、就職活動を行うための在留が認められる運用があります。この場合、活動をしていないことに正当な理由があると説明する材料も必要です。離職票、会社からの通知、求職活動の記録は保管しておいてください。いずれにせよ、退職から3か月という期間は、実際に動いてみると決して長くありません。退職が決まった時点で相談を始めるのが安全です。
転職先から給料が下がる条件を提示されました。応じるしかありませんか
応じる必要はありませんし、そもそも受入れ機関の側には、日本人が従事する場合の報酬と同等額以上の報酬を支払うことが求められています。外国人であることを理由に低い賃金を設定することは、この前提に反します。
提示された条件が不当だと感じる場合には、雇用契約書の内容を確認してください。基本給、手当、控除される寮費や光熱費の額、労働時間、休日の定めを、書面で確認しないまま署名しないことが重要です。控除額が大きく、手取りが著しく低くなる契約もあります。契約書の内容に不安があれば、署名の前にご相談ください。
会社が転職に協力してくれない場合はどうすればよいですか
転職の際には、現在の受入れ機関の協力があるほうが手続は円滑ですが、協力が得られないからといって転職ができなくなるわけではありません。
実務上多いのは、退職を申し出たところ、在留資格が取り消されると言われた、支援をやめると言われた、寮をすぐ出るように言われた、といった事例です。退職の自由は労働者に保障されており、退職を理由に不利益な取扱いをすることは認められません。書類の交付を拒まれる場合には、登録支援機関や地方出入国在留管理局への相談、弁護士を通じた交渉といった手段があります。
転職で失敗しないために、何を確認すべきですか
次の順序で確認してください。
- 移りたい仕事が、今の分野と、自分が従事できる業務の範囲に収まっているか
- 新しい会社が特定技能の受入れ機関としての条件を満たしているか、支援体制はどうなっているか
- 変更許可の申請から許可までの間、収入と住まいをどうするか
- 雇用契約書の条件(賃金、控除、労働時間、住居)が書面で確認できているか
- 退職の時期と申請の時期の順序を、会社と共有できているか
特に三番目は見落とされがちです。先に退職してしまってから相談に来られると、選べる手段が限られてしまいます。退職届を出す前の段階でご相談いただくのが理想です。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
特定技能の転職は、制度として認められている一方で、届出だけでは足りず在留資格変更許可の申請が必要であること、許可が出るまでは新しい会社で働けないこと、分野を越える場合には試験が必要であること、この三点を外すと在留そのものが危うくなります。会社を辞めるかどうか迷っている段階、あるいは次の会社の条件を見せられた段階でご相談いただければ、退職の時期と申請の順序を含めて設計することができます。すでに退職してしまった場合でも、空白期間の説明の仕方によって取り得る道は残っています。当事務所では中国語の通訳を用意して対応しています。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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