技能実習から特定技能への移行|試験免除の条件・申請の時期・空白期間の在留を弁護士が解説
2026/08/30
実習の修了が近づき、このまま日本で働き続けたいと考える方から、特定技能へ移れるのか、いつ何を申請すればよいのかというご相談を多くいただきます。会社からは大丈夫だと言われているものの、具体的な手続を誰も説明してくれない、実習の終了日と申請の関係が分からず不安だ、という声もよく聞きます。
この記事では、技能実習から特定技能1号への移行について、試験が免除される仕組み、必要となる手続、実習の終了と在留資格変更の時期をどう調整するか、そして交通違反や前科がある場合の扱いを説明します。分野ごとの細かい要件は制度改正で変わることがあるため、ここでは制度の仕組みと、当事者として確認すべき点を中心に整理します。
技能実習が終わったら特定技能に変われますか
結論として、一定の条件を満たせば、技能実習から特定技能1号への在留資格の変更が認められます。ただし、実習が終われば自動的に移行するわけではなく、受入れ機関との新しい雇用契約を前提として、在留資格変更許可の申請を行い、許可を受ける必要があります。
移行の可否を左右するのは、大きく分けて三つです。第一に、本人が技能と日本語の要件を満たすこと。第二に、受け入れる会社の側が特定技能の受入れ機関としての条件を満たし、支援体制を整えていること。第三に、本人の素行や過去の在留状況に問題がないことです。このうち会社側の条件は本人には見えにくいため、確認が必要です。
試験を受けなくても移行できる場合がありますか
あります。特定技能1号は、原則として技能に関する試験と日本語に関する試験の両方に合格することが求められますが、技能実習2号を良好に修了した方については、これらの試験が免除される仕組みが設けられています。実習で身につけた技能と、実習期間中に培われた日本語能力を評価するという考え方に基づくものです。
ここでいう良好な修了とは、単に期間が満了したというだけでなく、出勤状況や実習態度を含めた評価を伴うものです。実習実施者が作成する評価に関する書類が必要になるため、実習先との関係が悪化したまま実習を終えると、書類の入手に困難が生じることがあります。移行を希望するのであれば、実習の最終盤の過ごし方が、そのまま手続の難易度に影響します。なお、移行しようとする業務の分野が実習の職種と対応しているかどうかも確認が必要です。対応しない分野へ移る場合は、その分野の試験に合格する必要があります。
移行するにはどんな手続が必要ですか
おおまかな流れは次のとおりです。
- 受入れ機関を決め、特定技能の雇用契約を締結する
- 受入れ機関または委託を受けた登録支援機関が、支援計画を作成する
- 健康診断、必要な書類の準備を行う
- 地方出入国在留管理局に在留資格変更許可の申請をする
- 許可を受けて、新しい在留カードの交付を受ける
準備すべき書類は多く、本人が用意するもの、会社が用意するものが混在します。会社側の書類の準備が遅れて申請が間に合わない、という事態は珍しくありません。実習の終了日から逆算して、誰がいつまでに何を用意するのかを、早い段階で会社と共有しておくことをお勧めします。
実習が終わる時期と申請の時期はどう調整すればよいですか
ここが最も相談の多い点です。実習の終了日と、特定技能への変更が許可される日との間に空白が生じると、その間の在留の根拠が問題になります。
まず押さえておいていただきたいのは、在留期間の満了日までに変更許可の申請をしていれば、審査中は一定の期間、引き続き在留できる扱いになっていることです。処分がされるまで、または在留期間の満了後2か月を経過する日までのいずれか早い日まで、従前の在留資格をもって在留できるとされています。もっとも、この期間中に働けるかどうかは別の問題ですので、勝手に就労を始めてはいけません。
また、審査に時間がかかることが見込まれる場合や、書類の準備が間に合わない場合には、移行のための準備期間として特定活動の在留資格が認められる運用があります。いずれにせよ、期限が来てから考えるのでは遅く、余裕をもって申請することが唯一の防御です。
実習先と別の会社に移って特定技能で働けますか
できます。特定技能は、技能実習と異なり、同一の分野の中であれば受入れ機関を変えて働くことが認められています。実習先が特定技能の受入れをしていない場合や、実習先での労働条件に問題があった場合には、別の会社を探すことになります。
ただし、注意点があります。実習実施者が作成する評価に関する書類が必要になる場面があるため、実習先との関係を完全に断ってしまうと手続が滞ることがあります。また、実習先から、他社に移るなら協力しないと言われるご相談もあります。そのような場合には、監理団体や外国人技能実習機構への相談、弁護士を通じた交渉といった手段があります。
特定技能1号と2号はどう違いますか
1号は、相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事するもので、在留期間の通算に上限があり、家族の帯同は基本的に認められていません。受入れ機関または登録支援機関による支援を受けることが前提となっています。
2号は、熟練した技能を要する業務に従事するもので、在留期間の更新回数に上限がなく、要件を満たせば配偶者と子の帯同が認められます。支援計画の対象ともされていません。長く日本で働き、将来的に永住も視野に入れたいと考えるのであれば、1号の期間中に2号への移行を意識して技能と実績を積んでおくことが現実的な道筋になります。
交通違反や前科があると移行できませんか
直ちに不可能になるわけではありませんが、影響します。在留資格の変更は、法令上当然に認められるものではなく、素行を含めた総合的な判断によります。
特に注意が必要なのは、次の類型です。無免許運転や飲酒運転は、罰金であっても素行の評価に影響します。薬物事犯は、有罪の判決を受けた事実だけで退去強制事由に該当し(入管法24条4号チ)、執行猶予や罰金であっても同様です。1年を超える実刑に処せられた場合も退去強制事由となりますが、全部執行猶予が付されたときは除外されています(同号リの但書)。刑事事件が進行中であれば、その処分の内容が在留に直結しますので、刑事弁護の段階から在留への影響を踏まえた対応が必要です。
移行がうまくいかないときはどうすればよいですか
次のような場面では、早めにご相談ください。
- 実習の終了が近いのに、受入れ先が決まっていない
- 会社が書類を用意してくれない、評価に関する書類を出してくれない
- 変更許可の申請が不許可になった、または不許可の見込みだと言われた
- 実習期間中に、実習先を離れていた時期や無断欠勤の記録がある
- 刑事事件で処分を受けたことがある、または現在捜査を受けている
不許可の場合、理由を確認したうえで、事情を補って再度申請できる事案かどうかを検討します。不許可の通知を受けてから在留期限までの時間は限られていますので、通知を受け取ったらすぐに動いてください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
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- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
技能実習から特定技能への移行は、要件そのものよりも、書類と時期の管理でつまずく例が目立ちます。実習を良好に修了していれば試験が免除される仕組みがあること、変更許可の申請は在留期間の満了前に出す必要があること、受入れ機関の側にも整えるべき条件があること。この三点を押さえて、実習の終了日から逆算した準備を進めてください。会社が動いてくれない、書類が出てこない、不許可の通知が届いたといった場面では、残された時間が結果を左右します。早い段階でご相談ください。当事務所では中国語の通訳を用意して対応しています。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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