転職したのに14日以内の届出を忘れた|入管法19条の16の届出漏れと在留資格への影響
2026/08/30
新しい会社で働き始めて数か月が経ってから、入管への届出をしていなかったことに気づいた、という形のご相談は少なくありません。転職の場面では、前の勤務先との契約が終わったこと、新しい勤務先と契約したこと、この二つについてそれぞれ14日以内に届け出ることが求められています。会社が手続をしてくれていると思い込んでいた、在留カードの住所変更は市役所で済ませたのでそれで足りると思っていた、という理由で漏れてしまう例が目立ちます。
この記事では、契約機関に関する届出(入管法19条の16)を出し忘れた場合に、実際に何が起こるのか、遅れてからでも提出できるのか、在留資格の取消しや在留期間更新の審査にどう影響するのかを、手続の流れに沿って説明します。
転職の届出を14日以内に出し忘れました。今からでも提出できますか
結論から申し上げますと、期限を過ぎていても提出できますし、気づいた時点ですぐに提出することが最も良い対応です。届出は期限を過ぎたという理由だけで受け付けられないという扱いにはなっていません。放置している状態が続くことのほうが、はるかに不利に働きます。
提出方法は、出入国在留管理庁のオンラインの届出、郵送、地方出入国在留管理局の窓口のいずれかです。遅れた理由がある場合には、簡潔な理由書を添えておくと、後の審査で経緯を説明しやすくなります。届出を提出した記録は、控えや受付の画面を保存しておいてください。
そもそも何を届け出る義務があるのですか
就労系の在留資格などで日本に在留する中長期在留者は、勤務先である契約機関について変動があったときに、14日以内に出入国在留管理庁へ届け出ることとされています(入管法19条の16)。届出の対象となるのは、次のような場面です。
- 勤務先を退職した(契約の終了)
- 新しい勤務先と雇用契約を結んだ(新たな契約の締結)
- 勤務先の名称が変わった、本社の所在地が移転した
- 勤務先が解散・消滅した
転職の場合には、退職と就職という二つの事由が続けて生じますので、その両方を届け出ることになります。実務上は一通の届出書に前職と現職の双方を記載して提出する扱いが一般的です。
届出を忘れると在留資格を取り消されますか
届出を忘れたという一事だけで直ちに在留資格が取り消されるという運用にはなっていません。もっとも、入管法22条の4は、届出義務に関する違反や虚偽の届出を在留資格の取消事由として定めていますので、制度上のリスクがまったくないわけではありません。
実務で本当に問題になりやすいのは、届出漏れそのものよりも、その裏側にある在留の実態です。届け出ていない間に在留資格の範囲から外れた仕事をしていた場合、あるいは退職後に次の就職先が決まらないまま働いていない期間が長く続いていた場合には、取消しの検討対象になり得ます。届出漏れは、そうした実態が入管に把握される入口になることが多いのです。
取消しが検討される場合、手続はどのように進みますか
在留資格の取消しが検討される場合、入管は本人に通知をしたうえで意見聴取の手続を行います。ここは、本人が事情を説明し、資料を提出して反論できる場面です。呼び出しに応じないまま進んでしまうと、こちらの言い分が一切記録に残らないまま結論が出てしまいます。
意見聴取には代理人として弁護士が同席することができます。取消しに至った場合でも、類型によっては30日を超えない範囲で出国の期限が指定され、その間に出国の準備をするか、他の在留資格への変更を検討する余地が残されます。ただし、偽りその他不正の手段によって在留資格を得たと判断される類型では、そのような猶予が与えられないこともあります。
届出をしないまま在留期間更新を申請するとどうなりますか
更新の審査では、在留期間中の在留状況が全体として見られます。届出漏れがあるからといって、それだけで不許可になるとは限りませんが、法令上の義務を守っていないという評価は避けられません。
望ましいのは、更新の申請をする前に届出を済ませ、届出済みであることが分かる資料を申請書類に添えることです。届出が遅れた事情、たとえば会社側の説明を誤って理解していた、体調を崩していた、といった具体的な経緯を書面で説明しておくと、審査官に伝わりやすくなります。
会社がしてくれる届出と、本人がする届出は同じものですか
別のものです。事業主には、外国人を雇い入れたときと離職したときにハローワークへ届け出る義務があり、これとは別に、受入れ機関が出入国在留管理庁へ届け出る仕組みもあります。しかし、これらは本人の届出義務を代わりに果たすものではありません。
会社が手続をしたと聞いていても、それは本人の届出とは別の手続です。転職の際には、会社に任せきりにせず、自分の名前で届出を行ったかどうかを必ず確認してください。
転職先の仕事の内容が前と違う場合、届出だけで足りますか
足りません。届出は、勤務先が変わったという事実を報告する手続にすぎず、新しい仕事が在留資格の範囲に収まっているかどうかを入管が判断する手続ではないからです。
新しい職務内容が今の在留資格に当てはまるか不安がある場合には、就労資格証明書の交付を申請して、事前に確認しておく方法があります。当てはまらないのであれば、在留資格変更許可の申請が必要です。許可を受けないまま範囲外の仕事を続ければ、資格外活動として扱われ、入管法24条4号イ、70条1項4号などの問題に発展します。
弁護士に相談したほうがよいのはどんな場合ですか
次のような事情があるときは、届出を出す前の段階でご相談ください。
- 届出をしないまま半年、一年と経過している
- 退職から次の就職まで、働いていない期間が3か月を超えている
- 新しい仕事の内容が、在留資格の範囲に収まっているか自信がない
- すでに入管から呼出しや事実の確認を求める連絡が来ている
- 更新の申請が不許可になった、または不許可になりそうだと言われた
いずれの場面でも、説明の順序と提出する資料の組み立て方によって、審査官に伝わる内容は大きく変わります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
転職の届出は、手続そのものは簡単でありながら、忘れたまま時間が経つと在留資格の取消しや更新不許可の入口になりかねない、影響の大きい義務です。期限を過ぎてしまった場合でも、提出できなくなるわけではありません。むしろ、気づいた時点ですぐに提出し、遅れた経緯を自分の言葉で説明できるようにしておくことが、その後の審査を守ることにつながります。無職の期間が長引いている場合や、新しい仕事の内容が在留資格に収まるか判断がつかない場合には、届出を出す前の段階で一度ご相談ください。当事務所では中国語の通訳を用意して対応しています。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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