卒業・退学・除籍のあとの在留資格と就労|留学から次の資格へ移るときの手続と期限
2026/08/30
三月に卒業したが就職先が決まっていない、学費が払えず除籍になってしまった、学校をやめたけれど在留カードの期限はまだ先だから大丈夫だと思っていた。留学の在留資格をお持ちの方から、卒業や退学の前後にこうしたご相談をいただきます。
ここで最も多い誤解は、在留カードに書かれた在留期間の満了日まで、これまでどおり日本にいられるしアルバイトも続けられる、というものです。実際には、在留資格は本来の活動を行っていることを前提とした制度であり、学校を離れた時点から、届出の期限、在留資格取消しの期限、変更申請の期限という複数の時計が同時に動き始めます。本記事では、卒業・退学・除籍のあとに何が起きるのかを、時系列に沿って整理します。
卒業したら留学の在留資格はいつまで有効ですか
在留カードに記載された在留期間の満了日までは、在留資格そのものは残ります。卒業した瞬間に不法滞在になるわけではありません。
ただし、在留資格が残っていることと、その在留資格に応じた活動を行っていることは別の問題です。卒業後は、留学の在留資格が予定する教育機関で教育を受ける活動を行っていない状態になります。この状態が続くと、後述する在留資格の取消しの問題が生じます。
したがって、卒業が決まったら、次のいずれかの手続を在留期間の満了日までに完了させることを前提に、逆算して準備を進めることになります。
- 就職先が決まっている場合は、就労が認められる在留資格への変更
- 就職活動を続ける場合は、継続就職活動のための特定活動への変更
- 進学する場合は、新しい教育機関での留学の在留期間更新
- いずれも行わない場合は、期間内の出国
就職が決まらないまま卒業した場合はどうすればよいですか
結論としては、継続就職活動のための特定活動への在留資格変更を検討します。これは、大学等を卒業した方が、在学中から続けてきた就職活動を卒業後も継続するために設けられている類型です。
一般に、卒業した教育機関による推薦があること、在学中から就職活動を行っていたこと、その活動を継続していることなどが求められます。期間は、更新を含めておおむね最長1年程度とされています。
この在留資格に変更した場合でも、あらためて資格外活動許可を受ければ、週28時間以内の範囲でアルバイトを続けることができます。留学時代に受けた資格外活動許可は、在留資格が変わればその効力を失いますので、必ず新たに申請してください。
退学や除籍になった場合、すぐに帰国しなければなりませんか
直ちに帰国しなければならないわけではありませんが、放置することはできません。退学や除籍によって、留学の在留資格に応じた活動を行わない状態が生じるためです。
まず行うべきは、次の三つです。
- 所属機関に関する届出(入管法19条の16)を14日以内に行うこと
- 今後の方針を決めること(別の教育機関への入学、就労資格への変更、出国)
- その方針に沿った申請を、在留期間の満了日までに行うこと
とくに、学費が払えずに除籍となった、体調を崩して通学できなくなったといった事情がある場合は、その事情を示す資料を残しておいてください。後に在留資格の取消しの手続や変更申請の審査において、正当な理由の有無を判断する材料になります。
学校をやめたときに必要な届出はありますか
あります。中長期在留者は、所属機関の変更等について届け出る義務を負っており、入管法19条の16は、事由が生じた日から14日以内に届け出ることを求めています。留学の在留資格の方であれば、退学、除籍、卒業、転校などがこれに当たります。
届出は、地方出入国在留管理局への持参、郵送、インターネットのいずれでも行えます。届出をしなかった場合、在留審査で義務を果たしていないと評価されます。
あわせて、住居地を変更した場合の市区町村への届出も忘れないでください。入管からの通知が届かないことは、意見聴取の機会を失うなど、手続上きわめて不利に働きます。
卒業後もアルバイトを続けられますか
在留資格が留学のままであっても、卒業後は注意が必要です。資格外活動許可は、本来の在留資格の活動を行っていることを前提として、その付随的な範囲で認められる仕組みだからです。
卒業して学校に在籍していない状態で、就労だけを続けていれば、本来の活動を行わず資格外活動を専ら行っていると評価される可能性があります。その場合、入管法70条1項4号の罪(3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又は併科)や、24条4号イの退去強制事由が問題になります。24条4号イは刑事処罰を要件としていません。
継続就職活動のための特定活動へ変更し、新たに資格外活動許可を得たうえで週28時間以内で働く、というのが本来の形です。手続を踏まずに働き続けることは、次の在留資格の審査においても大きな不利益となります。
在留資格を取り消されるのはどのような場合ですか
入管法22条の4は在留資格の取消しについて定めており、正当な理由なく、その在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていない場合が対象に含まれます。卒業・退学・除籍の後に何の手続も取らないまま3か月が経過すれば、この類型に当たり得ます。
取消しの手続では、意見聴取の機会が設けられます。ここで、活動を行っていなかった理由(就職活動の継続、病気、家族の事情、経済的事情など)や、現在進めている手続を説明することになります。通知が届いた段階は、まだ主張ができる段階です。
取消しに至った場合、出国のための期間が指定されることもあれば、指定されずに退去強制手続に進むこともあり、事案によって扱いが異なります。退去強制手続に進んだ場合でも、在留特別許可(入管法50条)を求める余地はあります。
就労資格への変更が不許可になった場合はどうなりますか
不許可となった場合、通常は出国準備のための在留資格が一定期間指定されます。その期限を過ぎて日本に残れば不法残留となり、入管法70条1項5号の罪(3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又は併科)と、24条4号ロの退去強制事由の問題が生じます。
不許可の理由は、職務内容と学んだ専攻との関連性が認められない、受入企業の事業の安定性や継続性が確認できない、報酬が日本人と同等以上であるといえない、申請書類の記載と実態が食い違う、といった点にあることが多いです。不許可の理由は、入管の窓口で説明を受けることができます。まずそれを正確に把握してください。
そのうえで、次の選択肢を検討します。
- 理由を踏まえて資料を補い、再度の変更申請を行う
- 職務内容や受入先を見直したうえで申請する
- 継続就職活動のための特定活動への変更を検討する
- いったん出国し、認定証明書の交付申請から進める
いずれの選択肢も、出国準備期間が経過する前に動く必要があります。当事務所では中国語通訳を備え、ご本人とご家族の双方に手続の見通しをご説明しています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
卒業・退学・除籍のあとは、在留カードの期限がまだ残っていても、届出の14日、活動を行っていない状態の3か月、在留期間の満了日という複数の期限が同時に進みます。何もしないまま時間が経つことが、最も選択肢を失う対応です。就職先が決まっていない方、除籍になってしまった方、変更申請が不許可となった方は、期限が来る前の段階でご相談ください。事情を示す資料が残っていれば、正当な理由として主張できる余地があります。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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