現金100万円を超える持込み・持出しの申告義務|税関への届出を怠った場合の責任と在留への影響
2026/08/29
帰国する家族に現金を託した、事業の決済のためにまとまった現金を携えて入国した、複数人で分けて持てば問題ないと聞いていた。空港でこうした現金が見つかり、別室で出所と使途を細かく質問されるという相談は少なくありません。日本では、一定額を超える現金などを持ち込む場合と持ち出す場合の双方に、税関への届出が義務づけられています。
本記事では、届出が必要になる金額と対象、家族で分散して携帯した場合の扱い、届出を怠った場合の責任、資金の出所を説明できないときに何が起こるか、そして在留資格への影響について整理します。
日本に現金をいくらまで持ち込めますか
結論として、金額の上限そのものはありませんが、合計100万円相当額を超える場合には税関への届出が必要です。これは持込みだけでなく持出しにも同じく適用されます。届出をすれば持ち運ぶこと自体は認められますので、届出を怠ることが問題なのであって、多額の現金を携帯すること自体が禁止されているわけではありません。
100万円を超えるかどうかはどのように計算しますか
判断の対象となるのは現金だけではありません。次のものを合算して判断します。
- 日本円および外国通貨の現金
- 小切手、トラベラーズチェック、約束手形
- 一定の有価証券
外貨は、その時点の相場で日本円に換算して合計します。したがって、日本円で80万円、人民元で日本円換算30万円相当という場合も、合計で100万円相当額を超えることになります。また、金地金については、重量が1キログラムを超える場合に別途届出が必要とされています。現金だけを数えて大丈夫だと判断してしまうのが、最も多い誤解です。
家族で分けて持てば申告は不要になりますか
形式的には携帯する人ごとに判断されますが、届出を免れる目的で分散して持たせた場合には、脱法的な行為として問題視されます。実際、同一の便で入国した家族が、それぞれ90万円ずつを携帯していたといった事案では、資金の出所と目的について詳細な質問を受けることになります。
同行者に持たせた現金であっても、実質的に誰の資金であるか、誰の指示で運ばれたかが確認されます。乳幼児を含む家族全員の名義に分散させるといった方法は、かえって意図的な回避と評価されやすくなります。
届出をしなかった場合はどうなりますか
税関の検査で発見された場合、まず質問検査が行われ、資金の出所、使途、携帯の経緯について説明を求められます。届出義務違反には罰則が定められており、事案によっては犯則事件として調査が行われ、刑事処分に至ることがあります。
他方、初めての事案で、資金の出所が明確で、その場で説明が尽くされた場合には、注意や指導にとどまることもあります。いずれにしても、その場での説明内容が後の手続に大きく影響しますので、事実と異なることを述べないことが重要です。
現金の出所を説明できないとどうなりますか
近年は、マネーロンダリング対策の観点から、資金の出所に対する確認が強化されています。出所を説明できない多額の現金は、詐欺やその他の犯罪による収益ではないかという観点から、警察に情報が共有されることがあります。
とくに注意が必要なのは、知人から預かった、報酬をもらって運んでいるだけ、という説明です。運搬の依頼者や資金の性質によっては、犯罪収益の移転に関与したと疑われ、より重い犯罪の被疑者として扱われる危険があります。安易に運搬を引き受けないことが最大の防御です。
いわゆる地下銀行を使って送金するとどのような罪になりますか
銀行を通さずに、国内で日本円を渡し、中国国内の口座で人民元を受け取るという方法は、送金する側にとっては手数料が安く手軽に見えます。しかし、こうした資金移動を業として行うには登録が必要であり、無登録で為替取引を業として行えば処罰の対象となります。
利用しただけの人が直ちに処罰されるわけではありませんが、口座が調査の対象となり、入出金の説明を求められることは珍しくありません。自分の口座を送金の中継に使わせていた場合には、幇助や共犯として捜査の対象になることもあります。
現金の届出義務違反で処分を受けると在留資格に影響しますか
この点は冷静に整理する必要があります。罰金にとどまる処分であれば、それだけで直ちに退去強制の対象になるわけではありません。入管法24条4号リが定めるのは1年を超える実刑の場合であり、同号の但書により刑の全部の執行を猶予された場合は除かれます。
もっとも、在留期間の更新、在留資格の変更、永住許可の審査では素行が考慮されます。また、資金の出所をめぐって詐欺やその他の犯罪の共犯として立件された場合には、量刑次第で退去強制の問題が現実化します。届出義務違反そのものよりも、その先にある嫌疑の広がりに注意すべきです。
税関の調査を受けたときに注意すべきことは何ですか
まず、その場で作成される書類の性質を確認してください。届出書の補完なのか、供述を記録する書類なのかで意味が異なります。日本語での説明が十分に理解できないときは、通訳を求めてください。
そのうえで、資金の出所を裏づける資料を早期に整えることが有効です。預金の払戻明細、給与や事業の入金記録、家族からの贈与に関する記録などは、説明の信用性を大きく高めます。当事務所では中国語対応の体制を整え、税関や捜査機関への対応と在留への影響の検討を同時に進めています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
合計100万円相当額を超える現金や小切手などを携帯する場合には、持込み・持出しのいずれについても税関への届出が必要です。届出をすれば持ち運ぶこと自体は認められますから、届出を怠ることによって、資金の出所を疑われ、不必要に重い嫌疑を招く事態を避けることが肝要です。すでに調査が始まっている場合には、説明の内容と裏づけ資料の整理を早めに行ってください。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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