暗号資産の口座・ウォレットが凍結されたら|理由の確認、解除に向けた手順と在留手続への影響
2026/08/29
ある日、取引所にログインできなくなった。出金だけが止められ、理由を尋ねても社内審査中としか回答がない。中国の家族から送ってもらった資金の入金を受けた直後に制限がかかった。暗号資産をめぐるこうしたご相談は、金額の大小を問わず日常的に寄せられています。
本記事では、取引所の口座やウォレットが凍結される典型的な理由、凍結された直後に取るべき手順、警察の捜査が背景にある場合の進み方、そして在留資格の手続にどう関係するのかを整理して説明します。
取引所の口座やウォレットはどのような理由で凍結されますか
理由の多くは、犯罪収益の移転を防ぐための審査に関係しています。暗号資産交換業者には、法律上、利用者の本人確認、取引記録の保存、疑わしい取引の届出といった義務が課されており、これらの義務を果たす過程で取引が一時的に止められることがあります。
実際に凍結の端緒となりやすいのは、次のような事情です。
- 詐欺被害の申告があった口座から資金が流入している
- 短期間に多数の相手から入出金が繰り返されている
- 本人確認書類の内容と、実際の利用実態が食い違っている
- 登録した職業や年収と比べて取引規模が著しく大きい
- 捜査機関からの照会や差押えを受けている
凍結されたとき、最初に何をすればよいですか
最初にすべきは、理由の確認と、記録の保存です。感情的に問い合わせを重ねる前に、事実関係を固めてください。
具体的には、取引所からの通知文面を保存し、いつからどの機能が制限されたのかを記録します。そのうえで、資金の入金元と出金先について、自分の説明の裏づけとなる資料を集めます。取引所への回答を急いで曖昧な説明をしてしまうと、後から訂正することがかえって難しくなります。
取引所に説明する資料として何を用意すればよいですか
求められているのは、資金が正当な原資から来ていることと、口座を本人が自分のために使っていることの二点の裏づけです。
- 給与明細、源泉徴収票、確定申告書の控え
- 売買契約書、請求書、入金の根拠となる書類
- 家族からの送金であれば、送金元の資料と家族関係を示す資料
- 取引の目的や運用方針を説明する書面
- 過去の取引履歴と、資金の流れを時系列で整理した一覧
説明は簡潔かつ一貫していることが重要です。矛盾があると、追加の質問が繰り返され、審査は長期化します。
警察や検察の捜査が理由の場合、手続はどう進みますか
捜査を理由とする場合、取引所は具体的な理由を説明できない立場にあります。したがって、取引所とのやり取りだけで解決を図ろうとしても進展しないことが多く、捜査の存否と自分の立場を正確に把握する必要があります。
参考人として事情を聴かれる立場なのか、被疑者として疑われている立場なのかで、取るべき対応は根本的に異なります。呼出しを受けた場合は、応じる前に弁護士に相談し、供述の方針を決めたうえで臨むことをお勧めします。
銀行口座まで止まってしまった場合はどうなりますか
暗号資産の取引と結びついた銀行口座が同時に制限を受けることは珍しくありません。振込先として利用された口座については、金融機関が取引を停止し、被害回復のための分配手続が進められる仕組みがあります。
生活口座が止まると、家賃や学費の支払、給与の受取に直ちに支障が生じます。給与振込先の変更、公共料金の支払方法の切替えなど、生活を維持するための実務的な手当てを並行して進めることが必要です。
凍結が解除されないまま資産を失うことはありますか
資産が犯罪被害金であると認められた場合には、被害者への返還や没収の対象となり、手元に戻らないことがあります。また、被害者から民事上の返還請求を受ける可能性もあります。
他方、正当な取引であることを資料で説明できれば、審査を経て制限が解除される例も多くあります。重要なのは、放置せず、根拠のある説明を早期に提出することです。時間の経過とともに関係者の記憶や記録は失われ、立証はむしろ難しくなります。
自分が被害者の場合と、疑いをかけられている場合で対応はどう違いますか
被害者の立場であれば、被害申告と資金の追跡が中心になります。取引所への申告、警察への被害届、送金先の記録の保全を速やかに行うことで、回収の可能性が高まります。
疑いをかけられている立場であれば、優先すべきは説明の一貫性と、関与範囲の切り分けです。取引所への回答が、後の刑事手続における供述と矛盾しないよう、両者を一体として設計する必要があります。この点は、ご自身だけで判断されるより、弁護士とともに進めるほうが安全です。
凍結が在留資格の手続に影響することはありますか
凍結それ自体が直ちに在留資格を左右するものではありません。しかし、事件化した場合には話が変わります。入管法24条4号リは、一定の犯罪により1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としており、同号の但書により全部執行猶予の場合は除かれます。
また、経営管理の在留資格をお持ちの方は、事業資金が動かせない状態が続くと、事業の継続性そのものが更新審査で問われることになります。入管法22条の4は在留資格の取消しについて定めており、活動の実体が失われた状態が長期化することは避けなければなりません。凍結が長引く場合は、更新時期を見据えた資料の準備を早めに始めてください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
口座やウォレットの凍結は、単なる不便ではなく、刑事事件、被害回復、在留資格という三つの領域に同時に関わる出来事です。取引所への説明、捜査機関への対応、入管への説明は互いに影響し合いますので、最初の一手を誤らないことが何より重要です。理由が分からないまま出金が止まっている段階でも、資料の整え方と説明の順序を組み立て直すことで、状況が動くことがあります。当事務所は中国語通訳を備え、資産の回復と在留の維持を同時に検討します。
問い合わせを重ねても進展しないときこそ、方針の立て直しが必要です。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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