地下銀行に関わってしまったら|無許可の為替取引で問われる刑事責任と在留・再入国への影響
2026/08/29
手数料が安く、その日のうちに中国の家族の口座へ着金する。そんな便利さから、在日中国人の方の間では、正規の銀行を通さない送金ルートがいまも使われています。しかし、その仕組みに送金を頼むだけでなく、資金の受取りや取次ぎを手伝った途端、立場は利用者から関与者へと変わります。
本記事では、いわゆる地下銀行がなぜ違法とされるのか、手伝った程度でも罪に問われるのはどのような場合か、そして摘発された場合に在留資格や将来の再入国にどのような影響が及ぶのかを説明します。
地下銀行とは何を指し、なぜ違法になりますか
地下銀行とは、正規の免許や登録を受けないまま、国境をまたぐ資金のやり取りを反復して引き受ける仕組みの通称です。実際には現金そのものが国境を越えるのではなく、日本国内で日本円を集め、中国国内では別の資金から人民元を支払うという相殺の形をとることが多く、この形態は帳簿上の突合せによって成り立っています。
日本では、他人のために資金を移動させる為替取引を業として行うには、銀行としての免許か、資金移動業としての登録が必要とされています。無免許・無登録でこれを業として行えば、それ自体が処罰の対象になります。さらに、資金の出所が犯罪収益であった場合には、その隠匿や収受の罪が重ねて問題になります。
送金を手伝っただけでも罪に問われますか
反復・継続して関与していれば、末端の役割であっても共犯として立件され得ます。無免許での為替取引は、集金役、口座提供役、記帳役、現地との連絡役といった分業によって成り立っており、捜査機関はその全体を一つの営業体として捉えるからです。
特に危険なのは、自分名義の口座に見知らぬ相手からの入金を受け、指示に従って出金・転送する役割です。この役割は、後述する犯罪収益の移転にも直結するため、関与の程度が浅くても重い評価を受けやすい部分です。
銀行法や資金決済法ではどのような規制がありますか
為替取引は、免許を受けた銀行のほか、登録を受けた資金移動業者に限って行うことができるとされています。登録を受けた事業者には、利用者資金の保全、本人確認、取引記録の保存、疑わしい取引の届出といった義務が課されます。
地下銀行はこれらの義務をすべて回避するため、匿名で資金を動かしたい者にとって都合がよく、その結果として詐欺、脱税、薬物取引などの資金が流れ込みやすい構造になっています。規制の目的は、送金という行為自体を禁じることではなく、資金の流れを追跡できる状態に保つことにあります。
地下銀行事件でなぜ犯罪収益の隠匿が同時に問題になりますか
取り扱う資金の中に犯罪によって得られた金銭が混ざっていることが多く、その移転に関与した者は、犯罪収益の出所を分からなくする行為として、組織的犯罪処罰法上の罪に問われ得るからです。無登録営業の罪と、犯罪収益に関する罪は、別個に成立し得ます。
また、事件が詐欺グループの資金回収と結びついていた場合には、詐欺罪(刑法246条)の共犯として扱われる可能性もあります。単に送金を仲介しただけという説明が通るかどうかは、資金の性質をどこまで認識していたかにかかっています。
逮捕・勾留され、捜査はどのように進みますか
この種の事件は、金融機関からの届出や別事件の捜査から端緒が得られ、長期間の内偵を経て一斉に着手されることが多いという特徴があります。着手時点で、通帳、携帯端末、記帳ノート、通信アプリの履歴が押収され、資金の流れはすでに相当程度まで把握されています。
逮捕後は、警察で48時間以内、検察官で24時間以内に手続が進み、勾留されると原則10日、延長でさらに最大10日となります。共犯者が多数に及ぶ事件では、勾留が繰り返され身体拘束が長期化しやすいため、早い段階で弁護人を選任し、供述方針と身柄解放の見通しを立てることが重要です。
有罪になった場合、在留資格や再入国はどうなりますか
入管法24条4号リは、一定の犯罪により1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由と定めていますが、同号の但書により、刑の全部の執行を猶予された場合は除かれます。実刑となるか執行猶予となるかが、在留を維持できるかどうかの分かれ目になります。
退去強制を受けた場合、上陸拒否期間は、退去強制の前歴がなければ5年(入管法5条1項9号ハ)、前歴があれば10年(同号ニ)となります。将来また日本で働きたい、家族と暮らしたいとお考えであれば、この期間の差は極めて大きな意味を持ちます。
誘われた段階、関与が浅い段階で何ができますか
まだ実行していない、あるいは一、二度手伝っただけという段階であれば、取り得る手段は多く残されています。関係を断ち、経緯を記録し、弁護士とともに対応方針を決めることが先決です。
- 依頼の経緯、報酬の約束、指示のやり取りを削除せずに保存する
- 自分名義の口座やカードを渡している場合は、直ちに金融機関へ相談する
- 受け渡した金額と日時、相手の連絡先を時系列で整理する
- 取調べの呼出しを受けたら、応じる前に弁護士に相談する
- 在留期限と更新申請の時期を確認し、入管対応も並行して準備する
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
地下銀行事件は、末端で手伝ったという自覚しかない方が、資金の全体像を理由に重い責任を問われやすい類型です。関与の範囲を客観的な資料で正確に切り分け、認識していた事実と認識していなかった事実を早い段階で整理することが、処分の軽減にも、在留の維持にも直結します。呼出しを受けた段階、あるいは不安を感じた段階でご相談ください。当事務所は中国語通訳を備え、刑事弁護と入管手続を一体として進めます。
不安な状況が続くとは思いますが、初動を誤らなければ選択肢は残ります。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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