銀行口座を売った・譲ったときに問われる罪|外国人が知るべき刑事責任と在留資格への影響
2026/08/29
SNSで高額の報酬を提示され、使っていない銀行口座のキャッシュカードと暗証番号を渡してしまった。帰国する友人から口座を引き継いだ。留学中の生活費が足りず、通帳を数万円で譲った。こうした行為は、本人が思っている以上に重く扱われます。譲り渡した口座が特殊詐欺の被害金の受け皿として使われれば、名義人自身が捜査の対象となり、在留資格にも影響が及びます。
本記事では、銀行口座の売買や譲渡がどのような罪に問われ得るのか、詐欺の共犯として扱われる場合との境目はどこか、そして有罪となった場合に在留資格にどう影響するのかを整理します。
銀行口座を他人に売ると、どのような罪に問われますか
まず、犯罪による収益の移転を防止するための法律が、預貯金の通帳やキャッシュカードなどを他人に譲り渡す行為、譲り受ける行為を処罰の対象としています。業として行った場合には、刑がより重くなる規定も置かれています。さらに、他人に渡すつもりであることを隠して銀行の窓口で口座を開設した場合には、銀行を欺いたものとして詐欺罪(刑法246条)が成立し得ます。詐欺罪の法定刑は10年以下の拘禁刑であり、口座の売買という認識しかなかった方にとっては想定外の重さです。
お金を受け取っていなくても罪になりますか
なり得ます。処罰の対象となるのは、対価を得たかどうかではなく、口座の管理を他人に移したという行為そのものだからです。友人に頼まれて無償で渡した、断りにくかったという事情は、量刑や処分の判断で考慮される可能性はありますが、行為自体が違法でなくなるわけではありません。お金をもらっていないから大丈夫だと考えて安易に応じてしまう例が、実務上最も多いパターンの一つです。
帰国するので使わないから譲った、という説明は通りますか
説明として述べること自体は自由ですが、それによって責任を免れる理由にはなりません。銀行との契約では、口座は名義人本人が利用することが前提であり、第三者に譲渡することは禁じられています。むしろ、帰国予定であることを知りながら口座を渡したという経緯は、その口座が本人以外に使われることを認識していたことの裏付けと評価されやすい面があります。相手が誰で、何に使うと聞いていたのかという点が、後の判断を左右します。
口座が特殊詐欺に使われた場合、詐欺の共犯になりますか
使われ方と、渡した時点での認識によって結論が変わります。詐欺に使われることを認識していた、あるいはそうであろうと思いながら渡したと認定されれば、詐欺の幇助や共同正犯として扱われる可能性があります。単に不要な口座を譲っただけであれば、口座の譲渡に関する罪や詐欺罪(口座開設の点)にとどまることもあります。この境目は、渡す前のやり取りの内容、報酬の額、複数の口座を渡したかどうかなどから判断されます。SNSのメッセージは削除しても復元されることがありますので、記憶と異なる説明をすることは避けてください。
口座を売ったことは在留資格にどう影響しますか
影響は二つの経路で生じます。第一に、在留期間の更新や在留資格の変更の審査において、素行が善良かどうかが考慮され、この種の事件は消極的に評価されやすい類型です。第二に、判決の内容によっては退去強制事由が問題になります。入管法24条4号リには但書があり、全部の執行猶予が言い渡された場合は除外されます(一部の執行猶予でも、実際に服する部分が1年以下であれば除外されます)。他方、別表第一の在留資格で在留する方については、一定の罪により拘禁刑に処せられた場合の別の類型が定められており、罪名と刑の内容によって扱いが異なります。判決書の内容に基づいた確認が必要です。
警察から呼出しを受けた段階で何をすべきですか
まず、自分がどの立場で呼ばれているのかを確認してください。名義人として事情を聴かれるだけの場合もあれば、被疑者として扱われている場合もあります。そのうえで、口座を作った時期と目的、誰に、いつ、どこで、何を渡したのか、報酬の有無と金額を、記憶の範囲で整理してください。分からない部分を推測で埋めた供述は、後に食い違いとして問題になります。日本語での取調べに不安がある場合は、通訳を求めることができます。
口座が凍結された場合、預けていたお金は戻りますか
被害金と疑われる資金が入金された口座は、金融機関によって取引が停止されることがあります。その後、被害者に対する分配の手続が進むこともあり、口座に残っていた自分の資金についても、直ちに引き出せるとは限りません。給与の振込先や家賃の引落し口座であった場合、生活そのものが止まります。他人に渡した口座が凍結されると、自分名義の他の口座や新規の口座開設にも影響が及ぶことがあります。早い段階で状況を確認し、生活の立て直しと並行して対応する必要があります。
被害者への弁償や示談は処分に影響しますか
影響し得ます。口座の譲渡それ自体には特定の被害者がいない場合もありますが、その口座が詐欺に使われ、被害者が特定されている場合には、被害の回復に向けた対応が処分の判断で考慮されることがあります。もっとも、被害額が大きい事案では全額の弁償が現実的でないことも多く、できる範囲での対応を、どの段階で、どのように示すかという判断が重要になります。入管の手続でも、事件後にどのような対応をしたかが説明の中心になります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
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初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
銀行口座の譲渡は、報酬の額に比べて刑事責任も在留への影響も格段に重い行為です。しかも、渡した後は自分で状況をコントロールできず、口座が何に使われたかによって立場が大きく変わります。すでに渡してしまった、警察から連絡が来たという場合でも、渡した経緯と認識を正確に整理して説明することで、評価が変わる余地は残ります。一人で抱え込まず、早い段階でご相談ください。
当事務所では中国語での対応が可能で、口座の譲渡や特殊詐欺への関与が問題となった外国人の刑事事件と、その後の在留手続を一体として扱ってまいりました。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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