交通事件の捜査でオーバーステイや資格外活動が発覚したら|退去強制と出国命令の分かれ道
2026/08/28
交通事故を起こして警察官に在留カードの提示を求められた、検問で無免許運転が判明して身元を確認された、駐車違反の処理の過程で在留期間が過ぎていることが分かった。交通事件それ自体は軽微なつもりでも、その場で在留の問題が明らかになり、刑事事件と入管手続の二つが同時に動き出す。こうした経緯でのご相談は非常に多く、しかも最初の数日の対応がその後を大きく左右します。
本記事では、交通事件の捜査からオーバーステイ(不法残留)や資格外活動が発覚した場合に、何がどの順序で進むのか、出国命令と退去強制はどこで分かれるのか、在留特別許可を求める余地はあるのかを整理します。
交通違反の取締りで在留資格の問題まで調べられるのですか
調べられます。運転者の身元確認は交通事件の捜査に必要な手続であり、その過程で在留カードの有無や在留期間が確認されるためです。中長期在留者には在留カードの携帯と提示に関する義務があり、提示できない場合には別の問題も生じます。交通事件の捜査は、在留状況が入管に把握される最も一般的な入口の一つです。事故の相手方として被害者側であった場合でも、同じように身元が確認される点は変わりません。
オーバーステイが発覚するとどうなりますか
不法残留は、入管法70条1項5号の罪に当たり、法定刑は3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、又はこれらの併科とされています。あわせて、退去強制事由としては24条4号ロに定められています。つまり、刑事処分の問題と、日本から退去させられるかどうかの問題が並行して存在します。実務上、不法残留のみの事案では刑事手続が不起訴で終わることもありますが、不起訴になっても退去強制の手続は別に進むことに注意が必要です。
交通事件と入管の手続は同時に進むのですか
刑事処分と退去強制手続は別個の手続として進行します。まず交通事件について警察と検察の捜査が行われ、その終了後、または身柄の引継ぎを経て、入管による違反調査、入国審査官の審査、特別審理官の口頭審理、法務大臣の裁決という流れに入ります。それぞれの段階で主張し、資料を出す機会がありますが、期間は短く、日本語での書面のやり取りが中心になります。交通事件の弁護方針を決める段階で、入管手続で何を主張するのかを併せて設計しておくことが大切です。
出国命令の制度を使えるのはどのような場合ですか
出国命令は、収容されずに自ら出国することを認める制度で、入管法24条の3に定められた要件をすべて満たす場合に限られます。要件としては、不法残留であること、自ら入管に出頭したこと、退去強制の前歴がないこと、一定の罪により刑に処せられたことがないこと、速やかに出国する意思があることなどが定められており、そのうち一つでも欠ければ利用できません。出国の期限は55条の85により15日を超えない範囲で指定されます。交通事件で身柄を取られてから発覚した場合、自ら出頭したという要件との関係が問題となるため、経緯の評価が結論を分けます。
退去強制になった場合、いつ日本に戻れますか
再び上陸できない期間(上陸拒否期間)は、どのように日本を離れたかによって異なります。入管法5条1項9号は、違反調査が始まる前に自ら出頭して出国命令により出国した場合を1年(ホ)、調査開始後に出国の意思を表明した場合を5年(ヘ)とし、退去強制については前歴のない場合を5年(ハ)、前歴のある場合を10年(ニ)と定めています。さらに、24条4号オからヨまでに該当して退去強制された場合には、同項10号により期間の定めがなく、原則として再入国できません。同じ帰国でも、その形によって将来が大きく変わります。
資格外活動が発覚した場合はどう扱われますか
在留資格で認められた活動を行わず、他の収入を伴う活動に専ら従事していた場合は、入管法24条4号イの退去強制事由に当たり、70条1項4号に罰則が置かれています。また、資格外活動罪(73条)により拘禁刑に処せられた場合には、24条4号ヘに当たり得ます。留学や家族滞在で資格外活動の許可を受けている方については、許可された時間を超えて働いていたかどうか、本来の学業や家族との生活の実体があるかどうかが問われます。給与明細やシフト表など、働き方の実態を示す資料の確認が出発点になります。
日本に家族がいる場合、在留特別許可の可能性はありますか
あります。在留特別許可は入管法50条に定められた制度で、5項は考慮すべき要素を法律上明示しています。1項の但書は、無期または1年を超える実刑に処せられた場合について加重した要件を定めており、2項は収容令書により収容されている方や監理措置の決定を受けた方に申請する権利を認めています。他方、3項により退去強制令書が発付された後は申請ができません。タイミングを逃さないことが何より重要です。令和6年3月に改定され同年6月10日に施行されたガイドラインでは、自ら出頭したことが積極要素、不法在留の長期化が消極要素として整理されています。
交通事件で身柄を取られたとき、最初に確認すべきことは何ですか
第一に、自分がどの手続の中にいるのか、つまり交通事件の被疑者としてなのか、入管法違反としてなのかを確認することです。第二に、在留カードの有無と在留期間、直近の届出の状況を整理することです。第三に、家族の在留状況、子どもの就学、勤務先との関係など、今後の主張の柱になる事実を書き出しておくことです。取調べで述べた在留期間や就労の経緯は、後の入管手続でもそのまま資料として扱われます。記憶にないことを推測で答えないでください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
交通事件をきっかけに在留の問題が明らかになった場合、刑事の見通しだけを追っていると、出国命令の要件を満たすかどうか、在留特別許可を申請できる時期がいつまでかといった、入管側の分岐を逃してしまいます。逆に、早い段階で家族関係や在留の経緯を整理し、必要な資料を集めておけば、選べる道が残ることも少なくありません。時間の余裕はありませんので、できるだけ早く相談してください。
当事務所では中国語での対応が可能で、外国人の刑事弁護と退去強制手続、在留特別許可の申請を一体として扱ってまいりました。過去には、交通事件の捜査で在留期間の超過が判明した事案において、家族関係と生活の実体を整理して主張し、在留の継続につながった例もあります。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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