交通事件をきっかけに在留資格の取消しはあり得るか|入管法22条の4と届出義務から考える
2026/08/28
交通事故や無免許運転で警察の捜査を受けた後、身柄拘束が長引いて会社を休み続けている、あるいは事件を理由に退職を求められた。刑事事件の見通しよりも、在留資格が取り消されてしまうのではないかという不安のほうが大きい、というご相談は少なくありません。取消しという言葉の重さに比べて、その仕組みは十分に知られていないのが実情です。
本記事では、交通事件が在留資格の取消し(入管法22条の4)にどうつながり得るのか、取消しの手続はどのように進むのか、そして取消しを避けるために事件のどの段階で何をすべきかを整理します。
交通事件を起こしただけで在留資格が取り消されますか
結論から述べると、交通事件を起こしたこと自体が在留資格の取消事由になるわけではありません。取消しは、入管法22条の4が列挙する事由に該当する場合に行われる処分であり、事故を起こした、違反で検挙されたという事実がそのまま列挙事由になるわけではないからです。もっとも実務上は、交通事件をきっかけに本来の在留活動が止まってしまうことや、申請時の説明との食い違いが明らかになることを通じて、取消しの問題が浮上することがあります。事件そのものよりも、事件の後に何が起きたかが重要になります。
在留資格の取消しはどのような場合に行われますか
22条の4は取消事由を列挙しています。代表的なものとして、偽りその他不正の手段によって上陸の許可や在留資格に関する許可を受けた場合、在留資格に応じた活動を継続して行っていないと認められる場合、正当な理由がないのに一定期間その活動を行っていない場合、住居地の届出をしない場合や虚偽の届出をした場合などが挙げられます。交通事件との関係で問題になりやすいのは、活動を行っていないという類型と、申請時の申告内容に虚偽があったという類型です。
身柄拘束が長引くと活動を行っていないと判断されますか
逮捕や勾留によって出勤できない期間があること自体が、直ちに活動を行っていないという評価に結び付くわけではありません。判断では、活動をしていない期間の長さに加え、それが正当な理由によるものかどうかが問われます。もっとも、身柄拘束が長期化し、その間に雇用契約が終了して復帰の見込みがなくなれば、就労資格に対応する活動の実体が失われたと評価されやすくなります。したがって、勾留中であっても、雇用関係が維持されているのか、復職の予定があるのかを確認し、書面で残しておくことが重要です。
事件をきっかけに解雇された場合、何を届け出る必要がありますか
就労資格で在留している方は、勤務先との契約に関する事項について届出の義務があります。入管法19条の16は、契約機関に関する届出について、事由が生じた日から14日以内という期限を定めています。退職した、勤務先が変わったといった事実を届け出ないままでいると、それ自体が取消しの検討につながることがあります。解雇や退職は、刑事事件の結果が出る前に生じることが多いため、刑事弁護と並行して、届出の期限を管理しておく必要があります。
取消しの手続はどのように進みますか
取消しの検討が始まると、地方出入国在留管理局の入国審査官による事実の調査が行われ、本人から事情を聴く意見聴取の手続が設けられます。ここでは、活動をしていなかった理由、雇用契約の状況、今後の予定などを説明する機会があり、資料を提出することもできます。この意見聴取は、取消しを避けるための実質的な最後の機会になることが多いため、通知が届いた段階で放置せず、説明すべき事実と裏付け資料を整理して臨むべきです。日本語での説明に不安がある場合は、通訳の手配についても事前に確認してください。
取り消されたらすぐに帰国しなければならないのですか
取消しの結論が出た場合でも、扱いは一様ではありません。事案によっては、出国のための期間として30日を超えない範囲の期間が指定され、その間に自ら出国することが求められます。他方、偽りその他不正の手段による許可のように、より重い類型と評価される場合には、期間の指定がされずに退去強制の手続へ進むことがあります。どちらになるかによって、その後に取り得る手段と再び来日できる時期の見通しが大きく変わりますので、結論の内容を正確に確認することが出発点になります。
更新や変更の不許可と取消しはどう違いますか
在留期間の更新や在留資格の変更が認められないことは、現に持っている在留資格を失わせる処分ではなく、期間の満了によって在留の根拠がなくなるという結果をもたらすものです。これに対し取消しは、在留中の資格そのものを失わせる処分です。交通事件の後に問題となる場面としては、更新の審査で素行や活動実態が消極的に評価されることのほうが多く、取消しはより限定された場面で行われます。もっとも、いずれの場合も、必要な届出をしているか、活動の実体が説明できるかという点が判断の中心にあることは共通します。
取消しを避けるために、事件のどの段階で何をすべきですか
最も重要なのは、身柄拘束の段階から入管手続を視野に入れることです。具体的には、勤務先との連絡を絶やさず雇用関係の状況を確認すること、退職に至った場合は届出の期限を守ること、住居地に変更があれば届け出ること、そして在留期間の満了日を把握し、更新の準備を進めることです。刑事事件が終わってから入管のことを考える、という順序では、届出の期限も更新の期限も過ぎてしまいます。刑事と入管は同時に走っているという前提で計画を立ててください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
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初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
交通事件そのものが在留資格の取消事由になるわけではありませんが、事件を契機に活動の実体が失われたり、必要な届出が滞ったりすることで、取消しが現実の問題になることがあります。逆に言えば、雇用関係の維持、期限内の届出、更新の準備という基本を押さえておけば、避けられる事態も少なくありません。通知が届いてから慌てるのではなく、事件の初期の段階で入管の側の時間軸を確認しておくことをお勧めします。
当事務所では中国語での対応が可能で、刑事弁護と入管手続を同じ視野で扱ってまいりました。過去には、事件をきっかけに在留資格の取消しが検討された事案で、意見聴取に向けて雇用と生活の実態を整理して提出し、在留の継続につながった例もあります。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
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中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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