車の名義貸し・レンタカーの又貸しで問われる責任|外国人が知らずに負う刑事・賠償リスク
2026/08/28
同じ国から来た友人に、少しの間だけ車を貸してほしいと頼まれた。免許を持っていない知り合いのために、自分の名義で車を登録した。借りたレンタカーを同僚に一晩だけ使わせた。どれも断りにくい場面です。しかし日本の法律では、運転した本人だけでなく、車を用意した側にも重い責任が及びます。
実際、事故が起きてから、自分は運転していないのに賠償の請求が来た、警察から取調べを受けたという相談は少なくありません。本記事では、名義貸しと又貸しによって生じる刑事責任、賠償責任、そして外国人の方の在留資格への影響を整理します。
免許を持っていない人に車を貸すと、どのような責任を負いますか
貸した側も処罰の対象になります。道路交通法は、無免許運転をするおそれがあることを知りながら車を提供する行為を、独立した犯罪として定めており、その法定刑は無免許で運転した本人に対するものと同等の重さです。免許を持っていないことを知っていたかどうかが、決定的な分かれ目になります。
飲酒運転についても同じ構造があります。酒を飲んでいる人に車を提供した場合、酒類を提供した場合、飲酒運転と知りながら同乗した場合、それぞれが処罰の対象とされています。運転していないから関係がない、という理解は日本では通用しません。
名義だけ貸した場合でも責任を問われますか
問われます。自動車の登録名義人は、その車を自分のために運行の用に供している者、すなわち運行供用者として扱われる可能性が高く、事故が起きた場合に人身損害の賠償責任を負うことがあります。実際に運転していなかったという事実は、それだけでは責任を免れる理由になりません。
さらに、自動車税や車検、駐車違反の責任が名義人に及ぶこと、任意保険の契約者と実際の使用者が異なるために保険金が支払われないおそれがあることなど、実務的な負担も生じます。名義貸しは、名前を貸しただけという軽い行為ではなく、責任の主体を引き受ける行為です。
レンタカーやカーシェアを他人に又貸しするとどうなりますか
契約違反であるだけでなく、事故が起きたときに補償が受けられなくなります。レンタカーの契約では、運転者を借主本人や事前に登録した者に限定しているのが通常であり、無断で他人に運転させれば、その時点で契約違反になります。事故が起きた場合、レンタカー会社の保険が適用されず、車両の損害も相手方への賠償も、自己資金で負担することになりかねません。
他人に使わせる目的を隠して借りた、返す意思がないまま借りたといった事情があれば、財産犯の問題として捜査の対象になることもあります。さらに、借りた車を使って有償で人を運ぶ行為、いわゆる白タクは、道路運送法上の無許可の旅客運送として別個の問題になります。知人の送迎に謝礼を受け取っている程度であっても、反復されていれば問題視されます。
事故が起きた場合、貸した側はどこまで賠償するのですか
人身損害については、運行供用者としての責任を負う可能性があり、賠償額は高額になり得ます。死亡や重い後遺障害の事案では、数千万円規模になることも珍しくありません。物損については、所有者としての責任や、貸したことについての過失が問題になります。
注意すべきは保険の適用です。任意保険には運転者の範囲を限定する特約や年齢の条件が付されていることが多く、条件から外れる人が運転していた場合、保険金が支払われないことがあります。この場合、賠償の全額を自分で負担することになります。車を貸す前に、保険証券の運転者の範囲を確認してください。
名義貸しが犯罪に使われてしまった場合はどうなりますか
関与の程度に応じて、共犯として捜査の対象になることがあります。名義を貸した車が、特殊詐欺の受け子の移動、無許可の運送、不法就労者の送迎といった行為に使われた場合、名義人がどこまで事情を知っていたかが問われます。何に使われるか薄々分かっていた、繰り返し名義を貸して報酬を得ていた、といった事情があれば、単なる名義貸しでは済みません。
とりわけ注意が必要なのは、就労資格のない人を働かせる場に関与する場合です。不法就労助長罪は入管法73条の2の罪であり、退去強制事由としては入管法24条3号の4に定められています。この退去強制事由は、刑事処罰を受けたかどうかにかかわらず、その行為があったこと自体で該当します。
外国人が名義貸しや又貸しで立件された場合、在留にどう影響しますか
罪名と結果の重さによって、影響の範囲が変わります。無免許運転者への車両提供のように、罰金や執行猶予付きの判決で終わる場合、その一事で直ちに退去強制となるわけではありませんが、在留期間の更新、在留資格の変更、永住許可、帰化の各審査では、素行の面で不利な事情として考慮され得ます。
他方、刑が重くなれば話は別です。入管法24条4号リは、1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた場合を退去強制事由とし、全部執行猶予の場合は除かれています。また、入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格をもって在留する者について一定の犯罪による有罪判決を退去強制事由と定めており、自動車運転死傷処罰法2条および6条1項の危険運転致死傷が含まれます。貸した車で重大な事故が起きれば、運転者本人の在留も、名義人自身の在留も、同時に問題になり得ます。
頼まれて断りにくいとき、どう対応すればよいですか
断ることが最善ですが、現実には人間関係があります。次のような対応を検討してください。
- 相手の運転免許証を実際に見せてもらい、有効期限と種類を確認すること
- 自分の任意保険の運転者の範囲と年齢条件を確認し、外れていれば貸さないこと
- 名義だけを貸すことは、どのような事情があっても引き受けないこと
- レンタカーやカーシェアは、契約上の運転者以外に運転させないこと
- 送迎の依頼には、金銭のやり取りを伴わせないこと
断る際には、日本の法律では貸した側も処罰される仕組みになっていると説明すれば足ります。これは相手を疑うことではなく、双方を守るための確認です。
すでに貸してしまい、事故や違反が起きた場合はどうすればよいですか
直ちに事実関係を整理し、早い段階で弁護士に相談してください。相手が無免許であることを知っていたのか、いつ、どのような経緯で貸したのか、報酬のやり取りはあったのか。これらの点についてどう説明するかによって、共犯としての立件の有無や処分の重さが変わります。記憶が曖昧なまま取調べに臨むことは避けるべきです。
任意保険の適用の可否と賠償の見通しも早めに確認してください。当事務所では中国語の通訳を備え、刑事責任、賠償、在留資格への影響の三つを併せて整理し、次の手順をご説明しています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
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- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
車を貸す、名義を貸すという行為は、日本の法律の下では、責任の一部を自分が引き受ける行為です。運転していないから無関係だという感覚のまま名義や車を提供してしまい、事故や違反が起きてはじめて重さに気づくという例が後を絶ちません。免許の有無と保険の条件を確認すること、名義貸しには応じないこと、この二点を守るだけで防げるものが多くあります。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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