舟渡国際法律事務所

交通事件の示談交渉で外国人が直面する課題|保険との関係と在留手続での使い方

お問い合わせはこちら

交通事件の示談交渉で外国人が直面する課題|保険との関係と在留手続での使い方

交通事件の示談交渉で外国人が直面する課題|保険との関係と在留手続での使い方

2026/08/28

交通事故を起こし、任意保険の担当者に任せておけば大丈夫だと言われたものの、警察や検察からは被害者への謝罪の状況を尋ねられる。被害者の連絡先は教えてもらえず、何をすればよいのか分からないまま時間だけが過ぎていく。外国人の当事者から、こうしたご相談を数多くお受けします。

交通事件における示談は、被害者への賠償という民事の問題であると同時に、刑事処分の判断にも、その後の在留手続にも影響する重要な要素です。本記事では、示談が持つ意味、保険会社に任せるだけでは足りない理由、そして外国人の当事者が直面しやすい困難とその対処を整理します。

交通事件で示談が重要なのはなぜですか

処分を判断する際に、被害の回復と被害者の意思が大きく考慮されるからです。検察官が起訴するか不起訴とするかを判断する際、また裁判所が量刑を判断する際には、被害の程度、被害弁償の有無、被害者の処罰感情が重要な事情になります。人身事故において、治療費や休業損害が填補され、被害者が処罰を望まないという意思を示している事案と、何の対応もされていない事案とでは、評価が大きく異なります。

外国人の方の場合、これに加えてもう一つの意味があります。示談の成立と誠実な対応の記録は、その後の在留期間の更新や、在留特別許可を求める場面で、素行と反省の状況を示す具体的な資料になります。刑事手続のためだけでなく、在留を守るためにも意味を持つのです。

任意保険に入っていれば、示談は保険会社に任せてよいのですか

民事の賠償については保険会社が交渉しますが、それだけでは足りません。保険会社が行うのは、治療費、休業損害、慰謝料といった損害賠償の金額の交渉であり、加害者本人の謝罪の意思を伝えたり、被害者から処罰を望まないという意思表示を得たりすることは、通常その業務に含まれていません。

刑事処分の場面で意味を持つのは、本人が謝罪し、被害者がそれを受け入れて宥恕の意思を示したという事実です。保険会社による賠償の手続とは別に、本人または弁護人から謝罪の意思を伝え、宥恕の文言を含む書面を作成してもらう働きかけが必要になります。保険で全額が支払われる事案でも、これを怠れば、被害者対応を何もしていないと評価されかねません。

外国人の当事者が示談で直面しやすい課題は何ですか

言語だけの問題ではありません。実務上、次のような困難がしばしば生じます。

  • 被害者が外国人の加害者に不安を抱き、直接の連絡を拒む場合があること
  • 謝罪の表現や作法が母国と異なり、誠意が伝わりにくいこと
  • 身柄を拘束されているため、自分では何一つ動けないこと
  • まとまった資金がなく、母国の家族からの送金に時間がかかること
  • 示談書の日本語の意味を正確に理解できず、不利な条項に同意してしまうこと
  • 在留期限が迫っており、交渉に使える時間が限られていること

これらは、弁護人が窓口となり、通訳を介して丁寧に手順を踏むことで、相当程度は解消できます。本人が直接被害者に接触しようとすることは、かえって関係を悪化させ、証拠隠滅を疑われる原因にもなりますので、避けてください。

被害者の連絡先が分からない場合はどうすればよいですか

弁護人が検察官を通じて打診するのが通常の方法です。捜査機関は被害者の氏名や連絡先を加害者本人には教えませんが、弁護人に対しては、被害者の同意を条件として連絡先を伝えることがあります。この場合、弁護人限りで扱い、本人には教えないという条件が付されることもあります。

被害者が連絡を拒む場合もありますが、その場合でも、謝罪の意思と被害弁償の申出を、弁護人を通じて伝えた事実自体を記録に残すことに意味があります。示談が成立しなかった事案でも、誠実な申出をしていたことは、処分の判断において考慮され得ます。

示談書にはどのようなことを記載しますか

金額や支払方法だけでなく、後の紛争を防ぐための条項を整えます。一般に、賠償額と支払時期・方法、既に保険から支払われる部分との関係、清算条項、そして刑事処分に関する被害者の意思、いわゆる宥恕の文言を記載します。物損と人身の双方がある場合には、その範囲も明確にします。

注意していただきたいのは、保険から支払われる金額と、示談金として本人が支払う金額の関係を曖昧にしないことです。ここを整理しないまま署名すると、二重に支払うことになったり、後から保険金の扱いをめぐって争いが生じたりします。また、示談書の内容は必ず母語で説明を受け、理解したうえで署名してください。

示談金の相場はどのくらいですか

一律の相場を示すことはできません。金額は、けがの程度、治療期間、後遺障害の有無、休業による損害、物の損壊の程度、被害者の被害感情、そして任意保険で填補される範囲によって大きく変わります。同じ罪名でも、事案によって桁が違うことは珍しくありません。

実務上は、まず保険で填補される損害額を把握し、そのうえで、保険では填補されない部分や、謝罪の趣旨として本人が支払う部分を検討します。金額の提示を急いで実際の損害の把握を飛ばすと、後から追加請求を受ける危険があります。

示談が成立しなかった場合、他にできることはありますか

あります。被害者が示談に応じない場合でも、次のような対応が考えられます。

  • 被害弁償の申出と、その拒絶の経緯を書面で記録に残すこと
  • 賠償金を法務局に供託すること
  • 贖罪寄付を行い、その受領証明を提出すること
  • 反省文を作成し、再発防止のための具体的な計画を示すこと
  • 運転を控える、車両を処分する、免許を返納するといった具体的措置をとること

これらは示談の代わりになるものではありませんが、被害の回復に向けて何をしたかを客観的に示す資料となります。何もしなかった事案との差は、決して小さくありません。

示談の資料は在留手続でどのように使えますか

在留期間の更新や在留特別許可の場面で、素行と反省を示す資料として提出することができます。在留特別許可については、入管法50条5項が考慮すべき事情を定めており、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留の経緯といった要素が総合的に判断されます。在留特別許可に係るガイドラインは令和6年3月に改定され、同年6月10日から施行されています。

示談書、被害弁償の記録、贖罪寄付の受領証明、勤務先の上申書、家族の陳述書といった資料は、刑事手続のためだけに作るのではなく、その後の在留手続でも使えるよう、はじめから整理して保存しておくことをお勧めします。当事務所では中国語の通訳を備え、刑事手続の段階から、在留への影響を見据えた資料の整え方も含めてご相談をお受けしています。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。

外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。

  • 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
  • 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。

初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。

おわりに

交通事件の示談は、金額を決めて終わりというものではなく、謝罪の意思をどう伝え、被害者の意思をどう記録に残し、それを刑事処分と在留手続の双方でどう活かすかという、一連の作業です。任意保険に加入していても、それだけでは刑事の場面で足りない部分が残ります。被害者と直接接触しようとせず、弁護人と通訳を介して段取りを踏むことが、結果的にいちばん確実な進め方になります。

なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

お問い合わせ

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

この記事の他の言語版

简体中文

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。