過失運転致傷で不起訴を目指す弁護活動|示談の進め方と外国人の在留への影響
2026/08/28
日本で車を運転していて人にけがをさせてしまい、警察から出頭を求められている。相手の連絡先も分からず、日本語での話し合いに自信がない。在留期間の更新が近いのに刑事事件になってしまった。中国籍の方から、こうしたご相談を数多くいただきます。
本記事では、過失運転致傷の事件で不起訴処分を目指すために何ができるのか、示談交渉はどのような順序で進むのか、そして不起訴になった場合とならなかった場合とで在留にどのような差が生じるのかを、順を追って説明します。
過失運転致傷罪とはどのような犯罪ですか
自動車の運転上必要な注意を怠り、その結果として人にけがをさせた場合に成立する犯罪です。飲酒や著しい高速度などの悪質な事情がある危険運転致死傷とは別の罪であり、あくまで過失、すなわち不注意を処罰する規定です。法定刑には拘禁刑と罰金の両方が定められているほか、けがの程度が軽い場合には情状により刑を免除できる旨の規定も置かれています。つまり、事故を起こしたからといって当然に重い刑が科されるわけではなく、結果の重さと事情によって処分の幅が大きく動きます。
人身事故を起こすと必ず起訴されますか
いいえ、必ず起訴されるわけではありません。検察官は、けがの程度、過失の大きさ、被害者の処罰感情、被害の回復状況、前科前歴の有無などを総合して、起訴するかどうかを判断します。全治数日から数週間程度のけがで、過失も一般的な不注意にとどまり、被害弁償が済んでいる事案では、起訴猶予として不起訴になることも少なくありません。逆に、けがが重い、信号無視やスマートフォンの操作といった危険性の高い過失がある、被害者の被害感情が強いといった事情が重なると、起訴の可能性は高まります。
不起訴処分にはどのような種類がありますか
大きく分けて三つあります。内容によって在留手続での説明の仕方も変わるため、区別を理解しておくことが重要です。
- 嫌疑なし:犯罪の疑いが認められない場合です。
- 嫌疑不十分:疑いはあるが、有罪の立証に足りる証拠がない場合です。
- 起訴猶予:犯罪の成立は認められるが、事情を考慮して起訴しないという判断です。交通事件の不起訴では、この起訴猶予が最も多くを占めます。
いずれも前科にはなりませんが、捜査を受けた記録(前歴)は残ります。
示談は不起訴にどう影響しますか
被害者との示談が成立し、被害者が処罰を望まない意思を示している場合、起訴猶予の判断に大きく働きます。とりわけ重要なのは、単に治療費を支払ったという事実だけでなく、被害者が加害者を許すという意思、いわゆる宥恕の意思が書面で示されているかどうかです。検察官が処分を決める前の段階で示談書を提出できるかどうかが結論を左右することもあるため、時間との勝負になります。
相手の連絡先が分からない場合、示談交渉はどう始めますか
ご本人が直接被害者の連絡先を知ることは、通常できません。加害者側に被害者の個人情報を教えることは、捜査機関が原則として控えるためです。この場合、弁護人が選任されたうえで、弁護人限りで開示を受けることを条件に検察官や警察官を通じて連絡先を確認し、そこから交渉に入るのが実務上の一般的な流れです。ご本人が独力で被害者を探そうとすると、かえって被害感情を悪化させる危険があります。
保険会社が対応していれば示談は不要ですか
任意保険による対応と、刑事事件のための示談とは、目的が異なります。保険会社が行うのは損害賠償額の確定と支払いであり、被害者が加害者を許すかどうかという刑事処分に関わる部分までは扱いません。また、保険会社の交渉は治療が終わってから本格化するため、検察官が処分を決める時期に間に合わないことがよくあります。保険で賠償はカバーしつつ、刑事処分に向けては別途、謝罪と宥恕を含む合意を目指すという二本立ての対応が必要になります。
不起訴になれば在留資格に影響はありませんか
刑事処分と入管手続は別個に進みます。交通事件で問題となる退去強制事由は、拘禁刑に処せられたことを前提とする規定が中心であり、不起訴となり、あるいは罰金にとどまった場合には、直ちに退去強制の対象となるものではありません。もっとも、在留期間の更新や変更、永住許可の審査では、素行が善良であるかどうかが独立に評価されます。不起訴であっても、事故の内容や違反歴が審査で説明を求められることはありますので、不起訴処分告知書を取得し、再発防止のために講じた措置とあわせて説明できるようにしておくことをお勧めします。
弁護士に依頼するのはどの段階がよいですか
できるだけ早い段階です。示談は、検察官が処分を決めるまでに間に合わせる必要があり、被害者の治療期間や連絡調整を考えると、着手が遅れるほど選択肢が狭まります。中国籍の方の場合、警察や検察での取調べに通訳が入りますが、通訳を介した供述は表現が単純化されやすく、意図しない内容が調書に残ることがあります。中国語で直接やり取りできる体制を早期に整えることは、供述の正確性という点でも意味があります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
過失運転致傷の事件は、けがの程度と被害回復の状況によって結論が大きく変わります。示談の成否は、処分が決まるまでの限られた時間の中で、どれだけ早く適切な手順を踏めるかにかかっています。そして刑事事件が終わった後も、在留期間の更新や将来の永住許可申請という別の場面で、この出来事の説明を求められることがあります。刑事と入管の両方を見通したうえで、いま何をしておくべきかを整理することが大切です。ご不安がある段階で、早めにご相談ください。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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