危険運転致死傷罪と入管法24条4号の2|外国人が退去強制の対象となる場面
2026/08/28
飲酒したうえでの人身事故、著しい高速度での事故、赤信号を無視しての事故。これらは過失運転致死傷ではなく、危険運転致死傷として扱われる可能性があります。刑の重さがまったく異なるだけでなく、外国籍の方にとっては、退去強制の判断枠組みまで変わってきます。
ここでは、危険運転致死傷罪がどのような犯罪なのか、過失運転致死傷とどう違うのか、そして入管法24条4号の2という退去強制事由がどのように関係してくるのかを、順を追って説明します。
危険運転致死傷罪とはどのような犯罪ですか
自動車運転死傷処罰法が定める罪で、危険性の高い運転行為によって人を死傷させた場合に適用されます。単なる不注意による事故ではなく、あえて危険な運転をしたこと自体を重く評価する類型です。
同法2条が基本の規定であり、無免許でこれを犯した場合を加重する規定として6条1項が置かれています。この二つは、後述するとおり入管法上も特別の扱いを受けます。
過失運転致死傷とは何が違うのですか
過失運転致死傷は、運転上必要な注意を怠って人を死傷させた場合の罪で、7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が定められています。前をよく見ていなかった、確認を怠ったといった不注意による事故が、これに当たります。
これに対し危険運転致死傷は、危険な運転行為を意識的に行った点をとらえて処罰するもので、法定刑は大きく異なります。同じ事故であっても、どちらの罪名で立件されるかによって、見通しはまったく別のものになります。捜査の初期段階で、事故の態様がどう評価されているかを把握することが極めて重要です。
どのような場合に危険運転と判断されますか
典型的には、次のような運転行為が問題になります。
- アルコールまたは薬物の影響により、正常な運転が困難な状態で走行した
- その道路の状況からみて制御することが困難なほどの高速度で走行した
- 進行を制御する技能を有しないのに運転した
- 他の車両の通行を妨害する目的で、著しく接近するなどした
- 赤信号をことさらに無視し、重大な危険を生じさせる速度で走行した
問題となりやすいのは、アルコールの影響に関する評価です。呼気の数値だけで決まるものではなく、事故直前の運転状況、目撃者の証言、車載映像、事故後の言動などを総合して、正常な運転が困難な状態であったかが判断されます。ここは争点になりやすい部分です。
刑はどのくらい重いのですか
人を負傷させた場合は15年以下の拘禁刑、人を死亡させた場合は1年以上の有期拘禁刑と定められています。罰金刑の定めはありませんので、有罪となれば拘禁刑が言い渡されることになります。
刑の全部の執行が猶予されるかどうかは、被害の程度、示談の成否、運転態様の悪質さなどによって左右されます。被害者が亡くなった事案では実刑となる例が多く、負傷にとどまる事案でも、被害が重ければ実刑の可能性は否定できません。
入管法24条4号の2とはどのような規定ですか
入管法24条は退去強制事由を列挙した条文で、そのうち4号の2は、別表第一の在留資格をもって在留する方について、一定の犯罪により刑に処せられた場合を退去強制事由としています。技術・人文知識・国際業務、技能、特定技能、留学、家族滞在などが、別表第一の在留資格です。
この4号の2が対象とする犯罪には、刑法上の一定の罪のほか、自動車運転死傷処罰法2条および6条1項の罪、すなわち危険運転致死傷とその無免許加重の類型が含まれています。交通事件のなかでこの条項が問題になるのは、基本的にこの類型です。
他方、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、永住者といった別表第二の在留資格の方は、4号の2の対象ではありません。同じ事件でも、在留資格の種類によって適用される条文が異なりますので、まずご自身の在留資格がどちらであるかを確認してください。
入管法24条4号リとの違いはどこにありますか
24条4号リは、1年を超える実刑に処せられた場合を退去強制事由とし、但書によって刑の全部の執行を猶予された場合を除いています。一部の執行を猶予された場合も、実刑部分が1年以下であれば除かれます。つまり、刑の重さと執行猶予の有無が明確な基準になっています。
これに対し4号の2は、対象となる在留資格と対象となる罪名を限定したうえで、刑に処せられたことを要件とする構成をとっており、4号リのような刑期の限定が条文上示されていません。そのため、判決の内容によっては、4号リには当たらない場合であっても4号の2の検討が必要になることがあります。具体的な適用の可否は判決の内容と在留資格によりますので、判決が出た段階で必ず確認してください。
退去強制手続に進んだ場合、在留特別許可は認められますか
退去強制事由に当たると認定されても、入管法50条の在留特別許可によって在留が認められる場合があります。同条5項は考慮すべき事情を法律上明示しており、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留の期間、法的地位、退去強制の理由、人道上の配慮の必要性などが挙げられています。
ただし、同条1項の但書により、無期または1年を超える実刑に処せられた場合には、許可のために加重された要件を満たす必要があります。危険運転致死の事案では、この点が大きな壁になります。日本での生活の実態、扶養する家族の状況、被害者への賠償の履行、更生に向けた具体的な体制などを、資料をそろえて主張することになります。
なお、実際に退去強制された場合には、原則として5年間は日本に上陸できません(入管法5条1項9号ハ)。過去に退去強制されたことがある方は10年となります(同号ニ)。
危険運転を疑われている場合、弁護活動として何ができますか
第一に、罪名の評価そのものを争う余地がないかを検討します。正常な運転が困難な状態であったのか、制御が困難な高速度であったのか、赤信号をことさらに無視したといえるのか。いずれも評価を含む要件であり、車載映像、走行記録、目撃者の供述、事故現場の状況を丁寧に検討する価値があります。過失運転致死傷として扱われるかどうかで、結論は大きく変わります。
第二に、被害者への賠償と示談です。刑の全部の執行が猶予されるかどうかは、在留の帰趨に直結します。保険の適用範囲を確認し、不足分の手当てを含めて、早期に賠償の道筋を立てることが重要です。
第三に、判決後を見据えた準備です。刑事手続の記録は、後の入管手続で在留特別許可を求める際の資料になります。家族の状況や就労の継続に関する資料も、刑事手続の段階から意識してそろえておくべきです。刑事と入管の両方を見通して方針を立てることが、この類型では特に重要になります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
危険運転致死傷は、交通事件のなかでも最も重い類型であり、外国籍の方にとっては入管法24条4号の2という別の枠組みが働く点で、他の交通事件と大きく異なります。罪名の評価を争えるか、刑の全部の執行猶予を得られるか、その先で在留特別許可を求められるか。判断すべき局面が段階的に続きますので、事故直後のできるだけ早い時期から、刑事と入管の双方を見通した対応が必要です。ご家族からのご相談でも構いませんので、早めにご連絡ください。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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