逮捕の連絡が来ない|家族が身柄の所在を確認する方法
2026/08/23
本記事の要点
- 日本の捜査機関が海外のご家族へ逮捕を通知する制度は基本的にありません。連絡が来ないこと自体は何も意味しません。
- 領事関係に関する条約により、本人が要請すれば領事機関へ通報されますが、本人からの要請が前提です。
- 最も速い確認方法は、弁護士が心当たりの警察署へ順に照会することです。
- 刑事事件とは限りません。入管の収容、入院、事故の可能性も並行して確認します。
数日前から微信の返信が途絶えた。電話も通じない。勤務先に聞いても要領を得ない。中国本土のご家族から、そのようなご相談をいただくことがあります。
日本では、捜査機関が海外にいるご家族へ逮捕を知らせる制度は基本的にありません。
なぜ連絡が来ないのか
理由は三つに整理できます。第一に、制度上、通知の仕組みがないことです。日本の警察や検察が被疑者の海外の家族へ連絡することは想定されていません。第二に、本人が連絡できないことです。逮捕された直後は携帯電話が押収され、特に最初の72時間は弁護人以外の面会もできません。第三に、本人が知らせたがらないことです。家族に心配をかけたくない、知られたくないという理由から、自ら連絡を控える方は少なくありません。なお、領事関係に関する条約は、身柄を拘束された外国人が要請した場合に自国の領事機関へ通報されるべきことを定めていますが、重要なのは本人からの要請が前提だという点です。
どこに、どの順で確認するか
- 弁護士への相談。心当たりのある地域の警察署へ順に照会していく方法が、実際には最も速く確実です。氏名は旅券のアルファベット表記と漢字表記の両方、生年月日もご用意ください。
- 勤務先、学校、同居人、大家。最後に出勤した日が分かれば、時期を絞り込めます。
- 入管の収容の可能性。刑事事件ではなく、入管法違反により収容されている場合があります。
- 事件以外の可能性。事故による入院、急病、その他の事情も並行して考えます。
あわせて、微信の最終ログイン、支付宝や銀行カードの利用履歴といった手がかりも、時期の特定に役立ちます。ご家族の側で分かる範囲を整理していただければ、照会の精度が上がります。
想定される刑事手続の流れ
逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、さらに24時間以内に勾留を請求するかどうかが決まります。合計72時間です。この間ご家族は面会できず、会えるのは弁護人だけです。この72時間に勾留の要否について裁判官へ意見を届けられるかどうかで、その後が変わります。
仮に逮捕されていれば、連絡が途絶えてから数日が経った時点で、この72時間はすでに過ぎている可能性があります。勾留が認められれば原則10日、延長で最大20日です。所在の確認に一週間を費やせば、それは20日の三分の一以上に当たります。所在を突き止めること自体が、弁護活動の第一歩です。
外国人事件に特有のリスク
入管法24条は退去強制事由を号ごとに定めています。24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除かれます。一部猶予でも実際に服する部分が1年以下であれば同様です。
連絡が取れない事案で特に注意すべきは、24条4号ロの不法残留です。拘束されているあいだに在留期限が到来すれば、更新の申請ができないまま期限が過ぎます。この点は刑事事件の結論とは別に進行し、所在の確認が遅れたために在留資格を失うという事態が生じ得ます。薬物関係の4号チは罰金でも執行猶予でも該当し、24条の3の出国命令は4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことを要件とするため、薬物に該当する方はこの制度を利用できません。
在留期間の更新(入管法21条)は裁量処分であり、事件の存在は素行の評価として審査に入ります。届出義務違反などがあれば22条の4による在留資格の取消しも問題となります。なお実務は、退去強制事由の判断に故意や過失を要しないとしてきました。当事務所は、責任主義の射程を問う訴訟を担当してきました。
不起訴処分の重要性
所在が分かった後、次に目指すのは不起訴処分です。不起訴であれば有罪判決が存在せず、4号リも4号チも問題になりません。執行猶予でも退去強制事由に該当する薬物事犯のような類型が現に存在し、有罪判決の存在自体が後の更新や変更の審査で不利に働きます。
弁護人は、検察官との面談、示談、犯意や関与の程度を争う意見書の提出、生活環境の整備を、起訴の判断が下りる前に集中して行います。所在の確認を急ぐ理由も、突き詰めれば、この限られた期間に弁護活動を集中させるためです。
初動でおさえる3つのこと
- 黙秘権。ご家族が所在を探しているあいだ、本人は弁護人のいない状態で取調べを受けている可能性があります。通訳を介した供述が日本語の調書として固定されると、後から動かすことは容易ではありません。
- 弁護人選任の早さ。国選弁護人は勾留決定の後に選任されるため、最初の72時間には存在しません。この空白を埋められるのは私選の弁護人だけで、ご家族からのお申込みで選任できます。
- 通訳の質。取調べの通訳人は捜査機関が手配します。依頼者のために働く通訳は、弁護方針を理解したうえで、頼まれたのか指示されたのか、預かったのか受け取ったのかを訳し分けます。この差が犯意の評価に直結します。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)は、外国人の刑事弁護と入管手続を中心に取り扱っています。
- 国際的な刑事事件、裁判員裁判の対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績があります。中国籍の方の重大事件も多数担当し、国境をまたぐ照会や連絡にも慣れています。
- 特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案では、取調べ対応の方針を固め、関与の実態と犯意について主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を得ました。
- 冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案では、退去強制事由に故意も過失も不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を上訴審まで争い、その後、入管から在留特別許可が認められました。
ご依頼いただいた事件は、弁護士松村大介が初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行はありません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、接見にも同行します。刑事手続後の在留資格は、提携する行政書士とともにワンストップで対応します。
結語
連絡が取れないという状態のまま日を過ごすことが、最も大きな損失を生みます。逮捕されているかどうかも分からない、という段階のご相談で構いません。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介。第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人の刑事弁護、入管手続(退去強制、在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
舟渡国际法律事务所
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