委任契約と着手金|中国から日本の法律事務所へ費用を送るときの実務
2026/08/23
本記事の要点
- 刑事事件の依頼者はご本人ですが、ご家族が費用負担者・連絡窓口として契約に関与できます。
- ご本人が拘束中でも、ご家族のお申込みで先に着手し、委任状は接見でご本人から取得できます。
- 費用は着手金、報酬、実費、日当に分かれます。何がどこまで含まれるのかを書面で確認してください。
- 支払は銀行送金が基本で、個人の外貨購入には年間の枠があります。取扱いは金融機関や時期により異なります。
費用の話を切り出すのは、どのご家族にとっても気の重い場面です。まして中国本土から、会ったことのない日本の弁護士に、金額も送金方法も分からないまま相談するとなればなおさらです。
それでも、この点を最初に整理する実益があります。費用の枠組みが決まらないまま日が過ぎるあいだにも、勾留も、検察官の判断も進んでしまうからです。
委任契約は誰と誰の間で結ぶのか
刑事弁護の依頼者は原則としてご本人です。弁護人を選任する権限がご本人にあるためです。ご家族からのお申込みを受けて弁護士がまず接見に向かい、そこでご本人の意思を確認して選任届に署名をいただく、という順序を取ります。ご家族の位置づけは費用負担者であり、連絡の窓口です。誰が費用を負担し、誰に経過を報告してよいのかを契約書に明記します。
費用の項目と、中国から送るときの実務
費用は、結果にかかわらずお支払いいただく着手金、定めた結果が得られた場合の報酬、接見の交通費や記録の謄写費用などの実費、遠方への出張に対する日当に分かれます。金額は、罪名、共犯者の有無、再逮捕の見込み、示談の要否などで必要な作業量が変わるため、事案の内容を伺ったうえでお見積りをお出しします。
- 送金目的の申告を求められ、委任契約書の写しの提出を求められる場合もあります。
- 個人の外貨購入には年間の枠があり、必要書類や運用は金融機関や時期により異なります。
- 中継銀行の手数料が差し引かれ、着金額が送金額を下回ることがあります。不足分の扱いは先に決めておいてください。
想定される刑事手続の流れ
逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、さらに24時間以内に勾留を請求するかどうかが決まります。合計72時間です。この間ご家族は面会できず、会えるのは弁護人だけです。この72時間に勾留の要否について裁判官へ意見を届けられるかどうかで、その後が変わります。
勾留が認められれば原則10日、延長で最大20日となり、検察官はその期間内に起訴か不起訴かを判断します。費用の話を先延ばしにできない理由はここにあります。入金を待ってから接見に行くという運用では、72時間が過ぎてしまいます。
外国人事件に特有のリスク
入管法24条は退去強制事由を号ごとに定めています。24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除かれます。一部猶予でも実際に服する部分が1年以下であれば同様です。
一方、24条4号の2は危険運転致死傷など一定の重大な犯罪を列挙しており、刑の重さとは別の基準で退去強制事由となる類型を定めています。薬物関係の24条4号チは有罪判決さえあれば足り、罰金でも執行猶予でも該当します。どの号の問題なのかを最初に見極めなければ、弁護方針も費用の重点も定まりません。退去強制手続に入った後は、収容令書により収容されている方と監理措置の決定を受けた方に在留特別許可の申請権が認められています。
在留期間の更新(入管法21条)は裁量処分であり、事件の存在は素行の評価として審査に入ります。届出義務違反などがあれば22条の4による在留資格の取消しも問題となります。なお実務は、退去強制事由の判断に故意や過失を要しないとしてきました。当事務所は、責任主義の射程を問う訴訟を担当してきました。
不起訴処分の重要性
費用の設計をどこに寄せるかと問われれば、答えは起訴前です。不起訴であれば有罪判決が存在せず、4号リも4号チも問題になりません。執行猶予でも退去強制事由に該当する薬物事犯のような類型が現に存在し、有罪判決の存在自体が後の更新や変更の審査で不利に働きます。
弁護人は、検察官との面談、示談、犯意や関与の程度を争う意見書の提出、生活環境の整備を、起訴の判断が下りる前に集中して行います。起訴された後に無罪を争う活動は、時間も費用も比較にならないほど大きくなります。
初動でおさえる3つのこと
- 黙秘権。費用や契約の話が整うまでのあいだにも取調べは進みます。通訳を介した供述が日本語の調書として固定されると、後から動かすことは容易ではありません。
- 弁護人選任の早さ。国選弁護人は勾留決定の後に選任されるため、最初の72時間には存在しません。この空白を埋められるのは私選の弁護人だけで、ご家族からのお申込みで選任できます。
- 通訳の質。取調べの通訳人は捜査機関が手配します。依頼者のために働く通訳は、弁護方針を理解したうえで、頼まれたのか指示されたのか、預かったのか受け取ったのかを訳し分けます。この差が犯意の評価に直結します。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)は、外国人の刑事弁護と入管手続を中心に取り扱っています。
- 取り込み詐欺の被害に遭った卸業の依頼者について、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、7,500万円の解決金を獲得しました。関係書類を丹念に集めて事実を組み立てた事案です。
- 特殊詐欺の出し子に関わったとされた20代の女性について、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意が存在しないことを主張し、不起訴処分を獲得しました。身柄拘束が長引くなかでの活動でした。
- 冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機にあった女性の事案では、退去強制事由に故意も過失も不要とする従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を上訴審まで争い、その後、入管から在留特別許可が認められました。
ご依頼いただいた事件は、弁護士松村大介が初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行はありません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、接見にも同行します。刑事手続後の在留資格は、提携する行政書士とともにワンストップで対応します。
結語
費用の話は、信頼の話でもあります。何にいくらかかるのかが分からないままでは、遠く離れた場所から判断を下すことはできません。だからこそ、作業の中身をご説明したうえでお見積りをお出しし、送金の遅れが弁護活動の遅れにならないよう、着手の時期を切り分けてご相談しています。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介。第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人の刑事弁護、入管手続(退去強制、在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
舟渡国际法律事务所
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