中国本土から日本の弁護士に依頼する最初の一歩|家族が最初にすべきこと
2026/08/23
本記事の要点
- 勾留が決まるまでの72時間に弁護人が動けるかどうかが、その後の結論を大きく左右します。
- 中国本土のご家族からでも日本の弁護士に直接依頼でき、ご本人の署名を待たずに初回接見へ向かえます。
- 旅券表記と漢字の氏名、生年月日、逮捕日、警察署、罪名、在留資格の6点があれば動き出せます。
- 入管法24条4号リには但書があり、刑の全部の執行を猶予された者は同号から除かれます。
- 薬物関係の24条4号チは、罰金でも執行猶予でも、有罪判決があれば該当します。
日本にいる家族と連絡が取れない、逮捕されたらしいというところまでしか分からない。中国本土のご家族からは、そうしたご相談が届きます。日本の捜査機関が海外のご家族へ連絡することは、原則としてありません。
それでも、できることは少なくありません。日本の刑事手続は初期の時間が極端に短く、その使い方で結論が変わります。何をそろえ、どの順で動けばよいのかを整理します。
最初のご連絡でそろえたい情報
次の情報があれば、弁護人はその日のうちに動き出せます。
- 氏名。旅券のアルファベット表記と漢字表記の両方。警察の照会はアルファベット表記が基準になることが多く、漢字だけでは確認が進まないことがあります。
- 生年月日と国籍。同姓同名との取り違えを避けるために必要です。
- 逮捕された日、または連絡が途絶えた日。
- 身柄がある警察署名。分からなければ、逮捕された場所の市区名。
- 告げられた罪名、在留資格と在留期限。在留カードの写真があれば最も確実です。
すべてがそろわなくても着手できます。都内で先週それらしい事件があったという程度の手がかりからでも、警察署へ順に照会して所在を突き止める作業は可能です。情報がそろうまで待つという判断こそが、最も取り返しのつかない時間の使い方になります。
想定される刑事手続の流れ
逮捕から48時間以内に検察官へ送致され、さらに24時間以内に勾留を請求するかどうかが決まります。合計72時間です。この間ご家族は面会できず、会えるのは弁護人だけです。この72時間に勾留の要否について裁判官へ意見を届けられるかどうかで、その後が変わります。
勾留が認められれば原則10日、延長で最大20日となり、検察官はその期間内に起訴か不起訴かを決めます。事件の結論は逮捕から3週間ほどで決まるということです。勾留が決まってから弁護人を探し始めれば、最も重要な数日を失った状態から始めることになります。
外国人事件に特有のリスク
入管法24条は退去強制事由を号ごとに定めています。24条4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としますが、但書により刑の全部の執行を猶予された者は除かれます。一部猶予でも実際に服する部分が1年以下であれば同様です。
これに対し薬物関係の24条4号チは有罪判決があれば足り、罰金でも執行猶予でも刑の免除でも該当し、在留資格の種類も問いません。不法残留は4号ロ、資格外活動への専従は4号イ、資格外活動の罪で拘禁刑に処せられた場合は4号ヘです。不法就労助長は、刑事処罰の有無を問わず行為があったこと自体で退去強制事由となります。
在留期間の更新(入管法21条)は裁量処分であり、事件の存在は素行の評価として審査に入ります。届出義務違反などがあれば22条の4による在留資格の取消しも問題となります。なお実務は、退去強制事由の判断に故意や過失を要しないとしてきました。当事務所は、責任主義の射程を問う訴訟を担当してきました。
不起訴処分の重要性
在留を守るうえで最も効果が大きいのは、起訴される前に不起訴処分を得ることです。不起訴であれば有罪判決が存在せず、4号リも4号チも問題になりません。執行猶予でも退去強制事由に該当する薬物事犯のような類型が現に存在し、有罪判決の存在自体が後の更新や変更の審査で不利に働きます。
弁護人は、検察官との面談、示談、犯意や関与の程度を争う意見書の提出、生活環境の整備を、起訴の判断が下りる前に集中して行います。中国本土のご家族から取り寄せた在職証明や家族関係の資料が、意見書の説得力を支えることもあります。
初動でおさえる3つのこと
- 黙秘権。取調べで話さない自由が保障されています。通訳を介した供述が日本語の調書として固定されると、後から動かすことは容易ではありません。
- 弁護人選任の早さ。国選弁護人は勾留決定の後に選任されるため、最初の72時間には存在しません。この空白を埋められるのは私選の弁護人だけで、ご家族からのお申込みで選任できます。
- 通訳の質。取調べの通訳人は捜査機関が手配します。依頼者のために働く通訳は、弁護方針を理解したうえで、頼まれたのか指示されたのか、預かったのか受け取ったのかを訳し分けます。この差が犯意の評価に直結します。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)は、外国人の刑事弁護と入管手続を中心に取り扱っています。
- 国際的な刑事事件、裁判員裁判の対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績があります。中国籍の方の重大事件も多数担当し、国境をまたぐ照会や連絡にも慣れています。
- 特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案では、取調べ対応の方針を固め、関与の実態と犯意について主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を得ました。
- 観光目的で来日した後に在留資格を失い不法滞在で起訴された事案では、婚姻と子の認知を成立させ、国籍国の公的書類がほとんど得られない状況で資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
ご依頼いただいた事件は、弁護士松村大介が初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行はありません。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、接見にも同行します。刑事手続後の在留資格は、提携する行政書士とともにワンストップで対応します。
結語
中国本土から日本の刑事手続を見ると、距離と言語と制度の三重の壁があるように感じられます。しかし、ご家族が動かせる部分は想像より多く、その効果は早い段階ほど大きくなります。罪名も警察署も分からない段階のご相談で構いません。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
弁護士 松村大介。第一東京弁護士会所属、登録番号59077、2019年登録。舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田)。注力分野は外国人の刑事弁護、入管手続(退去強制、在留特別許可)、行政訴訟。最終更新:2026年8月。
舟渡国际法律事务所
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