中国のご家族が書く嘆願書・身元引受書|ご家族向け・内容の作り方と翻訳、認証の実務
2026/08/21
日本で刑事事件の当事者となったご本人のために、中国におられるご家族が「何か書いて送りたい」とお考えになることがあります。お気持ちを綴った手紙には確かな力がありますが、刑事手続や入管手続の中で意味を持たせるには、書き方と整え方に一定の作法があります。この記事は、中国本土からご家族を支えようとされている方に向けて、嘆願書・身元引受書の内容と、翻訳や認証の実務を整理したものです。
本記事の要点
- 嘆願書は、感情を訴えるだけの文章よりも、具体的な監督の方法と支援の内容が書かれているものの方が説得力を持ちます。
- 身元引受書は、本来、日本国内で本人を受け入れる方が作成するものです。中国在住のご家族の場合は、役割を明確に書き分ける必要があります。
- 中国語で作成された書面は、日本語訳を添えて提出します。訳者の氏名を明記することが実務上の作法です。
- 公的な性質を持つ書類については、公証を経たうえで認証が必要になる場合があります。中国については、2023年11月にアポスティーユ条約が発効したと承知しております(提出先ごとに要否が異なりますので、その都度ご確認ください)。
- 提出先は、検察官、裁判所、入管とそれぞれ異なり、書き方の重点も変わります。
嘆願書に何を書くか
処分や量刑の判断で見られているのは、再び同じことが起きない環境が現実に用意されているかどうかです。したがって、「どうか寛大なご配慮を」という結びだけでは足りません。ご家族との関係、これまでの生活、事件を知ったときの受け止め、今後どのように連絡を取り、生活と就労をどう支えるのか。こうした事柄を、具体的な事実として書いていただくことに意味があります。金銭的な支援が可能であれば、その方法と範囲も記していただくとよいでしょう。
他方で、事件そのものについて「本人は悪くない」と断定する記載は、かえって反省の欠如と受け取られることがあります。事実関係の評価は弁護人に委ね、ご家族は生活と監督の面を担う。この役割分担が、結果として最も説得力を持ちます。
身元引受書の考え方
身元引受書は、釈放後の生活を誰がどこで支えるのかを示す書面です。日本国内に住居と受入れ体制があることが前提となるため、中国在住のご家族が単独で作成しても、その趣旨を十分に果たせない場合があります。日本国内に親族や友人がおられるのであれば、その方に住居と日常の監督を担っていただき、中国のご家族は経済的支援と定期的な連絡を担う、という形で書き分けると、全体像が伝わりやすくなります。
翻訳と認証の実務
中国語の書面は、日本語訳を添付して提出します。訳文には訳者の氏名を記載するのが通例です。戸籍関係の証明書、在職証明、収入を示す資料など、公的な性質を持つ書類については、提出先によって公証や認証が求められることがあります。中国については2023年11月にアポスティーユ条約が発効したと承知しておりますが、日本側の提出先が何を求めるかは手続ごとに異なりますので、弁護人を通じて事前に確認されることをお勧めいたします。時間がかかる書類もありますので、期日から逆算した準備が必要です。
ご家族にできること
- 日付、署名、連絡先を必ず記載してください。誰がいつ書いたのかが分からない書面は、扱いが難しくなります。
- 写真や送金の記録など、関係の実体を示す資料を添えていただくと、記載内容の裏付けになります。
- 同じ内容の書面を複数の方が出す場合は、それぞれの立場と担える役割を書き分けてください。同文の繰り返しは効果が薄くなります。
当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、中国本土のご家族とやり取りを重ねながら弁護活動を進めてまいりました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しないという困難な状況下で、依頼者に有利な資料を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することにより在留特別許可を獲得した事例がございます(事例D-1)。書類が揃わない状況でどのように立証を組み立てるかは、この分野の中心的な課題です。
また、特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を得た事例もございます(事例B-2)。ご家族の支援体制を具体的に示すことは、こうした結果を支える要素の一つです。当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、中国のご家族との打合せにも対応いたします。
おわりに
遠く離れた場所から、できることは限られていると感じられるかもしれません。しかし、ご家族が具体的な支えを示してくださることは、手続の中で確かに意味を持ちます。書き方に迷われたときは、提出前に弁護人にご相談ください。整え方一つで、伝わり方は変わります。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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