在留カードと旅券が押収されているとき|ご家族向け・還付請求と在留期限への備え
2026/08/21
ご家族が逮捕されると、在留カードとパスポートが警察に押収されたまま戻らない、という事態がしばしば生じます。ご本人が釈放された後も、身分を示すものが手元にない状態が続き、住居の契約、銀行の手続、勤務先への説明が滞ってしまいます。さらに在留期限が近づいていれば、ご家族の不安はいっそう大きくなります。この記事は、そうした状況に置かれたご家族に向けて、押収された身分証をめぐる手続と、在留期限への備えを整理したものです。
本記事の要点
- 押収された物については、押収品目録交付書が交付されます。まず何が押収されたかを正確に把握することが出発点です。
- 刑事訴訟法123条は、留置の必要がなくなった押収物の還付と、必要に応じた仮還付を定めています。弁護人を通じて請求することができます。
- 在留カードの携帯義務との関係では、押収されている事実を客観的に示せる資料を手元に置いておくことが実務上重要です。
- 在留期限が到来する場合、身柄拘束中でも更新の申請ができる場合があります。期限の管理はご家族と弁護人で共有してください。
- 旅券が押収されたままでも、在外公館での再発給や、事情を説明したうえでの手続が検討できます。
まず押収の範囲を確かめる
捜索・差押えが行われた際には、押収品の目録が交付されます。ご自宅に残された書類の中にこの交付書があれば、そこに在留カードや旅券が記載されているかを確認してください。記載がない場合には、逮捕時に所持していた物として別に領置されている可能性があります。弁護人が選任されていれば、捜査機関に対して何がどの名目で保管されているのかを確認することができます。
還付・仮還付の請求
押収された物は、捜査上留置しておく必要がなくなれば還付されます。事件との関連が薄い身分証については、必要に応じて一時的に返す仮還付という扱いもあります。在留カードは、偽変造が疑われる事案では証拠そのものになりますので還付は難しくなりますが、そうでない事案であれば、生活上の必要性を具体的に示して請求する余地があります。請求は弁護人を通じて行うのが実務的です。
還付が難しい場合でも、写しの交付を受けたり、押収されている事実を示す書面を確保したりすることで、日常の場面での説明が可能になることがあります。特に、在留カードの携帯義務との関係では、手元にない理由を客観的に説明できることが大切です。
在留期限が近づいている場合
刑事手続は、在留期限を待ってはくれません。身柄を拘束されている間に在留期間が満了してしまうと、その後の手続はいっそう複雑になります。勾留中であっても、法定の要件を満たす方が代わって申請を行える場合がありますので、期限の日付を早い段階で確認し、弁護人と方針を共有してください。あわせて、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていないことを取消事由とする入管法22条の4の規定にも注意が必要です。勾留の長期化は、この点でも影響を及ぼし得ます。
ご家族にできること
- 雇用契約書、学生証、住民票、賃貸借契約書など、身分と生活の実体を示す資料を集めておいてください。押収物の代わりになるわけではありませんが、各種手続で役立ちます。
- 在留期限、次回の更新時期、旅券の有効期限をメモにまとめ、弁護人と共有してください。ご家族が管理してくださることで、見落としを防げます。
- ご本人が使用していた携帯電話も押収されていることが多く、連絡先が分からなくなります。勤務先や学校への連絡が必要な場合は、弁護人と範囲を相談したうえで行ってください。
当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。接見の初動から公判の結審まで、松村弁護士が全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、ご家族との打合せにも同席いたします。
薬物事件では、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析と尋問を通じて無罪判決を獲得した事例がございます(事例A-1)。押収物の意味を丁寧に検討することは、事件の帰趨そのものに関わります。また入管手続の場面では、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しないという困難な状況下で在留特別許可を獲得した事例もございます(事例D-1)。書類が揃わない状況でも、できることは残されています。
おわりに
身分を証明するものが手元にないという状態は、日々の生活を静かに、しかし確実に締めつけます。ご家族が最初にできることは、何が押収され、いつまでに何をしなければならないのかを、一枚の紙にまとめることです。そこから、弁護人と一緒に順序立てて動くことができます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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