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入管の収容・処遇をめぐる国家賠償請求|国家賠償法1条で何が争えるのか、証拠として残すべきもの

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入管の収容・処遇をめぐる国家賠償請求|国家賠償法1条で何が争えるのか、証拠として残すべきもの

入管の収容・処遇をめぐる国家賠償請求|国家賠償法1条で何が争えるのか、証拠として残すべきもの

2026/08/31

収容施設に入って半年、一年と過ぎ、いつ出られるのか誰も教えてくれない。体調が悪いと訴えても、なかなか外部の病院に連れて行ってもらえない。仮放免を何度も申請したが、理由も分からないまま不許可が続く。収容を経験した方やそのご家族から、こうしたお話を伺うことがあります。

収容や施設内での処遇に違法があった場合、国に対して損害賠償を求める道があります。この記事では、国家賠償法1条に基づく請求について、どのような点が争われるのか、時間の制限はどうなっているのか、そして何を証拠として残しておくべきかを説明します。

入管の収容や処遇について、国に損害賠償を求めることはできますか

できる場合があります。国家賠償法1条は、公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国が賠償の責任を負うと定めています。

入管の職員による収容の実施、施設内での処遇、医療上の対応、仮放免の判断なども、公権力の行使に当たる職務として、この規定の対象となり得ます。もっとも、請求が認められるためには、違法性・故意過失・損害・因果関係を主張し立証する必要があり、結論は事案ごとの事情によって大きく異なります。裁判の見通しを事前に断定することはできません。

どのような場合に違法と評価されるのですか

単に本人が納得できない、つらい思いをしたというだけでは足りません。法令や、その職務上尽くすべき義務に照らして、行為が許される範囲を超えていたと評価できるかどうかが問われます。実際に主張されることが多いのは、次のような場面です。

  • 収容の必要性が乏しいのに、漫然と収容が継続されたといえる場合
  • 医師の診察を受けさせるべき具体的な事情があったのに、適切な対応が取られなかった場合
  • 制圧行為や身体の拘束が、必要な限度を超えて行われた場合
  • 処遇に関する規則の適用が、合理的な理由なく本人に不利益に運用された場合
  • 手続上必要な告知や説明がされなかった場合

大切なのは、抽象的な不満ではなく、いつ、誰が、何をしたのか、または何をしなかったのかを、時系列に沿って特定することです。これができるかどうかで、主張の説得力が大きく変わります。

収容が長期にわたること自体を争えますか

収容期間の長さは、それだけで直ちに違法となるものではありませんが、重要な事情として主張されます。収容の目的は送還の準備にあるとされているため、送還の見込みが立たない状態が続いているのに収容だけが継続している、という状況は問題として取り上げられてきました。

令和5年の入管法改正により、収容に代えて社会内で生活しながら手続を進める監理措置が設けられ、令和6年6月10日から施行されています。出入国在留管理庁が公表した施行後の統計では、令和6年6月10日から同年末までの間に監理措置決定が1,123件、仮放免が127件とされ、監理人の9割以上が親族や知人であったとされています。社会内での処遇が本則に近づいた以上、なお収容を継続する必要性がどこにあったのかが、以前より問われやすくなっているといえます。

医療を受けさせてもらえなかった場合はどうですか

収容されている方は自分で医療機関を選べません。そのため、施設の側には、被収容者の健康状態に応じて必要な医療上の措置を講ずべき立場があるとされています。

争点となるのは、体調不良の訴えがいつ、どのような形でされ、施設がそれをどう認識し、どのような対応を取ったのか、という具体的な経過です。したがって、次のような記録が決定的な意味を持ちます。

  • 本人が体調を訴えた日時と、訴えた相手・方法
  • 診療の申出に対する回答の内容と時期
  • 実際に受けた診察・投薬の内容
  • 面会に来た家族が見た本人の様子
  • 釈放後に受診した医療機関の診断内容

仮放免や監理措置が認められないことを争えますか

不許可の判断そのものは行政の判断であり、これを国家賠償の場で違法と評価してもらうには、判断の過程に看過し難い誤りがあったといえる事情を示す必要があります。健康状態の悪化を示す資料が提出されていたのに考慮された形跡がない、といった具体的な指摘が求められます。

なお、身体の拘束を解くこと自体が目的であれば、損害賠償ではなく、退去強制令書に基づく収容部分について執行停止を申し立てる方法を検討することになります。目的によって選ぶべき手続が異なるため、この点は早めに整理しておく必要があります。

送還された後でも請求できますか

日本国外にいる方でも、日本の裁判所に国家賠償を求める訴えを起こすことは可能です。訴訟は弁護士が代理人として追行しますので、本人が来日できなくても手続を進められます。

ただし、本人の陳述や本人尋問が必要になる場面があり、通信手段や資料の取り寄せに時間がかかります。また、後述する時効の問題もあります。送還されたからといって諦める必要はありませんが、時間が経つほど立証は難しくなります

請求できる期間に制限はありますか

あります。損害及び加害者を知った時から一定の期間で時効にかかり、生命や身体を害された場合にはこれより長い期間が定められています。また、行為の時から長期の期間が経過した場合にも請求できなくなります。

収容が長期にわたった事案では、いつの時点の行為を問題にするかによって起算点の考え方も変わり得ます。心当たりがある場合は、期間の計算だけでも早めに確認しておくことをお勧めします。

立証のために何を残しておくべきですか

収容中の出来事は、後から再現することが極めて困難です。次のものは、収容中またはできる限り早い時期に確保してください。

  • 収容や処遇に関して施設から交付された書面、通知の類い
  • 診療録の開示を求めた記録と、開示された診療情報
  • 面会に来た家族や支援者が作成した面会の記録(日付・時間・本人の様子)
  • 本人が付けていた手帳や日記、書き留めたメモ
  • 釈放後、できる限り早い時期に受診した医療機関の診断書
  • 体調や外傷の状態が分かる写真

ご家族が面会のたびに日付と内容を書き留めておくだけでも、後日、経過を再構成するうえで大きな助けになります。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。

外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。

  • 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
  • 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。

初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。

おわりに

収容や処遇をめぐる国家賠償請求は、時間の経過とともに立証が難しくなる類型です。記録が残っているか、経過を時系列で特定できるかが、主張の成否を大きく左右します。ご本人が収容中であっても、ご家族が面会の記録を残し、診療情報の開示を求めておくことには十分な意味があります。

舟渡国際法律事務所では、中国語の通訳を交えて経緯を伺い、収容中の方への面会、記録の確保と診療情報の開示請求、執行停止と損害賠償のいずれを選ぶべきかの整理まで、状況に応じた対応をご案内しています。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

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