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退去強制令書が出た後の執行停止の申立て|行政事件訴訟法25条の要件と、送還までの限られた時間

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退去強制令書が出た後の執行停止の申立て|行政事件訴訟法25条の要件と、送還までの限られた時間

退去強制令書が出た後の執行停止の申立て|行政事件訴訟法25条の要件と、送還までの限られた時間

2026/08/31

入国警備官から退去強制令書を示され、収容施設に入ることになった。あるいは、仮放免中に「近く送還する」と告げられた。家族は日本にいて、生活も仕事もここにある。今から日本に残るためにできることは何もないのだろうか。そう感じている方に、まず知っていただきたいのが執行停止という手続です。

退去強制令書が発付されても、直ちにすべてが終わるわけではありません。この記事では、行政事件訴訟法25条の執行停止がどのような制度で、何が要件となり、どれほどの時間的余裕があるのかを説明します。

退去強制令書が発付されたら、いつ送還されるのですか

送還の時期は事案によって大きく異なり、あらかじめ本人に日程が知らされるとは限りません。数か月から年単位で収容や仮放免が続く場合もあれば、旅券や航空券の手配が整い次第、短期間で送還が実施されることもあります。

ここが最も重要な点です。送還されてしまうと、後から裁判で処分の違法を争っても、失われた生活を取り戻すことは事実上できません。だからこそ、送還される前の段階で、裁判所に執行を止めてもらう手続が用意されています。

執行停止とは何ですか

執行停止とは、行政処分の取消訴訟などを起こした人が、判決が出るまでの間、その処分の執行を一時的に止めるよう裁判所に求める手続です。行政事件訴訟法25条に定められています。

行政処分は、訴訟を起こしただけでは執行が止まりません。これを執行不停止の原則といいます。訴えている間に送還されてしまえば裁判の意味が失われるため、例外的に裁判所が執行を停止できる仕組みが置かれているのです。

大切なのは、執行停止は本案の訴訟が裁判所に係属していることを前提とするという点です。退去強制令書の発付処分や裁決の取消訴訟を起こしたうえで、これと併せて執行停止を申し立てるのが通常の流れになります。

執行停止が認められるための要件は何ですか

行政事件訴訟法25条は、おおむね次の要件を定めています。

  • 本案となる訴訟が裁判所に係属していること
  • 処分の執行等により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があること
  • 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと
  • 本案について理由がないとみえるときでないこと

最後の二つは消極的な要件で、これらに当たると裁判所は執行停止をすることができません。また、執行停止が決定された場合でも、内閣総理大臣が異議を述べる制度があり、これが述べられると裁判所は執行停止をすることができないとされています。申立てが認められるかどうかは事案の具体的な事情によりますので、見通しを断定することはできません。

重大な損害とはどのような損害ですか

金銭で埋め合わせのできない、回復困難な不利益が中心になります。退去強制の場面では、次のような事情が主張されることが多いといえます。

  • 日本に居住する配偶者や未成年の子と引き離され、家族としての共同生活が失われること
  • 日本で生まれ育ち日本語で教育を受けている子の就学・成育環境が断たれること
  • 継続的な治療を要する疾病があり、送還先で同等の医療を受けることが困難であること
  • 本国に戻れば生命・身体に具体的な危険が及ぶおそれがあること
  • 長期の収容が続いており、心身の状態が悪化していること

いずれについても、抽象的な訴えでは足りません。住民票や戸籍関係書類、学校の在籍証明、通知表、診断書、投薬記録、本国の状況に関する客観的資料など、損害の重大性と緊急性を裏付ける資料を、限られた時間の中でそろえる必要があります。

収容部分と送還部分は分けて申し立てるのですか

実務上は、退去強制令書に基づく送還部分の執行停止と、収容部分の執行停止とを区別して考えます。求める内容が異なるため、いずれを申し立てるか、あるいは双方を申し立てるかは、本人の置かれた状況によって変わります。

収容されている方にとっては、身体の拘束を解くことが最優先である一方、仮放免中の方にとっては送還の阻止が最も切迫した課題になります。どちらに重点を置くかで、主張すべき損害の内容も、そろえるべき資料も変わってきます。

執行停止の申立てはいつまでにすべきですか

できる限り早くとしか言いようがありません。執行停止は、送還が実施される前でなければ意味を持たないからです。

加えて、本案の取消訴訟自体に出訴期間の制限があります。行政処分を裁判で争うには、処分があったことを知った日から法律の定める期間内に訴えを起こす必要があり、これを過ぎると、内容の当否を審理してもらえなくなります。処分書を受け取った日付は必ず控え、書面と封筒を保管してください。

さらに、令和5年の入管法改正により、難民認定申請中であっても送還が停止されない例外が設けられました。従来の感覚で「申請している間は送還されない」と考えていると、対応が間に合わなくなるおそれがあります。

執行停止が認められたら日本に残れるのですか

執行停止は、あくまで判決が出るまでの間、執行を一時的に止める仮の措置です。これによって在留資格が与えられるわけではなく、本案訴訟で処分が取り消されるかどうかは別に審理されます。

もっとも、送還を免れて日本にとどまりながら訴訟を続けられること自体に大きな意味があります。その間に、家族関係の実態や本国の事情について主張と立証を尽くし、在留特別許可の可能性を含めた検討を進めることができるからです。

家族や支援者にできることはありますか

あります。本人が収容されていると、自分で資料を集めることがほとんどできません。日本にいるご家族や勤務先、支援者の協力が、そのまま申立ての質を左右します。

  • 戸籍謄本、住民票、婚姻に関する書類、子の在学証明など身分関係の資料を集める
  • 診断書、処方箋、通院記録など健康状態に関する資料を取得する
  • 同居の実態を示す写真、通信記録、家計に関する資料を整理する
  • 雇用主や学校関係者、地域の方から、事情を記した陳述書の作成に協力してもらう
  • 収容施設への面会に行き、本人の状態と手続の進行状況を確認する

これらは弁護士が受任した後に一から集めるより、ご家族が並行して準備しておくほうがはるかに早く整います。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。

外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。

  • 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
  • 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。

初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。

おわりに

退去強制令書が発付された段階では、残された時間は決して長くありません。しかし、執行停止という手続が用意されている以上、送還までの間にできることは残されています。要件は厳格で、認められるかどうかは事案ごとの事情によりますが、何もしないまま送還されてしまえば、争う機会そのものが失われます。処分書を受け取ったら、その日のうちに相談先を探してください。

舟渡国際法律事務所では、中国語の通訳を交えて事情を伺い、収容中の方への面会、取消訴訟と執行停止の申立て、家族関係や医療上の事情を裏付ける資料の整理まで、緊急性に応じた対応をご案内しています。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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