再入国許可とみなし再入国許可|長期に日本を離れるときに在留資格を失わないための手続
2026/08/31
本国の親が倒れて看病のために帰国することになった、本国の事業を数年かけて整理する必要が生じた、あるいは子どもを本国の学校に通わせるためにいったん戻ることにした。こうした事情で日本を長く離れる予定になったとき、多くの方が見落とすのが再入国の手続です。
日本の在留資格は、日本にいることを前提として与えられているものですので、出国の仕方を誤ると、それまで積み上げてきた在留期間も永住者としての地位も失われてしまいます。しかも、この失われ方は、後から取り返すことが極めて難しいという特徴があります。本記事では、再入国許可とみなし再入国許可の違いと、長期の出国にあたって確認すべき点を整理します。
再入国許可とみなし再入国許可は何が違いますか
戻ってくるまでに使える期間と、手続の重さが違います。みなし再入国許可は、有効な旅券と在留カードをもつ中長期在留者が、比較的短い期間で日本に戻ってくる場合に、事前の申請なしに利用できる仕組みです。これに対して、通常の再入国許可は、事前に地方出入国在留管理局に申請して許可を受けておくもので、より長い期間、日本を離れることができます。重要なのは、どちらも受けずに出国すれば、その時点で在留資格は失われるという点です。単に日本を離れるだけのつもりでも、手続を欠けば在留資格は残りません。
みなし再入国許可を使うにはどうすればよいですか
出国の際に、有効な旅券と在留カードを所持したうえで、再入国を予定している旨の意思表示を出国の記録の書面で行います。空港のカウンターで渡される書面に、再入国を予定している旨のチェック欄がありますので、これを忘れずに記入してください。ここで注意すべき点は次のとおりです。
- 出国の日から1年以内に日本に戻る必要があります
- 在留カードの有効期間が1年より先に満了する場合には、その満了日までに戻る必要があります
- この期間は、外国にいる間に延長することができません
- チェックを入れ忘れたまま出国すると、再入国許可を受けていない扱いとなり得ます
手続そのものは簡単ですが、出国の当日に慌てて記入するとチェックを忘れがちですので、注意が必要です。
1年を超えて日本を離れる予定がある場合はどうすればよいですか
出国する前に、地方出入国在留管理局で再入国許可を受けてください。これがこの記事で最もお伝えしたい点です。みなし再入国許可の期間は外国にいる間に延ばすことができませんので、1年を超える可能性が少しでもあるのなら、出国前に再入国許可を受けておく方が安全です。本国での看病や事業の整理は、当初の見込みより長引くことが少なくありません。短めに見積もって出国し、後から困るという相談が非常に多い分野です。
再入国許可の期間内に戻れなくなったらどうなりますか
期間内に再入国しなければ、在留資格は失われます。やむを得ない事情があって期間内に戻れない場合には、日本の在外公館において期間の延長を申請できる制度がありますが、延長できる範囲には上限がありますし、みなし再入国許可の場合にはそもそも延長ができません。したがって、期限が近づいてきた段階で戻れる見込みがない場合には、外国にいるうちに、在外公館や日本にいるご家族を通じて手続を確認してください。期限が過ぎてしまってから相談されても、取り得る手段は大きく限られます。
在留期限が出国中に切れてしまう場合はどうなりますか
再入国許可を受けていても、在留期間そのものが延びるわけではありません。在留期間の更新の許可は日本国内でなければ申請できませんので、出国中に在留期限が到来する見込みがあるのなら、出国前に更新を済ませておくか、期限までに戻る計画にしておく必要があります。ここを誤解して、再入国許可さえあれば在留期限を気にしなくてよいと考えてしまう方がいらっしゃいますが、そうではありません。出国前に、在留カードに記載された在留期間の満了日と、再入国の予定を必ず突き合わせてください。
出国中に在留資格の前提となる事情が変わったらどうすればよいですか
速やかな届出と、帰国後の手続の検討が必要です。たとえば、就労資格をもつ方が出国中に勤務先を退職した場合、契約している機関に関する届出を14日以内に行う必要があります(入管法19条の16)。また、扶養を受けて在留している方は、扶養者の在留状況が変わればご自身の在留資格の前提も変わります。届出を怠った状態が続くと、在留資格の取消しの検討につながる場合もありますので(入管法22条の4)、事情が変わった時点で確認してください。帰国後に在留資格の変更が必要になる場合もありますので、戻る前の段階でご相談いただくと選択肢が広がります。
長期の出国は永住許可や帰化の審査に影響しますか
影響し得ます。永住許可のガイドラインでは、引き続き日本に在留していることが考慮の要素とされており、長期間日本を離れていた期間があると、在留の継続性という点で説明を求められることがあります。帰化についても、住所要件は日本に住所を有していることを前提としますので、長期の不在は評価に影響し得ます。もっとも、本国の親の看病など、やむを得ない事情がある場合には、その事情を資料とともに説明することが重要です。単に不在の期間があるという事実よりも、その理由と、日本での生活の基盤が維持されていたかどうかが問われます。
再入国の際に空港で問題になるのはどのような場合ですか
再入国であっても上陸の審査を受けますので、期間の経過や在留カードの状況のほか、外国にいる間の事情が問題になることがあります。特に注意が必要なのは、外国で薬物に関する処分を受けた場合です。薬物に関する法令の違反については、日本の制度上、有罪の判決を受けたこと自体で退去強制の事由に当たるとされており(入管法24条4号チ)、上陸拒否についても期間の定めがないものとされています。また、再入国後の生活の予定について説明を求められることもありますので、勤務先や住居の状況が分かる資料を携行しておくと安心です。空港で在留資格をめぐる問題が生じた場合は、その場で押印や署名を求められる書面の内容を確認し、必要に応じて弁護士への連絡を求めてください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
再入国の手続は、書面のチェック欄一つ、申請一件の有無で、日本での生活の基盤が残るかどうかが決まってしまう場面です。特に、みなし再入国許可の期間は外国にいる間に延長できませんので、長期の出国が見込まれるのであれば、出国前に再入国許可を受けておくという一手間が決定的な意味をもちます。出国の予定が立った段階で、在留期間の満了日と併せて確認されることをお勧めします。当事務所では、中国籍の方の在留手続と刑事事件を一体として取り扱っており、退去強制手続に進んだ後に在留特別許可を得た事例もございます。中国語通訳が常駐しておりますので、本国のご家族からのご相談にも対応しております。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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