帰化の要件と犯罪歴の関係|国籍法5条の素行要件はどこまで見られるか
2026/08/31
日本での生活が長くなり、子どもも日本の学校に通っている。そろそろ帰化を考えたいが、数年前に受けた罰金の処分や、若い頃の交通違反が気になる。こうしたご相談を、中国籍の方から数多くいただきます。帰化は在留資格の手続とは別の制度であり、審査する役所も、判断の枠組みも異なります。
帰化の要件は国籍法5条に定められており、住所、能力、素行、生計、重国籍の防止、憲法の遵守という柱で構成されています。本記事では、そのうち犯罪歴との関係で最も問題になりやすい素行要件を中心に、実際に何が見られるのかを整理します。なお、年数などの細かい運用については、事案によって扱いが異なり得るため、断定的な説明は避けています。
帰化の要件は法律上どのように定められていますか
国籍法5条は、帰化の許可について複数の要件を定めています。柱となるのは次のものです。
- 住所要件 引き続き一定の期間、日本に住所を有していること
- 能力要件 原則として成年に達しており、本国の法律によっても行為能力を有すること
- 素行要件 素行が善良であること
- 生計要件 自己または生計を一にする配偶者その他の親族の資産や技能によって生計を営むことができること
- 重国籍の防止 国籍を有しないこと、または日本国籍の取得によってその国籍を失うべきこと
- 憲法の遵守 日本国憲法またはその下に成立した政府を暴力で破壊することを企てるなどの行為をしていないこと
これらを満たしたうえで、法務大臣の許可を受けることによって帰化が認められます。要件を満たせば当然に許可されるという性質のものではない点は、永住許可と同じです。
犯罪歴があると帰化は認められませんか
認められないと決まっているわけではありません。素行が善良であることという要件は、犯罪歴の有無だけで機械的に判断されるものではなく、処分の内容、経過した期間、その後の生活状況を含めて総合的に評価されます。もっとも、永住許可と比べても、帰化の審査は日本国籍を与えるかどうかの判断であるだけに、素行に関する調査は丁寧に行われるのが実際です。処分歴を隠したまま申請することは避け、事実を正確に説明したうえで、その後の生活の積み重ねを示す方が結果的に有利です。
交通違反歴は帰化の審査でどのように見られますか
回数と内容の両面から見られます。長い在留期間の中で軽微な違反が数回あるにとどまる場合と、短期間に反復している場合とでは、評価が異なります。特に、飲酒運転、無免許運転、著しい速度超過、ひき逃げといった行為は、それ自体が刑事事件となる類型であり、素行の評価に与える影響が大きくなります。申請にあたっては運転記録証明書の提出を求められることがありますので、記憶に頼らず、自分の違反歴を正確に確認しておくことをお勧めします。申告した内容と記録が食い違うことが最も避けたい事態です。
罰金や執行猶予付き判決を受けたことがある場合はどうなりますか
いずれも有罪の裁判を受けたことに変わりはないため、素行の評価に影響します。略式手続によって罰金を納付して終わった事案も同様です。執行猶予が付いた場合については、猶予の期間を無事に経過すれば刑の言渡しは効力を失うとされており、その後の経過期間と生活状況によって評価は変わり得ます。ただし、いつから申請を検討できるかについて、公表された一律の基準があるわけではありません。処分の内容と時期を整理したうえで、個別に見通しを検討する必要があります。
不起訴処分になった場合も帰化の審査に影響しますか
不起訴処分は有罪の裁判ではありませんので、前科にはあたりません。しかし、捜査を受けた事実そのものは記録として残ります。また、素行が善良であることという要件は、有罪判決の有無だけを問うものではなく、日常生活における法令の遵守の状況を含むものと理解されています。したがって、不起訴であったからといって何も説明しなくてよいというわけではなく、事情を尋ねられた場合に経緯を説明できる準備をしておくことが大切です。起訴猶予による不起訴と、嫌疑不十分による不起訴では意味合いが異なりますので、自分がどの理由によるものかを把握しておいてください。
素行が善良であることは犯罪歴以外に何を見られますか
日常生活における公的義務の履行状況が広く見られます。具体的には、所得税や住民税などの納税の状況、公的年金や公的医療保険の保険料の納付状況、事業を営んでいる場合には従業員の社会保険に関する取扱いなども確認の対象となります。また、外国人としての在留期間中に課されていた各種の届出義務を履行してきたかどうかも、生活の実態を示す事情として意味をもちます。帰化の審査は書類の審査であると同時に、日々の生活の積み重ねの審査でもあるとお考えください。
帰化が許可されると在留資格や退去強制との関係はどうなりますか
帰化が許可されて日本国籍を取得すれば、外国人ではなくなりますので、在留資格の制度の適用を受けなくなり、退去強制の対象にもなりません。在留カードの携帯や各種の届出義務からも解放されます。他方で、中国の国籍法では、外国に定住して自らの意思で外国の国籍を取得した場合に中国国籍を失う扱いとされていますので、中国のパスポートや戸籍に関する手続をどうするかという問題が現実に生じます。日本側の手続と本国側の手続の双方を見通したうえで、時期を決めることが重要です。
犯罪歴がある場合に帰化を検討する際の進め方は何ですか
まず、自分の処分歴を正確に把握することから始めてください。処分の内容が分かる資料、運転記録証明書、課税と納税の証明書、年金や健康保険の納付状況が分かる資料をそろえ、事実関係を時系列に整理します。そのうえで、処分に至った経緯、反省の内容、再発を防ぐためにとった具体的な対策、その後の生活状況を説明できる形にまとめます。処分の内容によっては、帰化ではなく永住許可を先に検討する方が現実的な場合もありますし、逆に、在留資格の維持自体に不安がある場合には、そちらの検討が先になります。どの制度を目指すかの選択自体が戦略の一部ですので、早い段階で専門家にご相談ください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
帰化の審査で問われている素行要件は、犯罪歴の有無という一点だけで決まるものではなく、処分後にどのような生活を積み重ねてきたかを含めて評価されます。処分歴があるからと申請をあきらめる必要はありませんが、事実を隠して申請することだけは避けてください。事実を正確に示し、その後の生活を資料で裏付けるという地道な準備が、最も確かな道です。当事務所では、中国籍の方の刑事事件と在留手続を一体として取り扱っており、刑事処分を受けた後も在留を維持できた事例や、退去強制手続に進んだ後に在留特別許可を得た事例もございます。中国語通訳が常駐しておりますので、ご家族を交えたご相談も可能です。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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