永住者でも在留資格を失うことがあるのはどのような場合か|退去強制・取消し・再入国許可の落とし穴
2026/08/31
永住許可を得た方から、永住者になったのだからもう在留の心配はないと思っていた、というお話をうかがうことがあります。実際には、永住者は在留期間の定めがなく活動の制限もない、日本で最も安定した在留資格ですが、日本国籍を取得したわけではありません。永住者もまた在留資格の一つであり、失われる場面が制度上定められています。
本記事では、永住者が在留資格を失い得る場面を、退去強制の事由に当たる場合、在留資格の取消しに当たる場合、そして再入国許可に関する手続を誤った場合の3つに分けて整理します。日常の届出を怠っただけで直ちに永住が失われるわけではありませんが、思わぬ落とし穴があることは知っておいていただきたい点です。
永住者になれば在留資格を失うことはないのですか
そうとは限りません。永住者は、在留期間が無期限で、就労その他の活動に制限がないという点で他の在留資格と大きく異なりますが、退去強制の事由に該当すれば手続の対象となり得ますし、在留資格の取消しの対象にもなり得ます。また、日本を離れる際の手続を誤れば、在留資格そのものが失われます。永住者は帰化とは異なり、あくまで外国人としての在留の形であるという点が出発点になります。
どのような場合に永住者が退去強制の対象になりますか
入管法24条が定める退去強制の事由に該当した場合です。永住者について特に問題になりやすいのは、一定の重い刑事処分を受けた場合と、薬物に関する法令に違反して有罪の判決を受けた場合です。日本で生まれ育ち、家族も生活の基盤もすべて日本にあるという方であっても、事由に該当すること自体は避けられません。もっとも、該当することと、現実に日本を去ることになるかどうかは別の問題であり、後述する在留特別許可の判断において、日本での生活の実態が重要な意味をもちます。
1年を超える実刑を受けると必ず退去強制になりますか
該当し得るのは、無期または1年を超える実刑を受けた場合です。この類型には但書があり、刑の全部の執行猶予が付いた場合は除かれます。刑の一部について執行猶予が付いた場合も、実際に服する部分が1年以下であれば除かれます。整理すると次のようになります。
- 全部執行猶予付きの判決であれば、この類型には当たりません
- 実刑であっても1年以下であれば、この類型には当たりません
- 1年を超える実刑であれば該当し得ます
- ただし該当したとしても、在留特別許可の余地は残されています
刑事事件の弁護活動において、量刑をどこに着地させるかが在留に直結するのはこのためです。刑事手続の段階から在留への影響を見据えた弁護が必要になります。
薬物事件の場合は永住者でも扱いが違いますか
違います。薬物に関する法令の違反については、入管法24条4号チにより、有罪の判決を受けたこと自体で退去強制の事由に当たるとされています。罰金であっても、執行猶予が付いていても、刑が免除されたとしても該当する点が、他の犯罪との決定的な違いです。さらに、この類型に該当した場合、上陸拒否については期間の定めがないものとされており、将来の再入国も極めて難しくなります。なお、大麻取締法は令和6年12月12日に大麻草の栽培の規制に関する法律へ改称され、大麻は麻薬及び向精神薬取締法上の麻薬として扱われることとなり、使用罪も新設されました。永住者であっても、薬物事件は在留の根幹に関わる問題です。
在留資格の取消しは永住者にも適用されますか
適用され得ます。入管法22条の4は在留資格の取消しについて定めており、偽りその他不正の手段によって許可を受けた場合などが事由に含まれます。永住者は活動に制限がないため、活動を行っていないことを理由とする取消しの類型には当たりませんが、不正な手段による許可の取得や、住居地に関する届出をめぐる類型については対象となり得ます。取消しの手続では意見を述べる機会が設けられていますので、通知が届いた場合は速やかに対応してください。
再入国許可を受けずに出国するとどうなりますか
永住者であっても、再入国許可またはみなし再入国許可を受けずに日本を出国すると、その時点で在留資格は失われます。本国の家族の看病や事業の都合で長期間日本を離れる予定がある場合は、出国前に必ず手続を確認してください。実務上、注意が必要なのは次の点です。
- みなし再入国許可を利用して出国した場合、出国の日から1年以内に再入国する必要があります
- 在留カードの有効期間が1年以内に満了する場合は、その満了日までに戻る必要があります
- 1年を超えて日本を離れる予定があるのであれば、出国前に再入国許可を受けておく必要があります
- 再入国許可には有効期間の上限が定められており、期間内に戻れないと在留資格は失われます
- やむを得ない事情で期間内に戻れない場合には、在外公館で期間の延長を申請できる制度があります
長期の出国を予定される場合には、出国前の段階でご相談いただくのが確実です。
届出義務を怠ると永住者でも不利になりますか
直ちに在留資格を失うわけではありませんが、不利な事情として扱われます。住居地を変更したときの届出、在留カードの記載事項に関する届出は、永住者にも課されています。また、16歳以上の永住者の在留カードには有効期間が定められており、交付を受けた日から7年とされていますので、期限までに有効期間更新の申請が必要です。うっかり期限を過ぎてしまう方が少なくありませんが、これらの義務の履行状況は、後日、家族の在留手続や帰化の申請の際にも確認される事柄です。
永住者が退去強制手続に進んでしまった場合に取り得る手段は何ですか
在留特別許可を求めることが中心になります。入管法50条は在留特別許可について定めており、その5項は考慮すべき要素を法律上明示しています。日本での在留の状況、家族関係、生活の基盤、素行、退去強制の事由となった事情の内容などが具体的に検討されます。手続の流れとして重要なのは、収容令書により収容されている方や監理措置の決定を受けた方には申請の権利が認められている一方で、退去強制令書が発付された後は申請ができないとされている点です。また、令和6年3月に改定され同年6月10日に施行されたガイドラインでは、自ら出頭したことが積極的な要素として位置付けられています。手続のどの段階にいるかによって取り得る手段が変わるため、早い段階でのご相談が結果を左右します。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
永住者は日本で最も安定した在留資格ですが、失われる場面がないわけではありません。特に、刑事事件に巻き込まれたときと、長期間日本を離れるときの二つの局面は、事前の判断が結果を大きく変えます。刑事事件では、量刑がどこに落ち着くかが在留に直結しますので、捜査の初期段階から在留への影響を見据えた弁護が必要です。当事務所では、中国籍の方の刑事弁護と在留手続を一体として取り扱っており、実刑を回避して在留を維持できた事例や、退去強制手続に進んだ後に在留特別許可を得た事例もございます。中国語通訳が常駐しておりますので、ご家族からのご相談にも対応しております。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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