配偶者と別居中に在留期間更新を申請するときの注意点|日本人の配偶者等の在留資格と婚姻の実体
2026/08/31
日本人の配偶者等の在留資格で暮らしている方から、夫婦の関係がうまくいかず別居したまま在留期間の満了日が近づいてしまった、というご相談をいただくことがあります。理由は一つではありません。仕事の都合による単身赴任、本国にいる親の介護、子どもの学校の事情、あるいは関係の悪化そのものが理由のこともあります。別居していると申請書に書けば不許可になるのではないか、書かない方がよいのではないかと迷われる方は少なくありません。
先に結論を申し上げると、別居という事実そのものが直ちに更新を否定するわけではありません。審査で見られているのは、婚姻が形だけのものではなく実体を伴っているかという点であり、別居の理由と夫婦の実際の交流を説明できるかどうかが分かれ目になります。本記事では、別居中に在留期間の更新を申請するときに押さえておくべき点を整理します。
配偶者と別居していると在留期間の更新は認められませんか
別居しているというだけで更新が認められなくなるわけではありません。日本人の配偶者等の在留資格は、日本人の配偶者としての身分を有する者としての活動を行うことを前提としています。ここでいう活動は、同じ住居で寝起きしているかどうかという物理的な状態だけで判断されるものではなく、夫婦としての結び付きが現に存在しているかという実質で判断されます。したがって、合理的な理由があって住居を分けているにすぎない場合と、婚姻関係が実質的に破綻している場合とでは、評価は大きく異なります。
別居の理由によって審査の結果は変わりますか
変わります。むしろ理由の説明こそが中心になります。転勤や出向による単身赴任、病気の治療や入院、本国の親の看護、子の就学や進学の都合といった外形的にも裏付けの取れる理由であれば、婚姻の実体を否定する事情とは通常みられません。他方で、理由を尋ねられても答えられない、双方の説明が食い違う、連絡自体が長期間途絶えているといった場合には、婚姻が名目だけのものではないかという疑いを招きます。説明できる別居と、説明できない別居では意味がまったく違うとお考えください。
単身赴任や親の介護で別居している場合はどう説明すればよいですか
理由を裏付ける客観的な資料と、夫婦の交流が続いていることを示す資料の両方を用意するのが基本です。具体的には次のようなものが考えられます。
- 勤務先の辞令、転勤や出向を示す書類、赴任先の住居に関する契約書
- 入院や治療の状況を示す診断書、介護の必要性を示す資料
- 子の在学を示す書類、住居を分けざるを得ない事情の説明書
- 行き来の記録、送金の記録、日常的な連絡のやり取り、家族で撮影した写真
- 生活費の分担状況が分かる資料
あわせて、いつからどのような事情で別居し、今後どうする予定なのかを、時系列に沿った説明書として提出すると、審査する側に事情が伝わりやすくなります。
別居が長引くと在留資格を取り消されることがありますか
可能性はあります。入管法22条の4は在留資格の取消しについて定めており、その中には、配偶者としての身分に基づく在留資格をもつ方が、正当な理由がないのに配偶者としての活動を継続して6月以上行っていない場合が含まれます。逆にいえば、正当な理由があると認められる別居であれば、直ちに取消しの対象となるものではありません。取消しの手続では意見を述べる機会が設けられていますので、通知を受け取った場合は放置せず、事情を説明する準備をしてください。
離婚を前提に別居している場合はどの在留資格を検討すべきですか
婚姻関係を続ける見込みがないのであれば、日本人の配偶者等のままでの更新にこだわるのではなく、別の在留資格への変更を早めに検討することが現実的です。実際に検討されることが多いのは、日本人との間の子を現に養育している場合や、婚姻期間や日本での生活の定着の度合いなどを踏まえて人道的な配慮が必要と判断される場合の定住者への変更、あるいは就職先が決まっているのであれば就労資格への変更です。いずれも個別の事情によって結論が変わりますので、離婚の話が出た段階でご相談いただくのが安全です。
別居中に離婚が成立したら何をしなければなりませんか
まず届出です。配偶者としての身分に基づく在留資格をもつ中長期在留者は、離婚し、または配偶者と死別したときは、その日から14日以内に出入国在留管理庁に届け出なければならないとされています(入管法19条の16)。この届出を怠ること自体が不利に評価される場合がありますので、忘れずに行ってください。そのうえで、残っている在留期間のうちに、在留資格の変更や今後の方針を検討することになります。在留期限まで時間があるうちに動くことが、選択肢を残すうえで最も重要です。
更新申請でどのような資料を用意すればよいですか
基本となるのは、身分関係を示す公的書類と、生活の実態を示す資料です。戸籍謄本や住民票などの身分関係の書類、収入と納税の状況が分かる書類、住居の状況が分かる書類に加えて、別居している場合には前述の事情説明と交流の記録が加わります。事実と異なる説明をしたり、別居の事実を隠して同居しているかのように装ったりすることは、後日発覚したときにかえって重大な不利益を招きます。ありのままの事情を、理由とともに説明する方が結果的に信用されます。
更新が不許可になった場合はどうなりますか
不許可になっても、その場で直ちに退去強制になるわけではありません。多くの場合、出国の準備のための短期間の在留が認められたり、他の在留資格への変更を検討する余地が示されたりします。もっとも、在留期限を過ぎてそのまま日本にとどまれば不法残留となり、退去強制の事由に当たることになります(入管法24条4号ロ)。刑事上の責任と退去強制の手続は別々に進みますので、不許可の通知を受け取ったら、期限が切れる前に速やかに専門家にご相談ください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
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初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
別居中の更新申請で問われているのは、同居しているかどうかではなく、婚姻が実体を伴っているかどうかです。事情を整理し、裏付けとなる資料を添えて説明すれば、別居していても更新が認められる例は珍しくありません。反対に、事情を隠したまま申請して不信を招くと、その後の手続にも尾を引きます。当事務所では、日本人の配偶者等や永住者の配偶者等の在留資格に関する更新・変更のご相談を数多くお受けしており、離婚を前提とした別居から定住者への変更が認められた事例、退去強制手続に進んだ後に在留特別許可を得た事例もございます。中国語通訳が常駐しておりますので、日本語でのご説明に不安がある方も安心してご相談いただけます。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
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