偽装結婚を疑われたときに何を示せばよいか|入管の質問書・実態調査への対応
2026/08/31
本当に愛し合って結婚したのに、入管から分厚い質問書が届き、交際のきっかけから毎日の生活まで細かく書くよう求められて、疑われていると感じて不安になる方は少なくありません。友人の紹介で知り合った、交際期間が短い、年齢が離れている、共通の言語が十分でない、といった事情があると、その不安は一層強くなります。
入管は、婚姻届が提出されているという形式だけでなく、夫婦としての実体があるかどうかを審査します。したがって、疑いを晴らす方法は、感情を訴えることではなく、二人の関係が現実に存在することを具体的な事実と資料で示すことです。この記事では、何をどのように示せばよいのか、調査ではどのようなことが行われるのか、不許可になった場合に何ができるのかを整理します。
入管から質問書が届きました。偽装結婚を疑われているのですか
質問書が送られてきたこと自体は、直ちに偽装結婚と判断されたことを意味しません。日本人の配偶者等などの在留資格の審査では、婚姻の実体を確認するために質問書の提出を求めるのが通常の運用です。とはいえ、記載が不十分だったり、夫婦の説明が食い違っていたりすると、そこから疑いが生じます。
大切なのは、面倒がらずに二人でそれぞれ具体的に記載することです。夫婦で事実を確認し合うのは構いませんが、記憶にないことを埋めるために話を作ってはいけません。後の調査で最も不利に働くのは、事実と異なる記載です。
婚姻の実体はどのような資料で示せますか
次のような資料が、実体を裏付ける材料になります。手元にあるものを幅広く集めてください。
- 知り合ってから現在までのやり取りの記録(通信アプリの履歴、通話の記録など。時期が分かる形で)
- 二人で写った写真。結婚式や旅行だけでなく、日常の場面や、双方の家族と一緒に写ったもの
- 同居の実態を示すもの(住民票、賃貸借契約書、公共料金や通信料の請求書、宅配の記録)
- 家計を共にしていることを示すもの(送金記録、生活費の分担のメモ、共同の口座や家族カード)
- 親族や友人からの陳述書。結婚を知っている人が、いつ紹介され、どのように付き合ってきたのを見てきたかを述べるもの
- 本国の家族との交流の記録(帰省の際の航空券、家族との写真、送金の記録)
資料は多ければよいというものではなく、時系列に沿って、二人の関係の流れを説明できるように並べることが重要です。
交際の経緯はどこまで詳しく書く必要がありますか
結論として、第三者が読んで場面を思い浮かべられる程度の具体性が必要です。誰にどのような経緯で紹介されたのか、初めて会った日はどこで何をしたのか、どの言語でどのように意思疎通してきたのか、プロポーズはいつどのような形だったのか、婚姻届はどちらの提案で出したのか、といった点です。
抽象的に、知り合って好きになって結婚したと書くだけでは、実体の説明にはなりません。逆に、多少ぎこちない経緯であっても、事実をそのまま具体的に書いた方が信用されます。うまく見せようとして経緯を整えることは、避けてください。
言葉が通じない、年齢差が大きい、交際期間が短い場合は不利ですか
これらの事情があるだけで婚姻が否定されるわけではありません。実際、翻訳アプリを使いながら関係を築いた夫婦も、年齢の離れた夫婦も、数多く存在します。問題になるのは、その事情について納得できる説明ができるかどうかです。
たとえば、共通の言語が十分でない場合は、日常の意思疎通を実際にどのように行っているのか、どちらかが相手の言語を学んでいるのかを、具体的に説明します。交際期間が短い場合は、なぜその時期に結婚することにしたのか、双方の家族の受け止めはどうだったのかを述べます。事情を隠すのではなく、説明を尽くすことが対応の中心です。
入管の実態調査ではどのようなことが行われますか
提出された資料の確認に加え、必要に応じて、夫婦それぞれからの事情聴取、勤務先や関係者への照会、住居の状況の確認などが行われることがあります。夫婦が別々に質問を受け、回答が一致するかどうかを見られる場面もあります。
ここで重要なのは、思い出せないことを推測で答えないことです。分からないことは分からないと述べ、後で確認して補足すればよいのです。夫婦の記憶が細部で食い違うことはむしろ自然であり、無理に合わせようとした説明の方が不自然に映ります。
警察から呼び出しを受けた場合はどう対応すればよいですか
婚姻の届出が虚偽であると判断されれば、公正証書原本不実記載やその行使といった犯罪が問題となり得ます。仲介した者がいる場合には、その関与が捜査の対象となることもあります。呼び出しを受けた段階で、取調べに応じる前に弁護士に相談してください。
取調べで述べたことは調書にまとめられ、後の手続で重い意味を持ちます。日本語の理解が十分でない状態で署名してしまうと、意図と違う内容が記録されることがあります。通訳の確保と供述内容の確認は弁護人を通じて行い、黙秘する権利があることも覚えておいてください。
不許可になった場合、もう日本にはいられませんか
不許可になっても、直ちにすべてが終わるわけではありません。まず、入管で不許可の理由の説明を受け、どの点について実体が確認できないと判断されたのかを把握します。そのうえで、不足していた資料を補って再申請することが考えられます。
在留資格が既にない状態であれば、在留特別許可(入管法50条)の枠組みで判断されることになります。同条5項は家族関係や在留の経緯などを考慮要素として定めており、婚姻の実体を丁寧に示すことが、そのまま許可の可能性につながります。また、虚偽の申請と判断されて在留資格の取消し(入管法22条の4)の手続が始まった場合には、意見を述べる機会がありますので、その場での主張が重要になります。
弁護士に依頼すると何ができますか
弁護士は、質問書の記載内容の整理、二人の関係を時系列で示す説明書面の作成、陳述書の作成の補助、資料の選別と体系的な編てつ、入管への同行や照会への対応を行います。刑事の捜査が始まっている場合には、弁護人として取調べへの対応方針を立て、通訳の適切性を確認します。
もっとも大切なのは、事実をありのままに整理して伝えることです。関係が本物であればあるほど、日常の細かな事実が力を持ちます。何が資料になるのかが分からないという段階でご相談いただければ、手元にあるものから使えるものを一緒に探すことができます。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
婚姻の実体を疑われる場面では、感情に訴えるのではなく、出会いから現在までの事実を、日付の分かる資料で丁寧に示すことが結論を左右します。質問書が届いた段階、あるいは調査の連絡が来た段階でご相談いただければ、提出する資料の組立てから、聴取への備えまで一緒に準備できます。事実と異なる説明をしてしまうと後戻りが難しくなりますので、迷われたら早めにご相談ください。当事務所では中国語での対応が可能で、入管手続と刑事手続の双方を見通してご提案しています。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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