離婚したときの14日以内の届出義務と在留資格取消しのリスク|入管法19条の16と22条の4
2026/08/31
離婚届を市区町村の役所に出したので手続は全部終わったと思っていた。ところが数か月後、入国管理局から書面が届き、在留資格の取消しについて意見を聞きたいと呼び出された。中国籍の方から、こうしたご相談を受けることがあります。役所への離婚届と、入管への届出は、まったく別の手続です。
本記事では、離婚したときに入管へ何をいつまでに届け出る必要があるのか、届出をしなかったり期限を過ぎたりするとどうなるのか、そして在留資格の取消しはどのような手続で進むのかを説明します。
離婚したときにどこへ何を届け出るのですか
入管法19条の16は、一定の在留資格をもって在留する外国人について、届出の義務を定めています。就労資格の方が勤務先を変えたときの契約機関に関する届出と並んで、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、家族滞在といった配偶者としての身分に基づく在留資格をもつ方が、配偶者と離婚し、または死別したときの届出も、この条文に定められています。いずれも事由が生じた日から14日以内に、地方出入国在留管理局へ届け出なければなりません。届出は窓口へ持参するほか、郵送や電子届出でも行えます。市区町村役場に離婚届を提出したことで、この入管への届出が済んだことになるわけではありません。
14日以内という期限を過ぎてしまったらどうなりますか
期限を過ぎたからといって、その瞬間に在留資格が消えるわけではありません。まずすべきことは、遅れてでも届出を行うことです。届出をしなかった場合には過料の対象となる定めがあり、虚偽の届出をした場合には刑事罰が定められています。実務上より重要なのは、届出の遅れそのものよりも、届出をしないまま長期間放置した事実が、その後の在留資格変更や更新の審査において、制度の遵守という観点から不利に評価され得るという点です。遅れに気づいた時点で、遅延した理由を説明できる形で届け出るのが最善です。
届出をしないと在留資格が取り消されますか
入管法22条の4は在留資格の取消しについて定めており、その取消事由の中には、届出義務に関するものが含まれています。届出をしなかったこと、および虚偽の届出をしたことは、それぞれ取消しの検討対象となり得ます。ただし、取消しは自動的に行われるものではなく、後述する手続を経て判断されます。また、届出を怠ったことのみで直ちに取消しに至る例はそれほど多くなく、実際には、離婚後に配偶者としての活動を長期間行っていないことが、より中心的な取消事由として扱われる傾向にあります。日本人の配偶者等の在留資格については、配偶者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留していることが、正当な理由がある場合を除いて取消事由とされています。
取消しの手続はどのように進みますか
おおむね次の流れです。手続の途中で意見を述べる機会が法律上保障されている点が重要です。
- 事前の通知:取消しを検討する旨と、意見を聴取する日時と場所が書面で通知されます。
- 意見の聴取:入国審査官が事情を尋ね、本人は意見を述べ、資料を提出できます。代理人が立ち会うこともできます。
- 判断:取消しをするかどうかが判断され、結果が通知されます。
通知を無視して出頭しないと、本人の言い分が反映されないまま判断が進むおそれがあります。日本語での説明に不安がある場合でも、まずは期日に応じたうえで、通訳や代理人の準備について申し出るのが安全です。
取り消されると必ず退去強制になりますか
必ずしもそうではありません。取消事由の類型によって扱いが異なります。偽りその他不正の手段によって上陸許可等を受けたという類型では、取消しと同時に退去強制の手続に移ることになりますが、それ以外の類型、たとえば配偶者としての活動を行っていないことを理由とする取消しでは、出国のための期間として30日を超えない範囲で期間が指定される運用があります。その期間内に自ら出国すれば、退去強制の手続によることなく日本を離れることができ、その後の再入国にも違いが生じます。指定された期間内に出国しないと、退去強制の対象となります。指定期間は短いため、この通知を受け取ってから対応を考えるのでは間に合わないことがあります。
まだ離婚しておらず別居中の場合も届出は必要ですか
離婚が成立していない段階では、離婚を理由とする届出の対象にはなりません。しかし、別居が長期化すれば、配偶者としての活動を行っていないという評価につながり得ます。したがって、この段階で行うべきなのは、届出ではなく、在留の基礎をどうするかの検討です。離婚調停の申立て、生活費の分担に関する取決め、子の監護についての合意といった家事事件の手続と、在留資格の変更申請の時期を、あわせて設計する必要があります。別居に正当な理由があることを示す記録を残しておくことも、この時期に行うべきことのひとつです。
死別の場合も同じ手続ですか
死別の場合も、事由が生じた日から14日以内の届出が必要です。配偶者としての活動を行わなくなるという点では離婚と共通しますが、死別に至った経緯や、その後の生活の状況は、離婚の場合とは異なる評価を受けることがあります。日本での在留期間が長く、生活の基盤が日本にあり、日本人の親族との関係が続いている場合には、定住者への在留資格変更が検討されます。相続や年金に関する手続も並行して進める必要がありますので、届出の期限を意識しつつ、全体の順序を整理することをお勧めします。
届出と同時にしておくべきことは何ですか
届出は、あくまで入管に事実を知らせる手続にすぎません。届出だけを済ませて安心してしまうと、在留期間の満了が近づいてから慌てることになります。届出と同時に、在留期間の残りを確認し、どの在留資格に変更を申請するのか、そのためにどのような資料が必要かを整理してください。就労を続けるのであれば勤務先との雇用契約書と収入資料、子を養育しているのであれば同居と監護の実態を示す資料が中心になります。準備には時間がかかりますので、届出をきっかけに動き出すのが現実的です。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
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初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
離婚に伴う入管への届出は、14日以内という短い期限が定められている一方で、その存在自体があまり知られていません。届出を怠ったことが直ちに重大な結果を招くとは限りませんが、届出をしないまま時間が過ぎると、在留資格の取消しという別の局面が動き出し、そのときには対応できる時間が大きく限られています。離婚を考え始めた段階で、届出、在留資格の変更、子の監護に関する取決めを一つの流れとして組み立てておくことが、後の負担を最も軽くします。すでに通知を受け取った方も、意見を述べる機会が残っている段階であれば、できることがあります。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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