日本人の配偶者等の在留資格と離婚後の在留|取消しの基準と残るための手続
2026/08/31
日本人の夫または妻と婚姻し、日本人の配偶者等の在留資格で暮らしてきたけれど、関係が壊れて別居している。離婚届を出したら日本にいられなくなるのではないか。子どもの学校もあり、仕事も続けたい。中国籍の方から、こうしたご相談を数多くいただきます。
本記事では、日本人の配偶者等という在留資格がどのような性質のものか、離婚や別居によって在留資格がどうなるのか、そして離婚後も日本で暮らし続けるためにどのような手続があるのかを、順を追って説明します。
日本人の配偶者等の在留資格はどのような資格ですか
日本人の配偶者、日本人の特別養子、日本人の子として出生した者という身分に基づいて与えられる在留資格です。就労に制限がないという大きな利点がありますが、その反面、身分関係が失われれば在留の基礎も失われるという性質を持っています。ここでいう配偶者とは、法律上の婚姻関係にあり、かつ社会通念上の夫婦としての実体を伴っている人を指すと解されています。婚姻届が出ていても、同居も交流もなく、夫婦としての生活が実質的に失われている場合には、この在留資格に応じた活動を行っているとは評価されません。
離婚したら在留資格はすぐに失われますか
離婚した瞬間に在留資格が消えるわけではありません。在留カードに記載された在留期間は、そのまま残ります。ただし、二つの手続が動き出します。第一に、離婚したときは事由が生じた日から14日以内に地方出入国在留管理局へ届け出る義務が入管法19条の16に定められています。第二に、入管法22条の4は在留資格の取消しを定めており、日本人の配偶者等の在留資格で在留する人が、配偶者としての活動を継続して6か月以上行わないで在留している場合は、正当な理由があるときを除き、取消しの対象となり得ます。つまり、離婚後に何もしないまま時間が過ぎることが最も危険です。
別居しているだけでも在留資格に影響しますか
影響し得ます。取消しの規定は離婚の成否ではなく、配偶者としての活動の実体を基準にしているからです。単身赴任や入院、子の就学のための一時的な別居のように、夫婦関係が続いていることを説明できる別居であれば問題は生じにくいのですが、関係が破綻して連絡も取っていない状態が長く続けば、婚姻届が残っていても在留の基礎は弱まります。逆に、正当な理由があるときは取消しの対象から除かれますので、別居に至った経緯、離婚調停を申し立てていること、相手方から生活費を受け取れていないことなどを、記録として残しておくことが重要です。
離婚後も日本に住み続けるにはどうすればよいですか
在留の基礎を別のものに置き換える必要があります。実務上、次のような選択肢を検討します。
- 定住者への変更:一定期間の婚姻実体があった方や、日本人との間の子を現に監護養育している方について検討します。
- 就労資格への変更:職務内容と学歴や実務経験が対応していれば、技術・人文知識・国際業務などへの変更が考えられます。
- 家族滞在への変更:日本で就労資格を有する方と再婚した場合などです。
- 永住許可の申請:要件を満たしている場合には、離婚前後の時期にかかわらず検討の余地があります。
いずれの場合も、在留期間が残っているうちに動くことが決定的に重要です。期間が切れてしまえば、選べる手続が大きく減ります。
在留期間の途中で離婚した場合、更新はできますか
日本人の配偶者等の在留資格のままで更新することは、原則として困難です。更新は、その在留資格に応じた活動を今後も続けることを前提とする手続だからです。したがって、更新ではなく在留資格変更許可申請を検討することになります。もっとも、離婚が成立していない段階で在留期間の満了が迫っている場合には、事情を説明したうえで短い期間の更新が認められることもあります。どちらの手続を選ぶかは、婚姻関係の状況、子の有無、就労の状況によって変わりますので、期限の1か月以上前には方針を固めておくことをお勧めします。
家庭内暴力から逃れて別居している場合はどう扱われますか
配偶者からの暴力を理由に避難している場合、配偶者としての活動を行っていないことについて正当な理由があると評価され得ます。在留特別許可に係るガイドラインは令和6年3月に改定され、同年6月10日から適用されていますが、そこでも人身取引や配偶者からの暴力の被害者であることは考慮すべき事情として位置づけられています。この類型では、配偶者暴力相談支援センターや警察への相談記録、保護命令に関する資料、診断書、避難先の記録などが、事実を裏づける重要な資料になります。相手方に居場所を知られたくない場合の配慮も制度上用意されていますので、一人で抱え込まず、早い段階で相談窓口につながってください。
離婚後にオーバーステイになってしまったらどうなりますか
在留期間を過ぎて日本に残ると、入管法70条1項5号の不法残留罪の問題が生じます。法定刑は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科です。あわせて、入管法24条4号ロにより退去強制の対象にもなります。刑事処分と退去強制の手続は別個に進みますので、片方が終わればもう片方も終わるという関係にはありません。ただし、この段階でも道が閉ざされたわけではありません。入管法50条の在留特別許可の判断では、日本での在留期間、家族関係、子の養育状況などが考慮され、自ら出頭したことは積極的な要素として扱われます。他方で、不法残留が長期に及ぶことは消極的な要素として扱われますので、時間の経過は不利に働きます。
相談するときに用意しておくとよい資料は何ですか
次のものが手元にあると、方針の見通しが立てやすくなります。在留カードとパスポート、戸籍謄本または婚姻の事実が分かる書類、婚姻期間中の同居を示す資料、写真や連絡の記録、収入と納税を示す資料、子がいる場合は在学証明や監護の状況が分かる資料です。別居や暴力の経緯については、日付とできごとを時系列でまとめたメモを作っておくと、事実関係の確認が早く進みます。断片的でも構いませんので、まずは手元にあるものを持参してください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
日本人の配偶者等の在留資格は、婚姻という身分関係の上に成り立っています。その関係が終わったときに問われるのは、これまでの日本での生活をどのように別の在留の基礎に置き換えるかという、時間との勝負です。離婚届を出す前に方針を決めておけば、届出、在留資格の変更、子の監護に関する取決めを一つの流れとして組み立てることができます。すでに在留期間が迫っている方や、期間を過ぎてしまった方も、選択肢が残っている場合があります。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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