認知によって子の在留資格や国籍はどう変わるか|胎児認知と出生後認知の違い
2026/08/31
日本人の男性との間に子どもが生まれたが、婚姻はしていない。相手は認知に応じてくれるというけれど、それで子どもは日本国籍を取得できるのか、自分の在留はどうなるのか。あるいは、相手が認知に応じないまま出産の日が近づいている。中国籍の方から、こうしたご相談を受けることがあります。
本記事では、認知という手続がどのような効果を持つのか、認知の時期によって国籍の扱いがどう変わるのか、そして母と子の在留資格にどのような影響があるのかを説明します。
認知とは何ですか、どのような効果がありますか
婚姻していない父と子との間に、法律上の親子関係を発生させる手続です。母と子の関係は出産の事実によって当然に生じますが、父と子の関係は、婚姻関係にない場合、認知によってはじめて法律上のものとなります。認知がされると、父子関係は子の出生の時にさかのぼって生じたものとして扱われ、扶養の義務、相続の権利、氏に関する取扱いといった法律関係が発生します。国籍と在留資格の問題も、この法律上の父子関係を出発点として動き出します。認知は、市区町村役場への認知届によって行うほか、遺言によって行うこともでき、父が任意に応じない場合には裁判手続によることになります。
認知されると子は日本国籍を取得できますか
認知の時期によって、扱いが大きく異なります。ここが最も重要な分かれ目です。子の出生の時点で父が法律上の父であると認められる場合、その子は出生によって日本国籍を取得します。他方、出生した後に認知がされた場合には、認知だけで当然に日本国籍を取得することにはなりません。この場合には、国籍法が定める届出の制度を利用することになり、父が認知していること、届出の時点で子が一定の年齢に達していないこと、父が子の出生の時および届出の時において日本国民であることなど、法律の定める要件を満たしたうえで、法務大臣に届け出ることによって日本国籍を取得します。かつては父母が婚姻していることが要件とされていましたが、最高裁判所がこれを憲法に違反すると判断したことを受けて法律が改められ、現在は婚姻を要件としていません。
出生前に認知してもらう胎児認知とは何ですか
子が生まれる前に、母の本籍地または所在地の役場に届け出て行う認知です。母の承諾が必要とされています。胎児認知がされていれば、子は出生の時点で日本人である父の子として扱われますので、出生によって日本国籍を取得することになります。届出の制度を経る必要がなく、手続として最も確実です。父が協力してくれるのであれば、出産前に胎児認知を済ませておくことが、子の地位を安定させるうえで大きな意味を持ちます。ただし、届出先や必要書類が通常の認知と異なりますので、出産予定日の前に余裕をもって確認してください。
認知されれば在留資格は当然に得られますか
当然に得られるわけではありません。子が日本国籍を取得した場合には、そもそも在留資格の問題は生じなくなりますが、日本国籍を取得しない場合には、子について別途在留資格を検討する必要があります。日本人から認知された未成年の実子については、その生活の安定を図る観点から在留が認められる場合があります。また、その子を現に監護養育している外国人の母についても、子の福祉の観点から在留が検討されます。ここで重視されるのは、認知の事実に加えて、実際に子と同居し、養育しているという実体です。したがって、認知届の受理証明だけでなく、日々の養育を示す資料をあわせて準備する必要があります。
相手が認知に応じない場合はどうすればよいですか
裁判手続によって認知を求めることができます。まず家庭裁判所に調停を申し立て、話合いがまとまらなければ、認知を求める訴えを提起することになります。この手続では、父子関係の存在を示す資料が重要になり、実務ではDNA型鑑定の結果が用いられることが多くあります。相手が鑑定に応じない場合でも、交際の経緯、妊娠期間中のやり取り、出産費用の負担、生まれた後の関わりといった事実の積み重ねによって判断されることがあります。時間がかかる手続ですので、子の在留期間との関係を見ながら、並行して他の手続を検討する必要があります。
母親の在留資格はどうなりますか
母が日本人の実子を現に監護養育している場合には、その事情を基礎として在留が検討されます。認知によって子が日本国籍を取得した場合には、日本国籍の子を養育する親という立場になりますので、この方向での主張が中心になります。子が日本国籍を取得していない場合には、子とともに在留を認めてもらう方向で検討することになります。いずれの場合も、母自身の在留状況が出発点になりますので、現在の在留資格と在留期間を確認したうえで、変更の申請時期を決める必要があります。
子がすでにオーバーステイになっている場合はどうなりますか
認知の手続と、在留の手続を並行して進めることになります。在留期間を過ぎている場合には、入管法50条の在留特別許可の枠組みで判断されることになり、その考慮要素は法律に定められています。日本人の実子であること、日本での生活が定着していること、就学の状況、家族の状況などが考慮の対象となります。在留特別許可に係るガイドラインは令和6年3月に改定され、同年6月10日から適用されており、自ら出頭したことは積極的な要素として、不法残留が長期に及ぶことは消極的な要素として扱われます。時間の経過は不利に働きますので、認知の見通しが立った段階で速やかに動くことが重要です。
手続を進めるときに必要な資料は何ですか
認知に関しては、父の戸籍謄本、母のパスポートと在留カード、子の出生証明書、本国の法律に関する資料などが必要になります。在留に関しては、これに加えて、母子の同居を示す住民票、養育の状況を示す学校や保育所の資料、母の収入と納税の資料、生活の状況を説明する陳述書などを準備します。父の協力が得られる場合には、父からの上申書や扶養の意思を示す書面が有力な資料になります。なお、事実に反する認知届を提出すれば刑事責任を問われ得ますので、真実の親子関係を前提とした手続を進めてください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。担当する松村大介弁護士(第一東京弁護士会所属・登録番号59077・2019年登録)が、警察署での最初の接見から検察官との交渉、公判、その後の入管手続に至るまで全工程を直接担当します。事務員や若手弁護士が代わりに対応することはありません。
外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を利用していただけます。取調べで何を話したのか、入管で何を聞かれているのかを正確に把握できる体制です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更等については、提携する行政書士とワンストップで対応します。
- 難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例。観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された事案です。婚姻と認知の手続が未了で当局から一旦不受理とされたところ、松村弁護士が憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を行いました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を得ました。
- 強制退去の危機にあった女性を救済した事例。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案です。「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた従来の実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を提起して上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められました。
初回のご相談は無料です。費用は事案に応じてお見積りします。まずは現在の状況を整理するところから、一緒に始めさせてください。
おわりに
認知は、子の国籍と在留資格の双方を左右する重要な手続でありながら、その効果が出生の前か後かで大きく変わるという点があまり知られていません。出産の前であれば胎児認知という確実な方法があり、出産後であれば国籍法の届出という道があります。いずれの場合も、期限や要件があり、時間が経つほど選択肢は狭くなります。父が協力してくれない場合でも、裁判手続によって親子関係を確定させる方法がありますので、妊娠中や出産直後の段階で、今後の手順を確認しておくことをお勧めします。
なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ここで紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
お問い合わせ
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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