風営法違反で逮捕された外国人の方とご家族へ|「不法就労助長」と同じ退去強制リスクと三重の防御
2026/06/22
風営法違反で逮捕された外国人の方とご家族へ|「不法就労助長」と同じ退去強制リスクと三重の防御
「お店が警察に入られただけなのに、なぜ強制送還の話になるのか」――日本でカラオケ店・スナック・風俗店・マッサージ店などを営む中国籍の経営者の方、あるいはそうしたお店で働く中国籍の方が、風営法(正式名称「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」)違反で逮捕された際、ご家族からよくお寄せいただく疑問です。本記事は、突然の逮捕の知らせに接し、弁護士をお探しのご本人・ご家族に向けたものです。風営法違反の事件は、その構造において「不法就労助長」の事件と非常によく似ており、刑事処罰とは別に、在留資格を失い退去強制(強制送還)となる重大なリスクをはらみます。さらに注意を要するのは、入管が刑事手続とは別個に独自の判断を行うという点です。
1.風営法違反事件の刑事手続の流れ
風営法違反の典型的な類型としては、接待飲食店の無許可営業、営業時間違反、名義貸し、営業所の構造に関する違反、18歳未満の者の使用、違法な客引きなどが挙げられます。経営者側が風営法違反で逮捕される一方、店内で働く外国人の方は資格外活動(在留資格の範囲を超える収入活動)として問われることがあります。
逮捕の後、警察は最長48時間身柄を留め置き、検察官に送致します。検察官は24時間以内に勾留請求の要否を判断し、勾留が決定されると原則10日間、さらに10日間延長されうるため、最長で約23日間にわたり身柄が拘束されます。この最初の「72時間」が、事件の行方を左右する分かれ目です。この間に弁護人を選任できるか、不利な供述調書に署名してしまわないかが、その後の結果を大きく左右します。
2.外国人事件特有のリスク――退去強制
外国人の方にとって、風営法違反の本当の恐ろしさは、罰金や拘禁刑そのものよりも、それが退去強制(強制送還)の引き金となりうる点にあります。入管法24条各号の構造を、号ごとに精査する必要があります。
- 24条4号ヌ(売春関係業務の従事者):売春又はその周旋・勧誘・場所の提供その他売春に直接関係のある業務に従事する者は、退去強制の対象となりえます(人身取引等により他人の支配下に置かれている者を除く)。風営法違反の事件が売春の場所提供・周旋に及ぶ場合、この号が最も重要となります。
- 24条4号リ(1年を超える拘禁刑):無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者。執行猶予が付された場合でも一部の類型では該当しうるため、「執行猶予が付いたから日本に居られる」とは限りません。
- 24条4号ハ(資格外活動):風俗店で働く留学生・家族滞在の方などが、在留資格の範囲を超える収入活動を行った場合、それ自体が独立の退去強制事由となります。
- 不法就労助長(入管法73条の2):経営者が不法滞在・資格外の外国人を雇用していた場合、経営者自身も刑事責任を問われ、在留資格にも波及します。
〔用語について〕令和4年改正刑法(令和7年6月1日施行)により、従来の「懲役」「禁錮」は廃止され、「拘禁刑」に一本化されました。本記事では現行法の解説として「拘禁刑」を用います。
3.入管は刑事手続とは別に独自の判断を行う(最も注意を要する点)
「刑事で起訴されなければ、入管も動かないだろう」とお考えの方が少なくありませんが、これは危険な誤解です。退去強制事由の認定は、入管が自らの調査に基づき、刑事手続とは別個に行う行政判断です。言い換えれば、検察官が不起訴処分としても、裁判所が無罪判決を出しても、あるいは罰金で済んだとしても、入管は独自に事実を認定し、退去強制事由に該当すると判断する場合があるのです。
とりわけ24条4号ヌ(売春関係業務の従事)は、刑事上の有罪を要件としていません。入管が客観的に「売春に直接関係のある業務に従事した」と認定すれば、それだけで退去強制事由となりえます。これこそ、風営法違反事件が「不法就労助長」事件と共通して抱える構造的な落とし穴です。刑事手続での勝利が、当然には入管手続での勝利を意味しないということです。したがって、刑事の捜査段階から、後の入管手続を見据えて一体的に戦略を組み立てる必要があります。
4.反論の構造――三重の防御(「不法就労助長」と同じ発想)
当事務所では、風営法違反から退去強制のリスクが生じる事件について、不法就労助長の事件と同じ三重の防御の構造で臨みます。
第一の防御――刑事段階で該当性を否定し、「嫌疑不十分」による不起訴を獲得する。まず刑事手続において、構成要件該当性を徹底的に争います。経営者に違法事実についての故意・認識可能性があったか、客観的に売春の場所提供や資格外活動の事実が本当に存在したのか。こうした主張立証を通じて、検察官による「嫌疑不十分」を理由とする不起訴処分の獲得を目指します。これは刑事上の防御であると同時に、後の入管手続において退去強制事由の該当性を否定するための、証拠と論拠の準備でもあります。
第二の防御――仮に退去強制事由該当が認められても、比例原則違反を主張する。入管が独自の判断を行うことを踏まえ、仮に入管が退去強制事由に該当すると認定した場合に備えます。すなわち、強制送還という処分そのものが、違反行為の軽重に照らして過大ではないか、という点です。憲法13条(個人の尊重)および行政法上の比例原則に基づき、違反の態様の軽重、在日期間の長短、日本人配偶者や正規在留外国人の配偶者・子との家族関係、本人の生活基盤の定着の程度などを衡量します。強制送還が、日本に根を張った家族に違反の程度と著しく釣り合わない重大な不利益をもたらす場合には、その処分は裁量権の逸脱・濫用に当たると考えられます。
第三の防御――在留特別許可の段階で、入管庁公表事例を用いて平等原則を主張する。万一退去強制手続に進んだ場合には、在留特別許可の段階で、入管庁が毎年公表する「許可・不許可事例」の中から、本件と同種の事情で許可された先例を抽出し、「同種の事情について合理的理由なく異なる取扱いをすることは、憲法14条1項の平等原則に違反する」と主張します。
5.初動対応で押さえておきたい3つのポイント
- 黙秘権の行使:捜査段階の不用意な供述は、後の刑事公判と入管手続の双方で同時に致命傷となりえます。弁護人の確認を経ない調書に署名しないことが肝要です。
- 早期の弁護人選任:当番弁護士制度の利用、あるいは私選弁護人の選任が可能です。風営法と入管法が交錯する事件では、早期に介入してこそ、刑事と入管を貫く一体的な戦略を立てられます。
- 経験ある通訳の重要性:捜査機関が指定する通訳は必ずしも法律用語に精通しておらず、訳出の微妙なズレが供述調書に残ります。当事務所は、ご本人のために動く専属の中国語通訳を備えています。
6.当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続に豊富な実績を有しております。
不法就労助長が問われた事件で前例のない在留特別許可を獲得(事例D-2・係争中)。当事務所の松村弁護士は、冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性を救済する裁判において、「退去強制事由にも故意・過失を要件とすべきではないか」という責任主義の射程を問う訴訟を係争中です。この論点は、風営法違反事件における「入管が退去強制事由を独自に認定する」という構造と直接つながるものであり、刑事段階で故意や客観的事実の不存在を徹底的に争うことが、後の入管手続における防御の基礎となります。
難関とされた在留特別許可を一度で獲得(事例D-1)。観光目的で来日し、日本人女性との間に子を授かりながら在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された依頼者について、国籍国の公的書類がほとんど存在しないという困難な状況下で、有利な証拠を収集し、入管の過去の許可事例を分析することで、一度で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の受け子で複数回再逮捕されながら全件不起訴(事例B-2)。徹底した取調べ対応と主張立証を通じて、全件について不起訴処分を獲得しました。この「不起訴処分の獲得を最優先目標とする」方針は、外国人事件で在留資格を守るうえで決定的な意味を持ちます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更などについても、提携の行政書士によりワンストップで対応いたします。
7.結語
風営法違反は、「罰金を払えば終わり」という軽い事件では決してありません。外国人の方にとっては退去強制の引き金となりうるうえ、入管の判断は刑事の結果とは独立して行われます。だからこそ、逮捕された最初の段階から、刑事と入管の双方に通じた弁護士が一体的に戦略を立てること――まず刑事段階で「嫌疑不十分」による不起訴を獲得して該当性を否定し、仮に該当が認められても比例原則違反を主張する――この三重の防御こそが、日本での生活を守る鍵となります。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。
なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国际法律事务所
网站:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
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