舟渡国際法律事務所

医師でない占い師が医療的な鑑定を行うことの医師法適合性について

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「病占(病気占い)」は違法か。占いが違法となる基準と、病気を占うことに特有の問題

「病占(病気占い)」は違法か。占いが違法となる基準と、病気を占うことに特有の問題

2026/06/17

「足の裏を見れば病気がわかる」「あなたの不調は先祖の祟りです」。いわゆる病気占い(病占)で体調や病名に触れられ、不安を覚えた経験はないでしょうか。占いで病気を告げることは、占い師として許されるのか。それを受け取るご本人やご家族は、どこまで信じてよいのか。

 本稿は、「病占は違法か」という問いを、まず占いそのものが違法となる基準を整理し、次いでその基準を病占に当てはめて、病気を占うことに特有の問題(医師法・詐欺罪・恐喝罪・消費者契約法)を検討する、という順序で、弁護士の視点から解き明かします。

 表現の自由や宗教活動の自由に照らせば、占いは、社会的に相当と認められる範囲にとどまる限り、それ自体が直ちに違法となるものではありません。病気を占う病占についても、この理は基本的に変わりません。もっとも、その範囲を超えれば、違法と評価される余地が生じます。私見によれば、占いの違法性を判断する基本的な基準は、二つにあると考えます。第一に、金銭の詐取などの不当な目的に基づくものでないこと。第二に、その見立てが、当該占いの本来よって立つ原理原則(用いる占術の体系やルール)に従ったものであるか否かです。占いの原理原則を離れ、相手の不安をあおって金銭を得ることに主眼が移れば、社会的相当性を逸脱した違法なものと評価されやすくなります。

「病気占い」「病占」とは

 病気占い(病占)とは、易・四柱推命・タロット・手相・霊視などの占術によって、健康運や体の不調、病気の有無、その原因や治り方などを占うものをいいます。東洋の占術においては古くから親しまれてきた領域であり、それ自体が直ちに不当なものというわけではありません。

 問題となるのは、占いが、健康や病気という人の生命・身体に関わる領域に踏み込むときです。占いの結果を信じて医療機関の受診が遅れたり、不安をあおられて高額な祈祷料や開運グッズの購入に導かれたりすれば、利用者に深刻な不利益が生じかねません。そこで本稿では、まず占い一般が違法となる基準を確認し(第1)、次いでその基準を病占に当てはめて、病気を占うことに特有の問題を検討します(第2)。

第1 まず、占いそのものは違法か(違法性の基準)

(1)占いそれ自体は違法ではない(社会的相当性という考え方)

 はじめに確認しておきたいのは、占いによる鑑定や助言が、それ自体で直ちに違法となるわけではない、という点です。科学的に証明し得ない吉凶や禍福を説くことも、信教の自由や表現の自由の範囲内にとどまる限り、適法と評価されます。占いに謝礼を納め、心の平穏を得ることは、古来広く営まれてきた人の営みです。

 裁判所も、占いや祈祷を一律に違法とは扱っていません。違法か否かは、その目的・方法・結果が「社会的相当性」を逸脱しているかどうかによって判断されます。社会的に許容される範囲にとどまる占いであれば、たとえ健康や病気に触れるものであっても、原則として違法ではありません。

(2)「当たらなかった」こと自体は違法ではない

 よくお寄せいただくご質問に、「占いが当たらなかったのだから、お金を返してほしい」というものがあります。しかし、占いや鑑定は、的中や願いの成就そのものを約束する契約ではなく、助言・鑑定という役務の提供を内容とする契約と解されています。したがって、予言が外れた、効果が現れなかったというだけでは、契約違反(債務不履行)にも違法な行為(不法行為)にもあたらない、というのが裁判所の基本的な立場です。

 裁判例も、占いの内容に合理性がないとか、成果が見られないからといって直ちに違法となるものではないとしたうえで、不安や恐怖心をあおるなど社会的相当性を逸脱した方法によって行われたときに初めて違法となる、という枠組みを示しています(大阪高判平成20年)。つまり、違法か否かの分かれ目は「当たったか、外れたか」ではなく、「勧誘やはたらきかけの方法が、社会的に相当な範囲を超えていないか」に置かれているのです。

 現に返金や賠償が認められているのは、不的中それ自体ではなく、別の違法要素が加わった場合です。たとえば、鑑定士が実在せず、あるいは個別の鑑定を行わないまま課金を続けさせる詐欺的な占いサイト(いわゆるサクラサイト、鑑定の引き延ばし)、不安や恐怖をあおって高額の支払に誘導する霊感商法、依頼者を心理的に支配して多額の金銭を支払わせるマインドコントロールの類型などが、これにあたります。

(3)どこからが違法になるのか(目的・手段・結果の三つの視点)

 社会的相当性を逸脱しているか否かは、おおむね次の三つの要素を総合して判断されます。

 第一は、目的です。もっぱら金銭的な利益を得ることに向けられていないか。第二は、手段です。正体を隠して近づく、先祖の因縁などの霊障を口実に害悪を告げる、ことさらに不安をあおって困惑させる、冷静な判断を失わせるといった、不相当な方法がとられていないか。第三は、結果です。相手の資産や生活の状況に照らして、過大な金銭を支払わせていないか。

 これらが積み重なるほど、単なる占いの域を超え、違法と評価されやすくなります。裁判例においても、宗教上の献金について、「その目的・方法・結果が社会通念に照らし相当である限り違法とは言えない」が、ことさらに相手の不安をあおって過大な出捐をさせるなど不相当な方法による場合には違法の評価を受ける、とした判断が、この分野の標準的な枠組みとして定着しています。

(4)占いに即した見分け方(不当な目的でないか・占い本来の原理原則に基づくか)

 以上の一般的な基準に加えて、占いそのものに即した見分け方について、私見を述べます。私見によれば、占いの違法性を判断する基本的な基準は、次の二点にあると考えます。第一に、金銭の詐取などの不当な目的に基づくものでないこと。第二に、その見立てが、当該占いの本来よって立つ原理原則(用いる占術の体系やルール)に従ったものであるか否かです。

 占いには、占術ごとに、よって立つ理論や法則があります。不当な目的がなく、その原理原則に従った見立てにとどまる限りは、社会的に相当な占いの範囲内にあると評価されやすいといえます。これに対し、占術本来の原理原則を離れ、相手の不安をあおって金銭を得ることに主眼が移れば、もはや占いの体裁を借りた別個の行為であって、社会的相当性を逸脱した違法なものと評価されやすくなります。

第2 次に、病占(病気占い)の違法性

 第1では、占い一般が、社会的相当性の範囲にとどまる限り、直ちには違法とならないことを述べました。もっとも、これは占いに絶対的な免責を認める趣旨ではありません。

 ここからは、第1で整理した基準を、病気を占う病占に当てはめて検討します。病占は、人の生命・身体という最も重い利益に関わるだけに、占い一般には見られない固有の問題、すなわち医師法(無資格医業)の問題を伴います。

(1)具体例としての医師法(無資格医業)の問題

 占いが病気を具体的に言い当てる方向へ進むと、医師法の問題が生じます。

 医師法は、医師でない者が「医業」、すなわち「医行為」を反復継続の意思をもって行うことを禁じています(17条)。最高裁は、その「医行為」を、第一に、医療や保健指導に属する行為であること(医療関連性)、第二に、医師が行うのでなければ健康上の危害を生ずるおそれがあること(保健衛生上の危険性)という、二つを満たす行為と整理しています(最決令和2年9月16日。タトゥー事件)。そして、これに当たるか否かは、行為の方法や作用だけでなく、その目的、施す者と相手方との関係、行われる具体的な状況、社会における受け止め方までを総合して、社会通念に照らして判断されるとしています。そうすると、病占が医師法に違反するかどうかの区別でも、それが「医行為」に該当するか否か、同様の判断基準によって判断されることになると思われます。

 この枠組みのもとで手がかりとなるのが、「診察(診断)」が医行為の典型とされてきたことです。最高裁の調査官解説も、同じ病歴の聴取であっても、医師が診察として行う場合と、保険会社が契約の資料として行う場合とでは、医療に属する行為といえるか、健康上の危害を生ずるおそれがあるかが異なり得ると説いています。要は、相手の個別具体的な訴えをもとに、その人の病状を主体的に判断して告げているか否かが、分かれ目になります。この最高裁の調査官解説を前提とすると、病気に関する聴取をする場面でも、医師が行う場合と、占い師がこれを行う場合とでは、健康上の危害を生じるおそれは自ずから異なるというべきでしょう。

 占いとの関係で参考になる裁判例をご紹介します。断食道場で入寮者の症状や病歴を尋ねた行為を、医療における「問診」にあたるとして医師法違反を認めたものです(最決昭和48年)。その最高裁の調査官解説は、問診それ自体に直接の危険はなくとも、不適切な問診が治療の誤りを招く危険に着目して、保健衛生上の危険性を認めたものと説明しています。

 違法性を区別するのは、相手の個別の症状を聞き取り、医学的な判断として病状を見立てているかどうかです。占いの外形をとっていても、事前の聞き取りを詳細に行い、個別具体的に病名・原因・今後の見通し・治療の方法を判断して伝えれば、その実質は医療の「問診」「診断」に近づき、医師法違反が問題となり得ます。聞き取りを丹念に行うほど、かえって法的な危うさが増すという関係にあるのです。逆に、適法な病占にとどまる場合、それぞれの占術の基礎となる理論に基づき判断を行うことになるでしょうが、そこで行われる内容は、医学的な判断とはいえないでしょう。

 占いに近い疑似科学的な手法であっても、結論は同じ枠組みで決まります。虹彩(瞳の周りの模様)から病気を診断し、あわせて独自の薬を投与したという行為について、医行為に当たるとした裁判例があります(札幌地判平成16年)。科学的な裏づけを欠く手法であっても、個別の病状を診断し、投薬という危険を伴えば、医行為と評価されるのです。このように見てくると、危険性の有無が結論を分けていることがよく分かります。

 見過ごせないのは、占いによる誤った病状判断が、本来受けられるはずの医療の機会を奪いかねない点です。学説には、無資格で医業を行うことの弊害には、施術そのものの危険だけでなく、適切な医療を受ける機会が失われるという間接的な弊害も含まれるとする見解があります。占いの結果を信じて受診や治療をやめてしまえば、まさにこの弊害が現実のものとなります。気になる症状があるときは、占いの見立てにとどめず、必ず医療機関を受診することが大切です。

(2)不安をあおって金銭を支払わせた場合(詐欺罪・恐喝罪・消費者契約法)

 病占が金銭の支払と結びつくと、刑事・民事の責任が重なり合って問題となります。

 占いの形をとって病気を告げ、それを手段として相手を欺き、金銭を支払わせれば、詐欺罪が成立し得ます。現に、「足裏鑑定」と称してホクロがあれば癌であるなどと告げ、指示に従って金銭を納めれば病気が治ると信じ込ませて多額の金銭を集めた事案について、医師でない者が病気を診断したこと自体を欺く手段と捉え、詐欺罪を認めた最高裁の判断があります(最決平成20年。法の華三法行事件)。祈祷に効き目がないと知りながら、効能があるかのように装って祈祷料を受け取った事案でも、詐欺罪が認められています(最判昭和31年)。さらに、病気の原因も効果も分からないのに特殊な霊能力によって分かるかのように装い、供養しなければ治らないと殊更に断言して高額の供養料を交付させた事案を、「社会的相当性を逸脱し違法」とした裁判例もあります(富山地判平成10年)。

 また、相手を畏怖させて金銭を出させれば、恐喝罪が問題となります。祈祷を受けなければ命が危ないと告げて畏怖させ、金銭を交付させた行為を恐喝とした裁判例があります(広島高判昭和29年)。もっとも、「天罰がくだる」といった、占い師自身では左右し得ない出来事の予言にとどまる限りは、脅迫とは評価されにくいとされています(名古屋高判昭和45年)。これに対し、自らの霊力によって災いを起こすことも防ぐこともできるかのように信じ込ませ、相手との関係のなかで現実に畏怖させれば、害悪の告知として責任を問われ得ます。違法か否かは、こうした行為の態様を踏まえて判断されるのです。

 民事の面では、消費者契約法が手当てを設けています。霊感など合理的に確かめることが難しい能力による知見を用い、このままでは重大な不利益が生じる旨を示して不安をあおり、契約させた場合には、消費者はその契約を取り消すことができます(消費者契約法4条3項)。違法な勧誘によって損害を被ったときは、不法行為に基づく損害賠償(民法709条)も考えられます。なお、占いの相談が、具体的な借金の整理など法律上の助言にまで及ぶ場合には、弁護士でない者による法律事務の取扱いとして、弁護士法に触れるおそれもあります。

(3)病占の違法性のまとめ

 以上を整理すると、病占もまた、社会的相当性の範囲にとどまる限り、それ自体が直ちに違法となるわけではありません。病占が基礎とする理論に基づき、個別の病状に踏み込まず、あくまでも占いに基づく指導助言をする限りでは、社会的相当性の範囲内として、違法の評価を受けるおそれは低いと思われます。

 しかし、生命・身体に直結する病気を扱う以上、占い一般よりも一線を越えやすい領域だといえます。個別の症状を聞き取って病名を見立てれば医師法、不安をあおって金銭を支払わせれば詐欺罪・恐喝罪や消費者契約法というように、逸脱の態様に応じて複数の責任が重なり合って生じ得ます。違法か否かは、占いか否かという外形ではなく、その目的・方法・結果を含めた行為の態様によって判断されるのです。

結論

 表現の自由や宗教活動の自由に照らせば、占いは、社会的に相当と認められる範囲にとどまる限り、それ自体が直ちに違法とされるものではありません。病気を占う病占であっても、この理は基本的に変わりません。しかし、その範囲を逸脱したときは、医師法違反、消費者契約法違反、民法上の不法行為のほか、詐欺罪・恐喝罪といった違法の問題が生ずる余地があります。

 占いに即していえば、私見では、第一に、金銭の詐取などの不当な目的に基づくものでないこと、第二に、その見立てが、当該占いの本来よって立つ原理原則(用いる占術の体系やルール)に従ったものであるか否かが、適法と違法とを見分ける基本的な基準になると考えます。原理原則に沿った見立てにとどまる限りは、社会的相当性の範囲内にあると評価されやすく、反対に、その原理原則を離れ、相手の不安をあおって金銭を得ることに主眼が移れば、社会的相当性を逸脱した違法なものと評価されやすくなります。占いが当たらなかったこと自体が違法となるのではありません。違法か否かは、占いか否かという外形によってではなく、その目的・方法・結果を含めた行為の態様に即して判断されるべきものです。

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